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濁泥水の岡目八目

中国史、世界史、政治風刺その他イラストと音楽

私は若い頃、ヤクザの幹部に仕事を斡旋してもらったことがある

2022-08-25 14:08:54 | エッセイ


 ある日、私は都内の大通りで自転車を走らせていた。その目的は区立図書館のスポーツ新聞で求人欄を見ることである。私は働いてそこそこ金が貯まると辞めて読書や映画、漫画と酒を楽しむ日々を繰り返していたのだが、その金が尽きかけていたのである。その場合スポーツ新聞の求人欄で探すのが常であった。自分の住んでいる地域の図書館には望ましいものが無かったので区立図書館ならあるかもしれないと思ったのだ。私は節約を心掛けていてスポーツ新聞を買う金すら惜しかったのだ。なぜなら金は私にとって最も大事な「自由な時間」を与えてくれるものだからである。そうやって歩道のそばを走っていると車道との境界である縁石のそばに新聞が山積みになって置いてあり、しかも真新しいスポーツ新聞であると分かった。私は慌てて自転車を止めると降りて確かめてみると、当日発売されたスポーツ新聞が全てそろっている。私は大喜びで車道を背にして縁石に座り、つまり歩道側に向いたままひたすら求人欄を調べていた。

 ところが何やら人の気配を感じたので顔を上げてみると、一人の中年男性が私を見下ろしている。中肉中背で服装も目立たずにどこにでもいるような普通のおじさんである。おじさんは物柔らかな声で「お兄ちゃん仕事探しているの?」と聞くから「ええそうです。」と答えると「お兄ちゃんいい体してるねぇ、肉体労働やれる?」と言うので「ええ体には自信があるんです。」と答えると「じゃあ俺が紹介してやるよ。」と言い出した。私は驚いたが悪くも無いと思ったのは、私が最も望んだのが自転車で通える所に集合場所のある飯場だからである。もちろん早朝に集まって、そこから都心や郊外の現場に行くのだが自転車で通えるのを探すのに苦労していたのである。そこで「お願いします。」と言うとおじさんは「じゃあ待っててね。」と歩道のちょうど正面にあるビルに向かって歩き出した。その時私は愕然とした。誰もいなかったはずのそのビル前には数人の男達がずらっと並んでいた。しかもその風体が尋常じゃないヤバそうな連中ばかりである。「ここは組事務所の正面だ!」と初めて気付いた。私は組事務所の正面にどっかりと座り込んでいたのだ。スポーツ新聞は毎日組が買って回し読みした後で廃品回収業者に引き取らせていたのだろう。サラリーマンが日本経済新聞を読むように彼らはスポーツ新聞に目を通すのも仕事なのだろう。よく見るとおじさんの入っていったビルの入り口には監視カメラが付いてあった。当時はとても珍らしかったのである。それでも私は縁石に座って待っていた。おじさんは親切そうだったからである。組員たちもやがてビルの中に入って行きしばらくすると、やはり中年のおじさんが「君が職探しの人?」と近づきながら声をかけて来たので建築関係の会社の人だと分かった。彼は「事務所に挨拶するからちよっと待ってて。」とビルに入ったあとすぐに出て来て、私を喫茶店に誘って仕事の説明をしてくれた。
 仕事は土工でありたいして技能はいらないし、飯場も自転車で通える所にあったので私は喜んでそこで働いた。金が貯まるまで2年足らずもいたかなぁ。ある時、作業員をバンで送り迎えする運転手、背は低いが肩幅が広く両手は長くて太く蟹みたいで決して喧嘩したくない人、が「お兄ちゃんかい、行動隊長(確かそう言った)の紹介でうちに来たのは。」と言ったので、あのやさしそうなおじさんが行動隊長なんだなぁと思った。今ではその組事務所も消え失せてどこに行ったのか分からない昔の話です。

 

 


「プライドが高い」の意味を間違えて使うのはそろそろ止めてくれ

2022-08-04 14:11:10 | エッセイ


 自国のことを自慢しまくり、欠点を指摘されるとそれが事実であってもギャアギャア喚き散らすような奴らのことを「プライドが高い」などと言うのは止めて欲しい。彼らにプライド(誇り)などかけらも無い。あるのは「虚栄心」と「劣等感」だけだろう。米国が、うちは強い!などと自慢したりするか?世界で一番強くて金持ちなのは分かり切っているからそんな必要は全くない。弱い犬ほどよく吠えるというが、わが国の回りもきゃんきゃんと喧しいよねぇ。

 


「吾輩は猫である」にはマゾヒスト男の憧れるような露骨すぎる「プレイ」が描写されている

2022-07-28 14:16:31 | エッセイ


 苦沙弥先生の姪である雪江さんは、きれいな名のお嬢さんである。もっとも顔は名前ほどではない、ちょっと表へ出て一、二町歩けば必ず会える人相である。だってさ、本当に意地が悪いなぁ!夏目漱石には女性嫌悪の感情があったのかもしれない。女性に唾を吐きかけられたり、糞をたれかけられるなんてことを普通の男は想像もできないと思う。でも漱石も、百年後の日本にそんな行為を喜んで、しかも金を払ってやりたがる男共がゾロゾロ現れるなんて思いもしなかっただろうね。
 
 FEMDOMを検索すると、変態の本場である米英の凄まじいプレイを見ることができるが、未成年者はもちろん真面目な人や気の弱い人にはお勧めできません。

 


安倍晋三元総理の暗殺ほど悔しくて惜しいものはない「日本では偉い人は殺されちゃうから、俺は偉くならないようにしているんだ。」今東光

2022-07-14 14:27:15 | エッセイ

 広大な浅瀬が続く東京湾を掘削し埋め立てて巨大な京浜工業地帯の開発を志したのは浅野総一郎である。だが彼の計画はあまりに大きすぎて当局の許可がなかなか下りず、有力な資本家の後ろ盾を要求された。そこで浅野が支援を求めたのが同郷の安田善次郎だった。安田は浅野と一緒に東京湾の浅瀬を視察して回り浅野の発想に納得して、莫大な資金をつぎ込むのを認めた。安田は世間的にはケチで有名であったが、世の中に必要と認めれば惜しまず金をつぎ込んだ。東大安田講堂も日比谷公会堂も彼の寄付によるものである。しかし安田は世間にそれを知らせるのを嫌がったため、ケチの悪評だけが広まってしまった。
 安田善次郎は右翼を名乗る暴漢に刺殺された。その死を聞いた浅野総一郎は現場に駆けつけると、すでに自殺していた暴漢の死体をさんざん踏みにじったという。「こんな立派な方を、お前なんぞが!」という思いに駆られたのだろう。

 


日本共産党に「反共市民主義」と批判された小田実(おだまこと)と小中陽太郎は東京都知事選に立候補出来なかった

2022-07-07 14:26:25 | エッセイ

 だいぶ前だが、都内の大手書店で講談社文庫の棚に「何でも見てやろう」が無いのに気づいて、小田実も消えたか!と感慨深い思いに浸ったことがある。かつて講談社文庫には小田実の本が何冊もズラーと並んでいたのだ。それが時を経るにつれて一冊一冊と消えてゆき、小田実の影響力の喪失を示していたのだが、彼のデビュー作である「何でも見てやろう」だけは彼が死んでも残っていた。結局小田実は「何でも見てやろう」だけの作家だった。マスコミに担がれて世間的にはスター扱いされたが、目立ちたがりのお喋りで文章もたいして中身の無いことをひたすらダラダラ書いていてとても読む気にはならなかった。だが平和とか民衆とかをひたすら繰り返すのでそれにうっとりする人々もいたのだろう。
 私の若い頃には読書好きの学生は「大江派」と「小田派」に分かれるとまで言われていた。大江健三郎に嵌るか小田実に嵌る(はまる)かのどちらかなのだそうだ。今では想像も付かないだろう。小田実(みのるじゃないよ)なんて誰も知らないし、大江健三郎はノーベル賞を取ったから名前は知られていても読む人は少ないだろうねぇ、特に若い人は。