カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

高所恐怖症の槍ヶ岳チャレンジ【前編】

2011-09-29 | ヤマのこと

槍ヶ岳・・・「日本のマッターホルン」とも言われ、多くの登山者の憧れの的となっている山・・・


山歩きを始めてから行きたい山はたくさん出てきたけど、高度感のあるところは苦手でいつも逃げていた。
どの山に登ろうと個人の自由だから、無理に苦手な怖いところへ行く必要もない。
だけど山に限らずいつも自分に楽な事ばかり選んで生きていると、なんだか無性に情けなくなる時がある。

この稜線の先はどうなっているんだろう、あの山頂から見えるものはなんなのだろう・・・
それを五感で感じとるには、越えなければならない壁があることは解っている。

それは体力だったり、技術だったり、強い精神力だったり・・・

今まで高度恐怖症でいくつもの怖くて情けない思いをしてきた自分が、
もし「槍ヶ岳」に登頂することができたら、自分の中で何かが変るんじゃないか、
もういい加減変わりたい・・・変わるきっかけを掴みたい・・・そんな思いが芽生えたのが今年の春だった。


我が家から電車バスを乗り継ぎ槍を目指すには、槍沢ルートでも最低2泊3日。
だけど諸事情により夏山シーズンに3日の休みが取れるのが、9月の後半3連休だけしかなかった。
この連休が今年最初で最後のチャンス、でも雨なら中止と決めていた。

台風の直撃はあったものの、道路不通の情報もなし、幸か不幸か三連休の天気予報は晴れ。
さあ、私は自分の中の壁、「槍ヶ岳」に立つことが出来るのでしょうか・・・?


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2011.9.22(金)仕事を終え松本のビジネスホテルに向かい最終便のあずさは走る。
が!!アクシデントの為到着が40分ほど遅れ、チェックインできたのが24:45・・・
寝不足にめっぽう弱い私たち、前日の台風直撃帰宅困難の疲れと、
奥多摩コテンパン事件の疲れを引きずったまま4時台の電車は諦め5:00起床、身体が重い・・・

電車の移動中に眠ろうと思ったが、やっぱり登頂への不安で眠れなかった。
自分で決めた山行なのにまだ、登れる気がしていなかった。
そんな時、唯一今回のチャレンジを知っていた山トモ、
A君Jちゃんから励まし&アドバイスメールが届いてた。ほんの少し、緊張が緩んだ気がした。

松本駅6:32の新島々行きに乗り、上高地バスターミナルへ到着したのが8:30。



2011.9.23(祝)朝の第一陣が出発した後のターミナルは拍子抜けするほど静か。
この朝は寒くて電車も暖房を入れていたほど。
眠くてぼーーっとした頭で9:30、ゆるゆるとスタート。


今年何回か企画していた北アルプスも、休みになると雨でかなわず悔しい思いをしていたが、
スッキリと晴れ渡る河童橋が迎えてくれてありがたかった。



なんと4年ぶり!の上高地。梓川沿いを歩けるだけで、自然と笑みがこぼれる。



懐かしの徳沢園に着き、まずはビール500ml×2本購入。
あさって、必ずここに戻ってきて”野沢菜チャーハン”食べるからね!と誓う。
4年前はここにテントを背負ってくるだけで精一杯だったなぁ・・・懐かしい思い出。



横尾に着くとどこにこんなに人がいたのか?と思うほど混んでいた。


 
昼食を取り、ビール2本購入して先へ進みます。ちなみにお値段は50円ずつ高くなっていました。




さあ、ここからは未知の世界。頑張るぞー!
ここから「槍ヶ岳」までは11kmの行程。



ゆるやかで整備された登山道はなんて歩きやすいの!
先週の奥多摩に比べたら(失礼)快適そのもの。
自然と足が前に出て、快調なスピードで進みます。



分岐から40分程度で「槍見河原」 うっすら槍の穂先が見えた。



一の俣?の橋を渡り、そこからの道も沢沿いにゆるゆると歩く。



ほんの少し登りになったら・・・槍沢ロッジ到着。


 
今回の挑戦を成功させる為、プランは色々考えた。
体力温存、荷物を軽く、小屋泊も視野に入れ事前に数件の山小屋にも電話したが、
予想通り三連休のため、予約だけで3畳に5人だと言われる。
寝不足の身体でやっとの思いで辿り着くであろう(着くかも解らない)ヒュッテ大槍がその混雑じゃ、
混雑苦手な我々に、翌日の登頂は疲れきって無理かもしれない、と悩んだ。

ならば、と考えていたここ槍沢ロッジも、やはり手続きに長蛇の列が出来ていた。
最初から諦めてテント装備でピストン、と決めてよかった

当初の計画通り「ババ平」テント泊。
そこに2泊の予定だったが、とりあえず1泊の手続きをし、翌日分のビールも買って30分先のテント場まで上がっていく。

 
小屋を越えると、やっと山登りらしくなる。
小屋まではほぼ平坦な移動だけだった(長いけど)



 
14:30、ババ平到着。
「もうテン場は一杯だと思いますから、適当に河原に張って下さい」
と小屋で言われていたけど、本当にそうだった

テント場があるだけありがたいのは十分承知の上だけど、
このテント場は申し訳ないけど私は好きになれなかった。
恐ろしいトイレが一つあるだけ・・・ちょっとだけ高台にあるテント場は既に一杯。
河原にテント張るって・・・上部にダムがあるわけじゃないから大丈夫だろうけど、
川が増水することはないのだろうか・・・川とテン場の高低差は50センチ位しかないし?

そんな訳でビビリーな私は落ち着けなかったのだ。
おまけにテントを張り終わったら雨が降ってきた 水場は川の水をすくって使う。
一旦外に出て、川の水に触れると寒くてガタガタ震えてしまうほどの寒い夜だった。

これ以上雨が強くなりませんように、と祈る。
明日への恐怖とテント場の不安で疲れているのに良く眠れなかったのは言うまでもない・・・


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2011.9.24(土)


幸い雨は止んだけど、朝、テントの外張りはパリンパリンに凍り付いて開かなかった 
このテント場は谷筋なのでなかなか日が当たらない。
寒いのもあって結局予定より1時間近くも出発が遅れた。
重い気持ちと重い身体・・・自分で決めたことなのに、不安と恐怖で無口になる。
なんでこう情けないんだ、私って。もう今日は始まったんだよ、なのに楽しめない自分が嫌。



5:45、アタックザックに変えて槍を目指す。
今日はピストンで戻ってくる予定。
どうしても疲れ果てたら山頂で泊まる予定・・・



右足太もものウラが昨日から突っ張るように痛い 先週の疲れを引きずっているのか?
お願い、これ以上痛みよ強くならないで。
まずは標高差約1000mを登りきらなければならないのだから。



まだ見えぬ槍の穂先に向かい、一歩一歩足を進めていく。
大きなテント装備の人も、私たちのようにアタックザックの人も、
みんなまだ目覚め切れない身体で黙々と進んでいく。



日が差してくるとたちまち温度が上がる。結構しんどい。
ここは隠れるところがないから、真夏の日差しは相当なものだろう。
暑さに弱い自分を知っているから、夏の炎天下を避けて秋を選んだ。


 
水場?喉が渇いて飲んじゃったけど・・・(汗)冷たい水で顔を洗って気合入れなおします。



緩くなったり、斜度が増したりを繰り返しますが進んでいるのかいないのか・・・
青空に励まされ無心で登って行きます。すると、



歩き始めて約二時間、あーーーーっ!槍の穂先が見えた!!



すごい!いつも遠くから眺めていた槍が目の前に!
テンション上がるーーー



振り返れば富士山もくっきり


 
8:10、坊主岩分岐。播隆上人様に登らせてもらいますと手を合わせると、後にビックリな事が?




去年登った常念岳が見えた!なんか元気出てきたぞ~~~



槍が見えてからが遠いよ、と言われていたので心構えが出来ていたのかもしれませんが、
私には槍が見えるまでの黙々とした2時間が辛かったかな。



槍の穂先に向かい、大勢の人が登っているのが見えます。
下から見てると登れそうな気がします



槍の肩までの息の切れる急斜面をジグザグのぼりつめていくと・・・



・・・9:30、ついた。荷物が軽かったとはいえCT4時間40分のところ3時間45分で到着。(途中何人にも抜かれたけど)
(※エアリアのCTは甘いことが後で判明(^^;;)
先週の奥多摩トレーニングが吉、とでたのか

気が付けば今朝から突っ張っていた右足の痛みも消えていた。
先ほど拝んだ播隆上人様のおかげか(笑)


んーーでもやっぱりすごい疲れたーーー
バスターミナルからここまで一日で来れる人たち、すごすぎる


ふーーーっとひと息。
登りきった小屋の前で、改めて天を指すそのお姿を見上げたら・・・。







え? コ・・・コワイかも(゜ω゜;)


槍の肩から見上げた穂先への道筋は・・下から見ていたよりもずっと怖かった



緊張感MAX 足が震える  喉がカラカラになってる・・・
ザックを山荘横において、しばし無言。冷静にならなくちゃと頭では解っていても・・・


どうする?私?行けるのか?ダメなのか?




つづく