青空が目に沁みるような10月の晴れた日、
キミはエフェソス一美しいセルシウス図書館の前で寝そべっていた。
それも観光客が密集する石畳の道の上で。
その態度のデカさから、すぐにキミだとわかったよ。
普通の猫は、遺跡の中とはいえ、踏みつぶされかねない道のまん中で
とてもくつろいでなんかいられないからね。
さすがのキミも、しばらくすると観光客の多さにうんざりしたように起きあがり、
クレテス通りの遺跡の方に歩いていった。
そして切り石の窪みに溜まった雨水を長いこと飲んでいたね。
それは2年ぶりの再会だった。
猫の暦は、人間のものより早くめくられていくのだろうか、
キミがずいぶんと老け込んだことに気づいてしまった。
毛並みはガサつき、動作は緩慢に、
後ろ姿は弱々しく、目はしょぼくれていた。
世界に名だたる遺跡で暮らすとはいえ、終生野良猫の身。
老齢に達した猫にとって、猫密度の高いエフェソスでの生存競争は
悠然としたキミの態度とはうらはらに
予想以上に厳しいのかもしれない。
なんだかキミと会えるのも、これが最後になるような気がして、
胸が苦しくなった。
振り向くと、キミは遺跡の石段の上にちょこんとすわり天空を見つめていた。
以前よりひとまわり小さくなったような気がしたけど
その堂々とした座りっぷりに、かつてのボス猫の威厳が残されていた。
※2008・1/18 と 2007・1/8 にも、この猫の写真が載ってるよ!
今回が3度目の出会いとなりました。
※エフェソス(エフェス)はトルコにある古代都市遺跡です。