一日の最後のアザーンが終わり、
モスクから帰路につく人々の波が消えた頃
街のざわめきがすこしだけ遠のいた。
ミナレットの影が黒々とした闇に隠れ
街は密やかなを夜を迎えはじめる。
広場にたむろしていた鳩たちはいつの間にかどこかに消え、
ケバブを焼く食堂の煙突から細い煙がたつ。
職人街から銅板を打ち付ける規則的な音が響き、
客待ちに飽きた絨毯売りが路地の猫にエサを放る。
茶屋からは男たちの静かな会話とコーヒーの薫り。
その脇を、子供たちをあやしながら若い夫婦が家路を急ぐ。
優しき夜の帳よ、
その大きな外套でこの街を包んでおくれ。
しめやかな静寂に浸る街の灯が
このまま瞬き続けていてくれるように。