クロアチアの風  ~茶猫の旅カフェ~

アドリア海の国クロアチアと旧ユーゴの風景をお届けします。旅行情報、写真をお楽しみ下さい。番外編では世界の猫も登場!

サラエボの夜

2010-10-31 22:36:18 | サラエボ
 
 一日の最後のアザーンが終わり、
 モスクから帰路につく人々の波が消えた頃
 街のざわめきがすこしだけ遠のいた。

 ミナレットの影が黒々とした闇に隠れ
 街は密やかなを夜を迎えはじめる。

 広場にたむろしていた鳩たちはいつの間にかどこかに消え、
 ケバブを焼く食堂の煙突から細い煙がたつ。
 職人街から銅板を打ち付ける規則的な音が響き、
 客待ちに飽きた絨毯売りが路地の猫にエサを放る。

 茶屋からは男たちの静かな会話とコーヒーの薫り。
 その脇を、子供たちをあやしながら若い夫婦が家路を急ぐ。
 
 優しき夜の帳よ、
 その大きな外套でこの街を包んでおくれ。
 しめやかな静寂に浸る街の灯が
 このまま瞬き続けていてくれるように。

 

クロアチア食材店

2010-10-21 00:50:21 | クロアチア料理と食材
 

 ツーリスト向けにクロアチア食材をとりそろえたショップが各地に増えている。
 これはトロギールの大聖堂近くのメインストリートに
 この夏オープンした店の品揃え。

 トリュフ、トリュフ・ペーストなどの高級食材から
 おしゃれなパッキングをしたチーズのオイル漬け、
 ナッツ入り蜂蜜、蜂の巣入りの蜂蜜、ジャムやジェリー、
 オーガニックなオリーブオイル、トリュフ入りオイルなどなど‥…

 普通のスーパーでは見つけにくいコショーのクッキー、
 イチジク羊羹、シュガーコーティングのアーモンド菓子
 オレンジピールなども‥…

 今まではザグレブ、ドブロヴニク、スプリットくらいでしか
 見つからなかったような、おめかしした食材が
 ちょっと小さな町でも買えるようになってきたみたい。






生命の泉 イヴァン・メシュトロヴィッチ

2010-10-18 16:46:31 | ザグレブ
クロアチアの彫刻家イワン・メシュトロヴィッチの作品が
ザグレブ国立劇場の前の公園に置かれている。

悲しみと絶望の中にいる人々が、
うつむきながら、寄り添いかばいあうように、
ひとつの泉を囲む。

「生命の泉」と呼ばれるこの作品は
1900年代の初頭にメシュトロヴィッチと交流があったという
オーギュストロダンを彷彿とさせる。

メシュトロヴィッチは
ロシア革命、バルカン戦争、第一次大戦、ユーゴスラヴィア王国の建国
その後第二次大戦への突入、チトーのユーゴ建設という激動の時代を生きた作家である。
オーストリア―ハンガリー帝国の支配に抵抗する作品を残し、
第一次大戦後は他国に避難し、ユダヤ人の妻の家族をホロスコープで失い
彼自身もクロアチアのファシストであるウスタシャの手にかかり投獄され
ヴァチカンの介入により解放されている。

第二次大戦後、社会主義化した祖国を離れ、
アイゼンハワー大統領にホワイトハウスに招かれ、アメリカ市民として迎え入れられたものの
その後祖国の地を踏むことはほとんどないまま
インディアナ州で波乱に満ちた生涯を終えている。

時々に揺れ動く祖国を見つめ続けてきた彼の作品には
その時代背景を象徴してか
過度に政治的、民族的な意図を感じさせるモニュメンタルな作品も多く
個人的には、正直いって美術的に心にとまる作品は意外に少なかった。

そんな中で、この「生命の泉」は
作者の意図に素直に共感できる数少ない茶猫のお気に入りです。

メシュトロヴィッチの作品のは多くは、死後祖国クロアチアに寄贈されており
その多くはザグレブとスプリットにあるメシュトロヴィッチ美術館に収められています。

Ivan Mestrovic (1883-1962)