CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

脳卒中治療ガイドライン2009担当者より返事

2010-03-02 11:30:17 | リハビリ
明確な反論なく、
日本リハビリ医学会がパブリックコメントを準備中とのみ回答。


質問したことは以下の5点。
1)CI療法は手指の伸展ができれば適応となるので、決して「限定的」ではない。
2)仮に対象が限定的であったとして、そういう治療はいかなるエビデンスがあっても決してグレードAにはしない、という方針と理解して良いか。
3)全国規模で実施されていない治療は、同様に決してグレードAにはしない、という方針と理解して良いか。
4)これらの原則は、リハビリに限らず、脳卒中治療ガイドライン2009の全ての項目(内科、脳外科含む)に当てはまる方針と理解して良いか。
5)痙縮に対するリハビリで、ボツリヌス療法が保険適応外にもかかわらずグレードAであるが、これは上記の方針と全く矛盾するのではないか。

いずれに対しても、明確な反論は1つもなく、パブコメを準備中なので、そこに寄せられた意見を含めて、委員会で検討する、との回答。

つまり、上記の指摘程度のこともガイドライン委員会では検討がなされていなかった、ということかと理解致します。なお、一連のCI療法のガイドライン問題に対して、個人的に各方面の方からメールを頂いております。

「CI療法は、推奨グレードAレベルの『高いエビデンスの研究報告が多数ある』のに、CI療法が全国規模で行われていないのなら、むしろ全国的にも推奨・流布する意味でも推奨グレードAにすべきであり、グレードBに下げるのは正しくないと思います。」など、当方の主張への賛同を頂いております。

反論は全くありません。では、なぜガイドライン委員会が、CI療法をわざわざグレードBに降格させたのでしょうか?

脳卒中治療ガイドライン2009における恣意性

2010-02-23 11:08:25 | リハビリ
保険適応外で限定された施設でしか実施できないボツリヌス療法がグレードA
通常の作業療法としてどこの施設でもすぐに実施できるCI療法がグレードB


全国規模で行えることがガイドラインの基準であれば、先端の治療は全く普及しません。この点はまずおかしい。それから、私は保険適応外のボツリヌス療法がグレードAであることには全く異議はありません。しかし、CI療法をグレードBにする理由となった、1)対象が限定的、2)全国規模で行われていない、3)教育が必要、の3つの条件を考えたとき、矛盾しませんか?いずれも、ボツリヌス療法にも当てはまるからです。判断が恣意的と言われても仕方ないと思います。

反論が届きましたら、また掲載します。

CI療法のグレード降格問題に日本リハビリ医学会担当者より回答

2010-02-22 10:57:26 | リハビリ
CI療法は対象者が『限定的』と誤解。
全国10施設以上で確認していても『全国規模では行われていない』と断定。


回答の主旨は1)対象者が限定(的?)である、2)全国規模で行われていない、3)教育を受けた者が行う必要がある。よってBと判断したそうです。

CI療法の適応はリンクの通りであり、Wolfは脳卒中全体の20%程度と言っています。軽症例のみという誤解は、どこかの施設で実施していた先入観であり、集団伸展のみの場合でも適応になります。集団伸展レベル以上の対象者を、限定的である、とか、軽症例である、という見解には無理があります。

では、全員にできないではないか、というようなことを主張する人もまれにいますが、医療には『適応』があるのは当然であり、万能薬ほど怪しいものはありません。集団伸展が可能、等の適応基準をもっているため、適応外にはCI療法はできませんが、そのことをもって、限定的と断じるのはいかがなものでしょうか。

また、欧米で何百というエビデンスがあっても、なくても、日本全国で行われていなければグレードAにはならない、というガイドライン委員会の方針は初めて知りました。これが、内科治療、脳外科治療を含めて、脳卒中治療ガイドラインの方針であるのかどうか、委員長に問い合わせ中です。CI療法は、兵庫医大だけでなく、作業療法学会などで発表されているだけで10施設程度はあり、それ以外にも相当に広まっております。ガイドラインの委員の施設でたまたま実施されていないということでの印象であれば、これも認識不足ではないかと思います。全国規模という閾値を100施設など高いレベルかどうかは不明ですが、欧米で普通に実施されている高いエビデンスの治療を、むしろガイドラインがきちんと推奨して、日本全国に広まるように編集する見識があって良いと思います。編集委員長レベルの先生方はそのようなことを理解されていると思います。

以上、ずいぶんと偏見があるようで、困っております。また、ご報告します。

ニューロリハビリテーションに関する国際ワークショップ開催

2010-02-17 19:38:57 | リハビリ
ニューロリハビリテーションに関する国際ワークショップ開催
International workshop on Neuro-Rehabilitation
Tokyo Institute of Technology, Feb. 15-16, 2010

Organizer;Prof. Yasuharu Koike Tokyo Institute of Technology
Program Feb. 15th-16th
Organized Secretary: Assistant Prof. Hiroyuki Kambara

●Welcome and introduction to the workshop
 Y. Koike

●Is it possible to recover from agrahia ? Reacquisition of cursive handwriting by a simple saggital plane hand movement
 Dr. Kazuyoshi Fukuzawa (Waseda Univ.)

●The role of cutaneous afferents in speech motor learning and perception
 Dr. Takayuki Ito (Haskins Laboratories)

●Dr. Ganesh Gowrishankar (ATR)

●Dr. Etienne Burdet (Imperial College London)

●Optimal robot assistance for motor skill learning and rehabilitation
 Dr. Vittorio Sanguineti (University of Genova)

●脳科学とリハビリテーションが出会うとき
 大須理英子(ATR脳情報研究所)Dr. Rieko Osu

●fNIRSによる運動学習過程の脳活動計測
 和田安弘(長岡技術科学大学)Dr. Yasuhiro Wada

●Neuro-rehabilitationの展開としてのCI療法とその実際
 道免和久(兵庫医科大学)Dr. Kazuhisa Domen

●計算論からリハビリテーションへ
 小池康晴(東京工業大学)Dr. Yasuharu Koike

●Closing Remarks


私の発表の中で、<Neuro-rehabilitationとは、「ニューロサイエンスとその関連の研究によって明らかになった脳の理論等の知見を、リハビリテーション医療に応用した概念、評価方法、治療法など」>であり、単なるNeurological Disease Rehabilitationではないという主張を申し上げました。小池先生も、Neuroscience-based Rehabilitation、あるいは、Nicolas Schweighoferが主張する、Computational Neuro-rehabilitationという定義を支持されました。新たなCollaborationにより、先端のリハビリテーション治療を患者さんに届けられるようにしたいと思います。

待望の論文出ました!(Motor Activity Log: MAL)

2009-12-16 16:47:33 | リハビリ
麻痺側上肢の使用度について評価するMotor Activity Logの正式な日本語版の論文がようやく出ました。(この雑誌は査読がかなり遅いようです)

新しい上肢運動機能評価法
日本語版Motor Activity Logの信頼性と妥当性の検討


高橋香代子、道免和久、佐野恭子、竹林崇、蜂須賀研二、木村哲彦
作業療法 28(6):628~636、2009


Wolf Motor Function Test(WMFT)日本語版(総合リハビリテーション 36巻8号(2008.08)P.797-803)と合せて、上肢機能評価に関する強力なツールが揃いました。皆様もどうぞご利用下さい。

ニューロリハビリテーションとは

2009-12-07 16:08:13 | リハビリ
今回の特別講演『Neuro-rehabilitation』の中で、これまで曖昧であったニューロリハビリテーションNeuro-rehabilitationを再定義しました。

ニューロリハビリテーションとは
「ニューロサイエンスとその関連の研究によって明らかになった脳の理論等の知見を、リハビリテーション医療に応用した概念、評価法、治療法など」(2009年道免和久)

重要なことは、単なる神経疾患のリハビリ(Neurologic rehabilitation)ではなく、Neurologyはもちろん、Neuroscience的知見の臨床応用をめざす点です。したがって、Neuro-rehabilitationの研究を推進するためには、リハビリ医学、理学療法学、作業療法学、言語療法学、神経内科学だけでなく、解剖学、神経生理学、バイオメカニクス、心理学、計算論的神経科学、ロボット工学などの学際的な知恵を結集する必要があります。

今後の発展をご期待下さい。

脳卒中リハビリテーション医療のあり方と回復期リハビリテーション病棟の役割

2009-11-29 11:01:07 | リハビリ
第22回山口県回復期リハビリテーション病棟研究会で講演して来ました。

特別講演『脳卒中リハビリテーション医療のあり方と回復期リハビリテーション病棟の役割』
(平成21年11月28日15:00~16:30 於:宇部)

回復期リハビリ病棟の運営に携わるスタッフのある種の閉塞感を打ち破るような内容だった、とお褒め頂きました。また、地域毎にいろいろと実情が異なる中、頑張っておられる様子もわかりました。やはり、地方によっては、脳卒中ばかりでなく、廃用症候群のリハビリも重要だと思いました。

宇部第一病院、研究会の皆様、お世話になりありがとうざいました。

特別講演『ニューロリハビリテーション』抄録

2009-11-26 13:15:46 | リハビリ
第13回茨城県総合リハビリテーションケア学会学術集会
第13回茨城県理学療法士学会 テーマ 「Neuro-rehabilitationの現在と未来」
特別講演:『Neuro-rehabilitation』 兵庫医科大学リハビリテーション医学 道免和久

特別講演『Neuro-rehabilitation』 ~抄録に代えて

私がNeuro-rehabilitationという言葉を使い始めたのは、平衡位置制御仮説のMark L Latash先生と計算論的神経科学の川人光男先生という、理論的に相対立する両大家のもとに留学中の1996年頃であった。当時両者の研究室は、運動制御に内部モデルが必要かどうかで世界的な大激論を繰り広げていた。その渦中にあって、私は運動制御や運動学習理論、そして脳の計算論を学ばせて頂いた。同時に、運動制御理論以外にもさまざまな分野において脳科学が著しく進歩していることに大いに触発され、Neuro-rehabilitationの発展の必要性を訴えるようになった。(この頃、私のメールアドレスがneuro-rehaとなった。)

その頃私には、基礎のニューロサイエンスがこれだけ進歩しているのに、その応用分野として最有力であるはずのリハビリ医療に携わる人達が、あまりにもこの分野に無関心に思えた。運動障害を治療する私達が運動制御を知らない、脳損傷を治療する私達が健常の脳の仕組みを知らない、運動学習理論すら知らない、そんな悔しい思いの中で、地道に研究を続けた。以来、Neuro-rehabilitationについて発信を続け、フィードフォワード運動訓練、CI療法(Constraint-induced movement therapy)、そして、人材育成のためのニューロサイエンスセミナーの開催などの仕事につながっている。最近、私以外にもさまざまな切り口でNeuro-rehabilitationの重要性を訴える研究者が増えてきたことは、喜ばしい状況であり、何よりもこの学会のテーマが「Neuro-rehabilitationの現在と未来」となっていることは、素晴らしいの一言に尽きる。

個人的には、Neuro-rehabilitationを「ニューロサイエンスとその関連の研究によって明らかになった脳の理論等の知見をリハビリ医療にさまざまな形で応用すること」と広く定義している。Use-dependent plasticityという脳の可塑性を、脳損傷患者のリハビリに応用したCI療法は、Neuro-rehabilitationの最も典型的な治療であり、EBMとしても十分に確立している。その他にも、脳損傷患者に対するロボットリハビリや磁気刺激も有力な治療法であろう。しかし、私の定義で考えると、Neuro-rehabilitationは神経疾患や脳損傷の治療に限らない。例えば、脳の運動学習理論を応用した治療であれば、骨関節疾患のリハビリであってもNeuro-rehabilitationに含まれると考えている。

本講演では、毎年実施しているニューロサイエンスセミナーのスライドを使いながら、運動制御や運動学習理論とその応用に触れ、次に、CI療法の理論と実際について話題提供して、Neuro-rehabilitationの本質を参加者の皆様と一緒に考えたい。

運動制御・ニューロリハビリテーション研究会

2009-11-24 16:15:31 | リハビリ
今年の7月に第7回Progress in Motor Control(PMC)という学会がマルセイユで開催され、私も発表して参りました。

この学会は、私の恩師であるPennsylvania州立大学のMark L Latashが主催しています。今年は日本から10人近い参加者がありました。(写真には、Latash、Feldman 、研究者仲間が映っています。)

PMC自体は隔年開催(次回は2011年)なので、その間の年に、日本PMC研究会を開催しようという機運が盛り上がっています。(すでにマルセイユでLatashとの間では盛り上がっていました。)ネーミングは、『日本運動制御・ニューロリハビリテーション研究会』『日本先端運動制御科学研究会』『Japan Sciety for Motor Control and Neuro-rehabilitation(日本運動制御・ニューロリハビリテーション学会)』等が候補に上がっています。

初年度の2010年は、山口大学で8月末に少人数合宿形式での開催を検討中です。

私達は長年、神経科学、運動制御、運動学習、ニューロリハビリテーション等の必要性を訴えてきましたが、欧米のPMC学会で発表されるのと同様の幅広い分野の専門家が、ようやく日本でも集まれる時代になってきました。

開催告知は、このブログで致しますので、どうそお楽しみに。

Twitter(つぶやき型簡易ブログ)始めました

2009-11-11 12:27:45 | リハビリ
Twitter(つぶやき型簡易ブログ)始めました。

やり方は試行錯誤中です。当然ながら全世界に公開されるので、書けることは限られますが、できるだけ本音のつぶやきを書きたいと思います。多田富雄先生の『寡黙なる巨人』はリハビリ医療関係者向けの"宝石箱"だと思いますので、Twitterで紹介して参ります。


磁気刺激による脳可塑性の誘導~The Journal of Physiologyに掲載

2009-10-17 16:51:07 | リハビリ
当大学院3年生で、リハプロ2009のニューロサイエンスセミナーでも講師を勤めた小金丸聡子さんの論文が、The Journal of Physiologyに掲載されました。

両側大脳皮質に対する磁気刺激が脳の可塑性を誘導することを示した研究です。

http://jp.physoc.org/content/587/19/4629.abstract

Human motor associative plasticity induced by paired bihemispheric stimulation.

: J Physiol. 2009 Oct 1;587(Pt 19):4629-44. Epub 2009 Aug 17.
Koganemaru S, Mima T, Nakatsuka M, Ueki Y, Fukuyama H, Domen K.
Department of Physical Medicine and Rehabilitation Medicine, Hyogo College of Medicine, Mukogawacho, Nishinomiya, 663-8501, Hyogo, Japan.

リハプロ2009 ニューロサイエンスセミナー風景

2009-10-17 00:26:06 | リハビリ
リハプロ2009 ニューロサイエンスセミナー風景です。
今水寛先生の特別講演と実習の写真です。実習の活気や熱気が伝わってきます。


リハプロ2009 高次脳機能障害セミナー風景

2009-10-17 00:19:59 | リハビリ
リハプロ2009 高次脳機能障害セミナー風景です。10日と11日と同一プログラムを実施しました。300人の大教室ですが,200人近く入るとかなりいっぱいになります。参加者の皆様お疲れさまでした。

リハプロセミナー2009無事終了

2009-10-12 10:54:33 | リハビリ
10月10日~11日、リハプロセミナー2009は無事終了致しました。

ニューロサイエンスセミナーには、全国から42名が参加。2日間に渡って、ハードな講義と和気藹々とした楽しい実習の時間を過ごしました。特別講演の今水寛先生の結びのスライドが、今水先生と私とMark Latashのマルセイユでの写真で、「特定のモデルに固執することなく、虚心坦懐に結果を考察する」という言葉が印象的でした。それから、参加者のほとんどが、「仮想軌道」「スティフネス」「内部モデル」などの言葉を理解して、普通に使うようになったことは、本当に嬉しいことです。来年もこのセミナーは微調整しながら継続します。

また、10月10日と11日は同一プログラムで、高次脳機能障害研修会を実施。こちらも全国から400名近い参加者があり、大盛況でした。理論から復職まで、かなり幅広い内容でしたが、主催者の意図はご理解頂けたと思います。私個人は、定番の講義「脳機能早わかり」に全力を尽くしました。このセミナーは、今年が初めての開催ですので、今後グレードアップして、継続したいと考えています。

それにしても、2日間で10時間近い講演を何とかこなすことができました。私個人の記録を更新です。参加者の皆様の熱意と、裏方のスタッフのおかげです。本当にありがとうございました。

来年のリハプロ2010をお楽しみに。


多数の読者に感謝申し上げます。

2009-10-06 12:23:10 | リハビリ
リハビリ日数制限問題から3年以上経過しておりますが、今もなお毎日コンスタントに200ipを越える読者の皆様に感謝致します。政権交代後、また読者が増えているようです。

ここのところの読者の増加は、長妻厚生労働大臣のリハビリに関する政策判断を国民が注視している結果と思われます。また、中医協改革が断行される中で、支援者でも家族でもなく患者当事者が本当に中医協に入れるのか、そのあたりも注目されます。さらに、医療費のあり方をどう考えるかも論点でしょう。急性期病院もリハビリ病院も、ベッドを満床に埋めなければ赤字が当たり前の診療報酬制度では、本当に患者のための医療は実現するのか、という疑問に、新政権はどう答えるのでしょうか?

何か情報があれば掲載致しますが、ブログ・医療破壊・診療報酬制度・介護保険問題を考えるの方もご覧下さい。こちらは、私が執筆者とは限りませんが、記事内容によっては優先して掲載しています。

今後ともよろしくお願い致します。

なお、喜怒哀楽の「喜」と「楽」のみで綴ったプライベート版癒し系の話題はRehaxブログに掲載しておりますので、一息つかれたい方は、どうぞお立ち寄り下さい。