CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

特別講演『ニューロリハビリテーション』抄録

2009-11-26 13:15:46 | リハビリ
第13回茨城県総合リハビリテーションケア学会学術集会
第13回茨城県理学療法士学会 テーマ 「Neuro-rehabilitationの現在と未来」
特別講演:『Neuro-rehabilitation』 兵庫医科大学リハビリテーション医学 道免和久

特別講演『Neuro-rehabilitation』 ~抄録に代えて

私がNeuro-rehabilitationという言葉を使い始めたのは、平衡位置制御仮説のMark L Latash先生と計算論的神経科学の川人光男先生という、理論的に相対立する両大家のもとに留学中の1996年頃であった。当時両者の研究室は、運動制御に内部モデルが必要かどうかで世界的な大激論を繰り広げていた。その渦中にあって、私は運動制御や運動学習理論、そして脳の計算論を学ばせて頂いた。同時に、運動制御理論以外にもさまざまな分野において脳科学が著しく進歩していることに大いに触発され、Neuro-rehabilitationの発展の必要性を訴えるようになった。(この頃、私のメールアドレスがneuro-rehaとなった。)

その頃私には、基礎のニューロサイエンスがこれだけ進歩しているのに、その応用分野として最有力であるはずのリハビリ医療に携わる人達が、あまりにもこの分野に無関心に思えた。運動障害を治療する私達が運動制御を知らない、脳損傷を治療する私達が健常の脳の仕組みを知らない、運動学習理論すら知らない、そんな悔しい思いの中で、地道に研究を続けた。以来、Neuro-rehabilitationについて発信を続け、フィードフォワード運動訓練、CI療法(Constraint-induced movement therapy)、そして、人材育成のためのニューロサイエンスセミナーの開催などの仕事につながっている。最近、私以外にもさまざまな切り口でNeuro-rehabilitationの重要性を訴える研究者が増えてきたことは、喜ばしい状況であり、何よりもこの学会のテーマが「Neuro-rehabilitationの現在と未来」となっていることは、素晴らしいの一言に尽きる。

個人的には、Neuro-rehabilitationを「ニューロサイエンスとその関連の研究によって明らかになった脳の理論等の知見をリハビリ医療にさまざまな形で応用すること」と広く定義している。Use-dependent plasticityという脳の可塑性を、脳損傷患者のリハビリに応用したCI療法は、Neuro-rehabilitationの最も典型的な治療であり、EBMとしても十分に確立している。その他にも、脳損傷患者に対するロボットリハビリや磁気刺激も有力な治療法であろう。しかし、私の定義で考えると、Neuro-rehabilitationは神経疾患や脳損傷の治療に限らない。例えば、脳の運動学習理論を応用した治療であれば、骨関節疾患のリハビリであってもNeuro-rehabilitationに含まれると考えている。

本講演では、毎年実施しているニューロサイエンスセミナーのスライドを使いながら、運動制御や運動学習理論とその応用に触れ、次に、CI療法の理論と実際について話題提供して、Neuro-rehabilitationの本質を参加者の皆様と一緒に考えたい。

最新の画像もっと見る