噛噛堂 あと2112冊

遅読、積ん読、併読、乱読。それでも読んどく、70までの2112冊。いよいよカウントダウン。

普通の家族がいちばん怖い

2010年05月02日 | よのなか棚

岩村暢子    新潮文庫  2010年(2007年単行本)

ついこの間、知りあいの「うちのコ(14歳)まだ本当にサンタさんがいると思っているの」…
なる発言になんともコメントを返せなかったという経験をしたばかりのところにこの本です。

223世帯を対象にした「正月」「クリスマス」を主軸に、七夕、ひな祭り、節分等のその他年中行事の実態調査。
ただの実態調査なんだが、この現実を養老孟司の帯広告通りホラーと感じるか、
どこが悪いの?と感じるか。
これは世代間的な感想の差が現れるであろうな~、と予想した当のジブンは、
ある部分はホラーと感じ、ある部分はアタシもそうだしーと思い…
なんとなれば、私好みにこだわって各種行事をアタシルールで演出していく主婦年代と、伝統浸み込み主婦年代の分岐点が、生年1955年前後なのだというからむべなるかな。

ま、伝統行事といったって太古の大昔から続いているわけでもなく、
七夕なんか太陽暦の7月7日にするもんだから梅雨のさなかにやってるわけだし。
盆暮れ正月にこそシャカリキに働かなくてはならない人(&そういう人のいる家族)はもはや少数派ではないと思うし。
もちろん文庫版あとがきの通り、…人はどうも私を、日本の伝統行事推進者か保存委員みたいなお堅い人間だと思っているらしい。はて、困った。だから今一度言わなくてはいけないだろう。「この本は、日本の伝統行事や正月の伝承り御節が衰退している事を嘆いたり戒めたりしている本ではありません」と。
そういう本なのです。誤解のないように。文脈が批判風である箇所もあるけれど。

223世帯をただただ浮かび上がらせただけのこの本が放つものについては、
各章各章辿りながら、ぜひとも「誰か」と語りあいたい。
そんな、ただごとではない気分に満ちて、いったん読み終えた、という一冊でありました。

new95冊目(全101冊目)


それにしてもこのタイトルとサブタイトル。
著者のスタンスに反して、読者に予断を許しまくってしまうこのタイトルのつけようは…