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裏から見たゴールデン・グローブ賞

2007-01-16 13:52:18 | リラクゼーション
ただいま、2007年ゴールデン・グローブ賞の授賞式が生中継で放映されています。だけど、裏番組で、話題の社会派ドラマ、『24』の2時間プレミア版が放送されていたので、8時~10時はそっちを見てしまった。ゴールデン・グローブ賞は11時まであるので残り1時間はそれを見ているところ。

で、ゴールデン・グローブ賞のこれまでの結果をウェブで調べてみて、ガックリというかやっぱりというか。

真に優れた俳優や作品が選ばれるというより、いかにハリウッドで幅(コネ)のきいた人たちかで選ばれているのがミエミエ。

例えば、助演女優賞では、Babelで難聴者を演じたKikuchi Rinkoではなく、DreamgirlsのJennifer Hudsonが受賞。僕は両方の映画を見たけど、Dreamgirlsは、人気歌手ビアンセやエディー・マーフィーなど大物を起用して鳴り物入りで作られた映画というだけでイマイチだった。ストーリーの途中ダレル。一方、Babelは、メキシコの監督が製作した社会派作品で、見ごたえがあった。演技も、HudsonよりKikuchiのほうが断然、迫力があった。

「コメディー・ミュージカル部門」では、Dreamgirlsの他に、僕のお気に入りの作品がたくさんノミネートされていた。「THE DEVIL WEARS PRADA」、「LITTLE MISS SUNSHINE」(ここのブログで紹介)、そして「THANK YOU FOR SMOKING」(ここのブログで紹介)。なのに、これら名作を差し置いて、駄作のDreamgirlsが受賞!Unbelievableとはこのこと。

監督賞でも、Babelのメキシコ人監督Alejandro Gonzalez IÑÁRRITUじゃなくて、The Departedの大御所マーティン・スコセッシ。僕はThe Departedは見ていないのだけど、ジェームスによるとイマイチだったとか。一方、Babelは僕と一緒に見に行ったジェームスも大絶賛して、特にKikuchi Rinkoの演技に泣きそうになったって言ってました。

新たに創設された部門、「外国語作品部門」では、資金も撮影場所も監督もアメリカという「硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督)と、同じく「Apocalipto」(メル・ギブソン)がノミネートされて、イーストウッドが受賞。この部門では、これまたメキシコ人監督の話題作、「Pan's Labyrinth」がノミネートされていたのに。

外国人(非アメリカ人)で今回受賞した人たちを見ると、BoratのSACHA BARON COHENとThe QueenのHELEN MIRRENと、両方イギリス人!いかにも歴史と伝統で、アメリカは頭が上がらないヨーロッパ、イギリスに媚びへつらった格好そのままの結果。

ハリウッドにしてみれば、「ヨソモノ」のメキシコ人監督や日本人俳優よりも、身内のアメリカ人に賞を送りたいというバイアス(偏見)が入った受賞結果なのがバレバレ。はっきり言って、見ていてムカつきました。アメリカ人ばかりの視点で放送されるオリンピック中継を見ているのと同じ気分だった。

唯一の救いは、たった今、ベスト・モーション・ピクチャー部門に、よ・う・や・く、Babelが受賞して、メキシコ人監督がスピーチをしている。なんか、アメリカ人(とイギリス人)ばかりを選んでしまったので、お情けにメキシコ人監督の作品に賞を上げたって感じ。

自由の国アメリカ、移民にも平等にアメリカン・ドリームのチャンスが与えられる、、、なんて口当たりのいいことをスローガンのように掲げている国だけど、内情は既得権益の保護に奔走する白人アメリカ人(WASP)が闊歩するんだよなぁ・・・。

そういえば、ワールド・ベースボール・クラシックでも、嫌味なくらい明らかなヒイキと誤審をアメリカの審判がしてブーイングが起きてましたね。試合のセッティングそのものも、アメリカ・チームに有利なように設定されていたり。まさに、あれと同じです。

■ ■ ■
映画産業だけじゃなく、この白人エリート集団の既得権益保護主義の傾向は色々な場面でも見られる現象。例えば、アイビー・リーグを筆頭に、アメリカのエリート大学が、志願者の選別をする際、成績だけではなく、人種や家柄を重視して選んでいるというのは有名な話。去年9月に上梓されて話題になっている本、「The Price of Admission: How America's Ruling Class Buys Its Way into Elite Colleges -- and Who Gets Left Outside the Gates(入学への代金:アメリカの権力階級がいかにエリート大学への切符をお金で買っているか――そして誰がその入学の門から取り残されているか)」はその一例(この本の書評はこちら)。

この本では、かつて、勤勉で優秀なユダヤ人たちがアイビー・リーグへの入学で差別されていたということや、今では、テストで優秀な成績を取るアジア人が、かつてのユダヤ人と同様の差別扱いを大学に受けているという実情が暴露されている。

そして僕も直接聞いた話として、ゾッとした逸話がある。これは10年近く前に聞いた話なのだけど、ニューヨーク好きな日本人ということで、NYU(New York University)を志願する日本人が多い。これは今でも同じだと思う。そして、NYUは多くの日本人に入学許可を出している。だけど、厳しいアメリカの大学(院)で、合格点を取って卒業できるのは日本の大学の比ではない。日本人学生の多くが脱落して退学やランクの低い大学への転向を余儀なくされている。僕のNY時代の同僚も、NYUのジャーナリズム学科に入学しながら、卒業はマサチューセッツの地味な大学だった。

このことについて、NYUの学部長に率直質問をした英文学科で博士課程に在籍していたアメリカ人がいる(この人は、今、僕の日本の大学で教鞭を取っている)。

「日本人があんなに入学しているのに、今ではほとんどキャンパスで見かけなくなってます。どうしてですか?」

「彼らは英語でペーパー(論文や期末レポート)がまともに書けないんだよ」と学部長。

「じゃ、なんで彼らを入学させたんですか?」

「日本人は高い授業料もちゃんと払うからね」

日本人、しっかりしろ!と太平洋の反対側から叫んでみてもしょうがないけど、アメリカのカネヅルという意味では日本政府も同じなワケで・・・。そして、僕もアメリカの大学院(NYUではないです)に行ったのだけど、授業料は全額納入したワケで・・・。(同期のフランス人留学生やドイツ人留学生に聞いたところ、彼らは大学から授業料が減額されていたとか。)

グリーンカードは欲しくても、この国の国民にだけはなりたくないって常々考えさせられます。(アメリカにはいい所・いい人も沢山あるのだけど、嫌なところも沢山ある。)