昨日のブログを書いてから、何故か疲れてせっかくの土曜なのに自宅でゴロゴロしてしまった。そして暇つぶしにやってきたJamesに、Jimmyの家に初めて泊まったことや、Jimmyとの会話がイマイチだったことなんかをブログに書いたままに告白。Jamesの一番の心配は、「このJimmyっていう人は、前のDavidみたいに性格ひん曲がってない?」というもの。それは大丈夫というのを念押ししておいた。ただ、Jimmyの性格が120%一直線なのが心配というか、おののいてしまうのだけど。
そんな午後を過ごしていたら、またJimmyから僕の携帯電話に電話がかかってきた。午後5時半くらい。僕がJimmyの家を出てからまだ4時間くらいしかたっていない。僕はJamesに、「あ、Jimmyから電話。ちょっと静かにしてて」と言って電話に出た。そしてJimmyからの電話の内容は、「今晩、また一緒にどこか行こう」ということ。
数時間前に別れたばかりなのにまた誘われてしまって、複雑な心境。今日の午後わざわざ僕を家に追い返した理由はなんだったの?
だけどJimmyの心境が掴みきれてなかった僕は、この間髪入れない電話に嬉しかったことは言うまでもなく。
そして僕たちはチャイナタウンで待ち合わせをした。そしたらJimmy、今日の午後散髪に行ってきたらしく、髪を軍人さんのごとく短くカットしている。前のちょっと伸びたほうが僕は好きだったのだけど・・・。だけど一応、「You look cute」とお世辞を言うことは忘れずにいました。
この晩は
Chicken Littleというディズニー映画を観ることにした。子供向け映画だったけど、ディズニーにお決まりのゲイのキャラクター、ブタ君が登場して、大人も楽しめる映画だった。僕もJimmyもところどころ大爆笑。大人、しかもゲイにしか分からないようなジョークがちりばめられてて笑えました。それにこの晩は居眠りしなかったし!(僕ってもしかしてお子様?)
二人で映画館を出ると、土曜の夜ということもあってものすごい人だかり。しかもバスケットの試合があったようでそれを見終わった観客があふれかえっている。僕とJimmyは夕食を求めてごった返す交差点まできた。すると、その人ごみの中に、僕がこの夏、一晩の情事を過ごした男、Warrenが。彼と目線があう。向こうは同じような30代の白人男4人組でつるんでいる。Warrenは交差点を横切る途中。渡りきったところでもう一度振り返って僕のほうを見る。慌てて僕は違う方向に顔を背ける。このとっさの行動にJimmyはまったく気がついていない。
「確か、向こうのほうにピザ屋があったから行ってみよう」
と行って、交差点をわたり始めるJimmy。
Oh my god...(僕の心の叫び)
マジやばい状況。Warrenがまた振り返って、しかも話しかけてきたらどうしよう。Jimmyと上手くいきかけている関係が砂のお城のように崩れてしまうのは目に見えて確実。自業自得、因果応報とはこういうことを言うんだねっていまさらながらに自分の軽率な行動を反省。でも時既に遅し。しかも、Jimmyの歩くスピードが早い。あっという間に先に渡ったWarrenたち4人男の真後ろにつけている。
Oh my god...
Warren達を抜きそうになるその一瞬、Jimmyは「あ、このハンバーガー屋は?」と僕に聞いてきた。天の助け!とばかりに僕は立ち止まって入り口のメニューに見入る。だけど中は普通のファーストフード店。色気ないことこの上ない。性格も良くて優しいJimmyだけど、食事に関しては一切、僕と趣味が合わなさそう・・・。あ、牛乳は飲まなくて豆乳派というのは僕と一緒だけど。でもとにかくハンバーガー、ステーキ、いわゆる典型的なアメリカン・フードが好きなJimmy。そして野菜をあんまり食べない。しかも、アジア料理のレストランをお勧めしてみても、乗り気じゃないのが分かる。結局この夜、場所を変えてアメリカ料理屋(兼バー)に僕たちは落ち着きました。Warrenとの鉢合わせもどうにか避けられてホッ。
この晩のJimmyはちょっと別人だった。昨日のブログでは、話が一方通行でつまらない!ということを書いたけど、この晩はJimmyはなぜかリラックスしていてよく笑った。会話も弾んで、ちゃんと「キャッチボール」していた。これが本当のJimmyなのかなぁ。この夜に比べると昨日までのJimmyは凝り固まった万年雪のよう。
そして二日連続、Jimmyの家でお泊り。
翌朝、昨日と同じようにお腹の上に乗っかってきたネコに起こされる。
既に起きてコンピュータに向かっているJimmy。何をしているのかと思いきや、また株価をチェックしている。これって、Jimmyの趣味なんだね。しかも、なんかエクセルシートを開けてにらめっこしている。「Good morning...何してるの?」といいながら覗き込んでみると、左端には年齢、そして年齢ごとに増えていく彼の年俸の予想額、その他、株価上昇も見込んで、年齢別に資産がどれくらい成長していくかを予測するチャートになってる。
「このエクセル・チャートってもしかしてJimmyのお手製?」
「そうだよ」
――Wow。
彼のことが少しずつ分かってきた気がする・・・。
一応、話を弾ませるために「米ドル以外の外貨投資もしてる?」なんてちょっとテクニカルなことを聞いてしまった。
「もちろん。為替リスクは計算に入れてないんだけど、ブラジルの株式を買ってるんだ」
「ブラジル?ちょっとハイリスク・ハイリターンじゃない?」
「知らないんだ。これが僕が買っているブラジルの株式チャート。ちゃんと毎年上昇してる。僕が買ってるのは消費財を生産している会社じゃなくて、鉱石とか天然資源を生産している会社だから突然つぶれるっていうことはないんだ」(Jimmyはこの他にも3分くらい株式投資の説明をしてくれた・・・)
さらにJimmyは、
「僕の甥たちのために大学資金も積み立て始めたんだ」
「そうなんだ。僕のためにも資金積み立ててくれない?ははは」と冗談で言ってみた。
「もし君が僕のパートナーになったら」とマジな回答をするJimmy。
「ハハハ」(←乾いた僕の笑い)
この他にも朝っぱらからディープな話が目白押しだった。彼のこれまでの恋人4、5人について話をし始めた。いつになっても、デート中の人の元カレの話を聞くのは心が痛い。ジェラシーってやつだね。それがたとえ過去のことであっても。しかもJimmyの遍歴は国際色豊か。パキスタン、ブラジル、などなどとにかくエスニック。
複雑な気持ちを抱えつつ、さて、今朝は何をするのかなぁと思っていたら、Jimmyが誰かに電話を始めた。
「そう、Tyっていう名前なんだ。水球で知り合った。僕のこれまでの例に漏れず、彼も外国人で日本人。身長は僕より少し低いくらい。体重はずっと低いけど」
Jimmyが話していたのは彼の旧友Lenny。この近所に住んでいる。Jimmyの親友というのは、同じマンションに住んでいるJohnとこのLennyらしい。Jimmyによると、Lennyの秘密のEメール・アドレスは、「MuscleLover(筋肉好き)」らしい。これを聞いただけでLennyがどんな人か想像ついてしまった・・・。Jimmyは、僕を彼の親友Lennyに紹介するために一緒にブランチを取るセッティングをしたのだった。ついにきました。親友への恋人紹介。僕は、「面接試験ってやつだね」と皮肉交じりに言った。「いや、僕は友達の意見は参考にしないから」とフォローするJimmy。
「ところで、James XXXって誰?」
ネコとベッドの上でじゃれあっていた僕はあまりに唐突な質問に心臓が飛び出しそうになった。
「なんでその名前を知ってるの?」
「君の電話のコーラーIDがJames XXXってなってたから」
「あ、なるほど・・・Jamesっていうのは僕の大親友で、家族も同然の人なんだけど、元恋人でもあったんだ。今でもすごく親しくしていて、携帯電話もまだ彼とファミリー契約して加入したときのままになってる」
これはすべて事実なんだけど、Jimmyの鋭い質問にうろたえたまま動悸が治まらない。一瞬、Jimmyは僕の身辺調査をしたんじゃないかと思ってしまった。Jimmyの一直線な感じからするとそれもありえる。Jimmyは僕の説明に納得した様子で、それ以上は何も聞いてこなかった。
Lennyとのブランチを終え、僕たちはJimmy宅へ戻ってきた。天気のいい日曜日。「一緒にシャワー浴びる?」といわれるがままにJimmyとシャワー。
――またまた約1時間後。
二人とも疲れてまたベッドでウトウト。ネコのAugustも仲間に入ってきて二人と1匹で日曜午後をベッドでうたた寝をして過ごした。ふと目が覚めると、外は薄明るい。目が覚めたJimmyが「また朝?」なんて冗談っぽく話してきた。
だんだんと日が沈んで薄暗くなる中、僕たちはベッドの上で抱き合ったまま、また色々なお話をした。
「今度水球に行ったら大変だなぁ」と僕は始めた。
「なんで?」
「だって、みんなと一緒にシャワーを浴びてるときに、Jimmyが隣に来てもこういう風にはできないでしょう?なんか変」
「わかった、僕はちょっと距離を取るようにするよ」
「う~ん、そういう意味じゃなくて。Jimmyは僕のそばにいて欲しいんだけど。いずれ、誰もが分かることだと思うから」
「もうMarkは知ってるよ。彼とは仲のいい友達だから。そしてMikeも感ずいてるんじゃないかな。みんなこういうことには敏感だから。木曜夜、僕と二人で家路についたのをMikeは知ってるでしょう?」
やっぱり、あの「選択」は誰の目にも明らかだったんだね。驚いたのは、JimmyによるとMikeは「エゴの大きな人」らしい。自分中心で主導権を握らないと気がすまないタイプ。これには意外だった。だって、僕を水球に誘ってくれたのはMikeだったし、これまで練習に行ってもいつも「Hi, Ty!」って呼んでくれたし、水球を教えてくれたりとても親切だったから。
JimmyはMikeの他にも水球メンバーのことについて話し始めた。「ゴールキーパーのTomは、僕がオンラインで知り合って水球に誘ったんだ。確か、SMの皮のジャケットをインターネットで売ったのがきっかけで知り合ったと記憶してるんだけど。その後も一緒にSMバーに行ったりして長い付き合いになってる。Markは親友なんだけど、少し変なんだ・・・。(Markは、着替えるとき最後まで下着をはかずにTシャツから着始めるツワモノと紹介したまさにその人。)とにかく物への執着が強くて、一度手にするとそれを捨てられない性格なんだ。多分、一種の神経症だと思う。だから、恋人もできない。家に行くと、もう人が住むとは思えないようなガラクタの山。Mannyはみんなからプリンセスって呼ばれていて、今年フロリダに水球の遠征に行ったとき、衝動で2000ドル分の洋服を買ってたよ」
これはJimmyが暴露した水球メンバーのほんの一部。まだ5回しか参加したことのない僕には、みんないい人にしか見えなくて、そういう影の顔というか、本当の部分を知らされて「え~、信じられない」の連発。
そして、僕はしっかりJimmyが言った発言を聞き逃しませんでした。そう、SM。
「JimmyはSMが好きなんだね」
「うん。レスリングのユニフォーム、水着、ジョックストラップ、下着なんかも好きだよ」
うお~。Jimmyってどこまで素直なんでしょう。でもこれはゲイだったら誰もが反応するアイテム。特に驚きではない。しかも、先週、水球の練習のあと、ロッカールームでJimmyが勃起したのを目撃したのは、僕が白いKCのブリーフをはいていた日だった。昨晩も同じ種類の下着を履いてたのだけど、Jimmyの反応が違うのが分かった。
夕日がほとんど沈みかけで、互いの顔がようやく分かる薄暗い寝室で、僕たちは赤裸々に自分たちのフェティシズムを話し合った。僕も、水着や下着系が好きということやユニフォーム、スーツなんかも気になるっていうのを言った。それを聞いて嬉しそうな顔になるJimmy。彼が持っているスーツを少し見せてくれた。(あ~、Jimmyってスーツが似合いそう。ムフッ)
そう、それで本題。「SMって何をするの?」ちょっと恐る恐るJimmyを問いただしてみた。
するとベッド脇のキャビネからJimmyが取り出したのは皮の首輪・・・。
「どこで買ったの?」
「ペットショップで。これ犬用なんだ」
Jimmyはネコしか飼ってないのは百も承知。それが犬用に買ったものじゃないことは明白。しかもベッド脇に収納されてるし・・・。
Wow。
「人にとって一番大きな性器は、ペニスじゃなくて脳みそって言うでしょ?僕は人を気持ちよくさせることが好きなんだ。これまで付き合った人の中には、僕がオシリをピシャリと打つと『なんで殴るんだよぅ』って嫌がる人もいたけどね。他の人は大体、好きだったよ。初めての人も、意外と好きになったし。傷やアザになることはしないから。それはちょっと極端なSM」
内心たじろぎながら平静を装う。
「少しずつ試してみようね」と僕は言ってJimmyの胸に顔をうずめた。