あの頃
私たちは
自転車さえあれば
どこにだって行けた
海にだって
川にだって
背中に買ってもらったばかりのギターを背負いながら
長い制服のスカートが
後ろの輪っかに引っかかってしまうんじゃないかなんて
気にしないでグングン漕いで行ってた
悪友と2人
なぜか悪友の大好きなター坊と
そのター坊の幼馴染との組み合わせが定番化した数年のころの話
そもそも
私は転校生だったから
最初、クラス違いのター坊は知らなかった
だけど悪友から聞かされていて
ター坊と廊下ですれ違ったけれど
1つ年上に見えるほど
大人っぽいター坊とは口をきいたことがなかった
悪友の幼稚園からの初恋の相手だなんて
聞かされていても
ふんふんとしか言えなかったし
私はそのター坊の幼馴染の
タカシ君のことが好きだったから
ター坊のことも
タカシ君繋がりの情報として
話を聞いていただけ。
少ししてから廊下を歩くター坊に
ふいに話しかけられて
『お前がね〜』って笑われた
なんなのよー、いきなり。
なんで私を知ってるのよ!
ブスっとした覚えがある
そのター坊の家に
大好きなタカシ君と悪友と私が
集まるようになるなんて
その時は思ってもみない展開だった
『かぐや姫とか、風とか聞くかー?』
そんな感じだった
ター坊とタカシ君は幼馴染だから
いつも入り浸っている離れの部屋に
私と悪友は優しいお母さんにご挨拶してから入っていった。
昔は、ター坊のおじいちゃんのお部屋だったようで
ター坊がエレキやら、ギターやら
アンプやらを持ち込んで部屋が狭くなったからって、
おじいちゃんが譲ってくれた離れの部屋だった。
庭があって
間ぶちは小さいけれど細長い作りの家、
その先に、チョコンと出っ張った部屋だった。
ター坊は、大きくなったら建築家になって、家を建て替えるんだって
アンプに繋がないままのエレキを
シャカシャカ鳴らしながら言ってた。
夢を語れるのは、ター坊だけだった
そして、実際に実現したのも
ター坊だけだった。
その時の他の3人は
何をしたらいいのかわからなかったけど、
その部屋にみんな集まれば
ひとときでも、歌を聞きながら
自分も夢を語れるような気になっていた。
BGMは、ター坊お気に入りの吉田拓郎のレコードばかり。
たしか、そのときのウンチクの長さときたら、ハイハイって感じで
どれだけ素晴らしいかと語られても
男らしい歌詞を理解できないほど
私はまだお子様だったのだろう
ター坊は、饒舌で
タカシ君は、寡黙だった
『風』と『かぐや姫』が
4人の共通言語のように
完コピに近いギターを弾いてもらって
喜んでいたことを覚えてる。
そして側には必ず
コーラとスプライトとポテトチップス
そうこうして、遊んでいても
時間は短くて
進学と言う道が立ちはだかってくる
あまり集まらなくなった次の年の
バレンタインデーの日
私は初めて買ったチョコを
タカシ君に渡すことを本人と約束して、
近くの公園で待ち合わせをしていた。
だけど
待っても、待っても
タカシ君は来なかった。
約束の時間は過ぎて
早い夕暮れになってしまった
寒いし、手が凍えるし
仕方なく
振られてしまったんだと家に帰ることにした。
話もできないまま数日がたった‥
じつは、バレンタインデーの日
タカシ君の家にター坊がずっといて
タカシ君は、家から離れることができなかったと告げられた。
タカシ君に遅めのバレンタインチョコを渡せたけれど
これといって返事はなかった
かく言う悪友も、ター坊にチョコをあげたらしい。
しかし、ハッキリ断れたと教えてもらったあと、私のことを聞かれたけれど
返事がないことで
これは、可もなく不可もなし
脈はないままだろうと。
それでもいいやとタカシ君に
当時クラスで回していたサイン帳を渡したら書いてくれた
タカシ君が書いた長い詩
そして 『So long』
最後に綴ってあった文字に
サヨナラを断定した
受験で学校に行かなくて良い日が続いたある日
ター坊とバッタリ、近所で会った。
ター坊が一言
『おまえら、付き合ってるんでしょ』
えっ、、と。
どうすることもできず
そのまま別々の高校に行き
誰か知らない女の子とタカシ君が
仲良くなったらしいと友達から聞かされた
確かめられず
好きでいることを諦めた。
知らぬまに
付き合って
知らぬまに
別れたような
数年後
タカシ君と大学受験場所で再会した。
話して歩いて
そして、バイバイして‥。
今から思えば
あの時
『あなたが好きです』って
言っていたら、
少しは今、変わっていたのかな
なんて‥
タカシ君の好きなひつじ雲が
今日は綺麗な空だったから
雲のひとかたまりに
なってしまうみたい
ため息と一緒に
思い出が
湧き出していた
私たちは
自転車さえあれば
どこにだって行けた
海にだって
川にだって
背中に買ってもらったばかりのギターを背負いながら
長い制服のスカートが
後ろの輪っかに引っかかってしまうんじゃないかなんて
気にしないでグングン漕いで行ってた
悪友と2人
なぜか悪友の大好きなター坊と
そのター坊の幼馴染との組み合わせが定番化した数年のころの話
そもそも
私は転校生だったから
最初、クラス違いのター坊は知らなかった
だけど悪友から聞かされていて
ター坊と廊下ですれ違ったけれど
1つ年上に見えるほど
大人っぽいター坊とは口をきいたことがなかった
悪友の幼稚園からの初恋の相手だなんて
聞かされていても
ふんふんとしか言えなかったし
私はそのター坊の幼馴染の
タカシ君のことが好きだったから
ター坊のことも
タカシ君繋がりの情報として
話を聞いていただけ。
少ししてから廊下を歩くター坊に
ふいに話しかけられて
『お前がね〜』って笑われた
なんなのよー、いきなり。
なんで私を知ってるのよ!
ブスっとした覚えがある
そのター坊の家に
大好きなタカシ君と悪友と私が
集まるようになるなんて
その時は思ってもみない展開だった
『かぐや姫とか、風とか聞くかー?』
そんな感じだった
ター坊とタカシ君は幼馴染だから
いつも入り浸っている離れの部屋に
私と悪友は優しいお母さんにご挨拶してから入っていった。
昔は、ター坊のおじいちゃんのお部屋だったようで
ター坊がエレキやら、ギターやら
アンプやらを持ち込んで部屋が狭くなったからって、
おじいちゃんが譲ってくれた離れの部屋だった。
庭があって
間ぶちは小さいけれど細長い作りの家、
その先に、チョコンと出っ張った部屋だった。
ター坊は、大きくなったら建築家になって、家を建て替えるんだって
アンプに繋がないままのエレキを
シャカシャカ鳴らしながら言ってた。
夢を語れるのは、ター坊だけだった
そして、実際に実現したのも
ター坊だけだった。
その時の他の3人は
何をしたらいいのかわからなかったけど、
その部屋にみんな集まれば
ひとときでも、歌を聞きながら
自分も夢を語れるような気になっていた。
BGMは、ター坊お気に入りの吉田拓郎のレコードばかり。
たしか、そのときのウンチクの長さときたら、ハイハイって感じで
どれだけ素晴らしいかと語られても
男らしい歌詞を理解できないほど
私はまだお子様だったのだろう
ター坊は、饒舌で
タカシ君は、寡黙だった
『風』と『かぐや姫』が
4人の共通言語のように
完コピに近いギターを弾いてもらって
喜んでいたことを覚えてる。
そして側には必ず
コーラとスプライトとポテトチップス
そうこうして、遊んでいても
時間は短くて
進学と言う道が立ちはだかってくる
あまり集まらなくなった次の年の
バレンタインデーの日
私は初めて買ったチョコを
タカシ君に渡すことを本人と約束して、
近くの公園で待ち合わせをしていた。
だけど
待っても、待っても
タカシ君は来なかった。
約束の時間は過ぎて
早い夕暮れになってしまった
寒いし、手が凍えるし
仕方なく
振られてしまったんだと家に帰ることにした。
話もできないまま数日がたった‥
じつは、バレンタインデーの日
タカシ君の家にター坊がずっといて
タカシ君は、家から離れることができなかったと告げられた。
タカシ君に遅めのバレンタインチョコを渡せたけれど
これといって返事はなかった
かく言う悪友も、ター坊にチョコをあげたらしい。
しかし、ハッキリ断れたと教えてもらったあと、私のことを聞かれたけれど
返事がないことで
これは、可もなく不可もなし
脈はないままだろうと。
それでもいいやとタカシ君に
当時クラスで回していたサイン帳を渡したら書いてくれた
タカシ君が書いた長い詩
そして 『So long』
最後に綴ってあった文字に
サヨナラを断定した
受験で学校に行かなくて良い日が続いたある日
ター坊とバッタリ、近所で会った。
ター坊が一言
『おまえら、付き合ってるんでしょ』
えっ、、と。
どうすることもできず
そのまま別々の高校に行き
誰か知らない女の子とタカシ君が
仲良くなったらしいと友達から聞かされた
確かめられず
好きでいることを諦めた。
知らぬまに
付き合って
知らぬまに
別れたような
数年後
タカシ君と大学受験場所で再会した。
話して歩いて
そして、バイバイして‥。
今から思えば
あの時
『あなたが好きです』って
言っていたら、
少しは今、変わっていたのかな
なんて‥
タカシ君の好きなひつじ雲が
今日は綺麗な空だったから
雲のひとかたまりに
なってしまうみたい
ため息と一緒に
思い出が
湧き出していた