ミシンには
上糸と下糸
今のミシンって
どうなってるの?
ひと昔は
下糸は、ボビンケースに入っていて
上糸と同じ強さで糸が
布を挟んで絡まって
結び合って
縫っていく
上糸は見えてるの
だって、すぐ目の前にあるんだもの
下糸は
ミシン針の下のプレートの中だから
見えないままで
いつもそこにあると思いながら
布を走らせていくのね
時折それが
縫ったはずの布が
最後まで来て『完成だー』って
ミシン針からはがすとき
一本の上糸だけが
残念そうに伸びていく
せーのーせって
上糸と下糸が
息を合わせて
織り成していくから
一つのものが出来上がるのに
下糸がついてこれない
見えてるとこの糸だけが
一生懸命で
中身の糸は
もう無くなってちゃったり
切れてしまっていたりするの
どちらかが強くても
どちらかが弱くても
どちらが足りなくても
どちらが頑なでも
布は
重なり合いはしない
人の営みに似てる?
タイミングよく
手を繋ぎたい
心を繋ぎたい
けれど
時折その
タイミングがちがってくる
違ってきてることに
気づいてあげられなくて
自分だけで走っているように
いつもいつも
自分の思うような
ペースでは走れないよね
互いの足を気にしたり
疲れてないか
顔や手を見たりしなきゃいけないんだもの
だから‥
少しゆっくり‥
少し休もうか‥
ボビンケースの中の
下糸に
また糸が
巻ける時が来るまでね