湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

『オカンの昼ごはん』を読んで

2019-11-04 09:45:00 | コラム
五年前に書いたものが上がってきた。
ほかのSNSではあるが、、。


その頃
まだ、両親は健在。
しかし、介護の途中の迷いや行き先のわからない不安に苛まれていたころなんだろうと思う。
一冊の本と出会ったことで
親から子供の橋渡しのような
誰にでもある葛藤を知ることで
次へと歩み続けていけた時期の話。




私が風邪をひいて
心も体もほとほと弱っていた時
思いっきり涙を流し浄化されて助けられた、この本。

山田ズーニー著書
『オカンの昼ごはん』と言う本だった。







著者はとある小説から
『人生は短い。一番大事なものはなんですか?』
そう問われたような気がして
一番大切なものの為に実家に帰省する。
そこで見たものは、ろくにお昼ごはんもつくれなくなった自分のオカンの姿だった。

オカンの記憶が鮮明なうちに
その集中力が持続するうちに、父母とやりたかったことを
私はやってこられたのだろうか?
自分自身に問いかける。
そして、親の老いと死の影を受け入れざる終えなくなってしまうとき
「青春のおわりの瞬間」だと言っている。


誰しも自分の親は
不死鳥かエスパーのごとく
そこに居るものだとみんなが思っている。
それが、親が昨日できてたことが今日はできないと言う現実を
見た時から始まる苛立ちや悲しみ、やるせなさ。
そして、腹立たしさ。

それは、オカンやオトンに向けられてはいるが
そのほとんどが、実のところ自分が受け入れ難い部分なわけを
悟るまで続いていく、
果てしない自分のエゴでもあることを葛藤しなが書いてある。


著者は
自身のブログでそれを問いかけた。

答えていく様々な人たち。
その原寸大の人々の中から
また、自分なりの問いを見つけていく。

自分自身のこと。
仕事のこと。
『医療』と『福祉』と『教育』のこと。


そして
生きた人生の教科書のような親の姿から
「それでもこれだけは」と湧き上がってくるもの、
それが『望み』であり
望みを自覚したとき、光が差す瞬間を『希望』だと。


幸せとは違う、夢というのでもなく、楽観でもなく、
希望としかいいようのないものと締めくくってある。



本を読み終えたとき、
私は優しさを忘れていたことに気づいた。
許すと言う行為。
親にも自分にも。


優しさがあるような顔をして
希望を見いだせることをわすれていた。
改めて、突きつけられて
自分の辛さに負けそうになっていたことに気がついた。


折しも
大切にし過ぎて
しまいこんであった娘から私への手紙をみつけたところだった。


5年前の私の誕生日に
娘とケンカした後だったと記憶しているが
ノートの切れ端になぐりつけるように書かれていた手紙だった。



『オカン、お誕生日おめでとう
なんだか不思議だね
きっと年をとっているのに多分、私の中で
オカンはずっと変わっていなくて
私も変わっていなくて。
いくつになっても、オカンとオトンはいなくならないと思っている。
私はオカンを尊敬していて、オカンみたいになりたくて
オカンはなんだかんだで幸せで
そんなオカンをみてる私も幸せで。
私がオトンとオカンの子供で良かったと思ってる。
今まで色々あって、きっと私は成長してるんだけど
まだまだ大人になっていない部分なんて沢山あって、
だから、今までありがとう。
オカンはずっとずっと元気で
私に心配かける事がないように。
ずっと私のオカンで居てもらわなきゃ困ります』


涙ながらに読んだあと、つぶやいた。


君と同じだよ。まだまだ青臭いのは私もだよ。
ただ、少し先を私は歩いているだけ。

君が私の背中を見て歩いているなら
私は立派に歩いてみせなきゃ。
娘が親を思う気持ちが同じなら
私も娘として、親として
こうして、本に助けられたように
いつか、君がこの道を通るとき、
わかりやすいようにしてあげることも私のつとめ。


君の青春が終わってから気づく
親への思いに苦しまなくていいようにしてあげなきゃいけないねー。



本のタイミングや
娘からもらった手紙を見つけたタイミングは、
何処かいるであろう目には見えない人からの
メッセージに込められた私へのエールのような気がしてならなかった。


ダーニングポイントとなった本。

『ほぼ日刊イトイ新聞』で、
大人の小論文教室というコラムを書かれている、
山田ズーニーさんの著書
『オカンの昼ごはん』




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4 コメント

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素晴らしい母娘 (ウッデイクン)
2019-11-04 10:39:07
娘さんからの素晴らしい手紙。感動です。
私には娘がいないのですが、息子との関係もかくありたいと願ってます。
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Unknown (chachananohana19)
2019-11-04 11:40:20
ウッディクンさん

ありがとうございます。
私は一男一女に恵まれましたが、
なかなか、女の子は手強いですよ。
衝突ばかりでした(過去形)
元来、男の子の方が優しく、女の子は手厳しいものです。
親の私とて、いい親なんて分からないことです。
ただ、こうして、素直に言葉が聞けたことは、本当に有難いことでした。
返信する
リレー (星光輝)
2019-11-05 21:34:01
娘さんからみて
お母さんを尊敬していて
お母さんも老いた母親(祖母)を尊敬している

娘さんが
オトンとオカンの子どもで良かった、という言葉
その言葉だけで
ほんとうに涙腺がゆるんでしまいます

成長して娘さんの姿が楽しみです
老いても親は 大人になったお子さんを心配します

『おかんの昼ごはん』
まだ手にしていません
入院したときにでも読もうと思っています

ステキな話「ありがとうございます」。

返信する
Unknown (chachananohana19)
2019-11-05 21:52:01
星光輝さん
コメント、ありがとうございます。
この手紙のことを忘れていまして、ちょうど良いタイミングで見つけたものでした。
やはり、涙なみだ、、、。
有難い手紙となりました。
その娘も、嫁に行きましたので
いずれ母になることでしょう。
また、バトンをしっかり渡せるように、見届けないといけないですね(笑)

お体の調子がお悪いようですね。
大変なことが続いてしまったので
お疲れもあったのでしょうか。
お大事に静養して、元気になってくださいませ。
『オカンの昼ごはん』は、介護と医療の狭間にも、ちょっと投げかけてる課題が書いてあります。
読みやすい本ですので、もし、宜しかったら、読んでみてください。
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