湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

世界で1番幸せな洗濯

2024-02-23 23:09:00 | コラム
産まれくる子供の触れる衣類を
先に洗濯しておくことを
『世界一幸せな洗濯』と言うらしい。

うちの娘が不妊治療から何年目?
待望の妊婦生活となり
彼女は『里帰り出産』を選んだ。

彼女の旦那さんは、
リモートで全日程娘と一緒に帰省すると言ってきた時には頭を抱えたが
結局は会社の会議の都合で
週末の3日間だけをこちらで過ごすことになった。
それは、バスターミナルまでの送迎が漏れなく付いてくることも意味する。
ましてや、細いくせしてグルメの大食漢ときてることで
それなりの品と量を求められることとなる。

幸せな洗濯をしながら
幸せどころではない感傷に陥りそうになりながら家事をこなしていく。

決して、その人そのものが嫌いでは無い。
家事も食事の支度も、嫌いではない。
嫌いではないが、少し厄介(笑)

これが決まった時
私の知る娘さんを持つ、なおかつ里帰り出産を経験した友達たちに
聞きに回ったー
『どうだったー?』
『いやぁー、赤ちゃん、娘のケアとその旦那さんの世話って大変だったよ』

妊婦の娘を家に迎える
週末の3日間、その旦那さんがやってくる。

娘は娘で、旦那さんのいない時は、私の娘の顔になる。
旦那さんが来た時は、私には向けたことのない笑顔になる。
彼女曰く、旦那様は、他人だから、気遣いが必要なんだとか。

私には気遣いは必要がないって訳か、、、。
確かに。
娘の言葉は、鋭くて
一度嫁に出た身にしては態度が大きく、何度となくケンカもした。

それが11月半ばから始まった生活。

この時期、一年で1番私が落ち込んでしまう日々と重なっていく。
いまだに、両親が最期を過ごした最も辛かった時を毎年思い出すようにナーバスになっていた私。

小さな命と否応なしに向き合い、不安と期待、不安と準備に気持ちが揺れ動きながら、大きなお腹で、この家にいる娘との時間は、
まるで、ナーバスな私の気持ちを吹き消すように計算されたもののように感じていた。

大学進学以来、久しく、2人で過ごす時間は、おそらく、もう無いだろう貴重な時間。
赤ちゃんが産まれれば、また、忙しさの中に埋もれていく時間。

私は、自分の娘時代、子を宿した時に、それを見てる私の親の視線と、
愛おしい我が子が親になっていく姿を目の前で見ている私の視線の
双方の狭間を行ったり来たりしてる不思議な感覚でいた。

12月30日、予定より数日早く
女の子が生まれた。

これまた、私が娘を抱いたように
娘も、我が娘を抱いている。

娘が赤子の世話をする姿は、紛れもない、あの時の私に似ている。

こうして、命のバトンが渡されて、私が説明してもできなかった、命の尊さや愛おしさをこれから娘も体験していくんだろうって思った。

確かに
娘の世話、赤子の世話に、お正月の長期休みをとっていた、赤子のパパの世話は、皆が言うように、朝から晩まで大変だった。

両親、2人の介護をした私には、
その大変さは、さほど大変でもなく、愛おしむ小さな子の泣き声に吹っ飛ばされていった。

そして感じた
小さな命は愛おしいけれど
私が愛しむのは、この我が子に対して。
娘が愛おしむ赤子だから、私も愛おしいんだと。

母子ともに無事で良かった。
安堵感と、元気な命に
みんなが救われていく
それぞれに確認させられていく
何が1番愛おしいのかと。

赤子の泣き声と、オムツとオナラに
毎日のように大笑い。
こんなにも、愛おしいものがあるのかと娘が言う。
そうよ、この世に、こんな愛おしいものが我が子と言うものよーって、私が答える。

そうして、2月の連休に
東京へみんな帰って行った。

世界で1番幸せな洗濯をさせてくれて、ありがとう
愛おしい時間をくれて、ありがとう

私の一年で1番ナーバスになる時期を一気に塗り替えてくれて、ありがとう。

きっと、仏様達からの
私への贈り物だったんじゃないかと。

もう、小さな服は干してない場所を見つめながら、自分が初めてママになった時も辿らせてもらった気持ち。

感謝だなぁーって。
一つ一つに、ありがとう。



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