私が初めて読んだ横山秀夫の作品
文庫
この作品に出逢う前から"横山秀夫"という名前は色々な書評欄などで目にしていた
なので、この文庫本が出た時には即購入
一気に読んで「これは面白い!」と周りの人に薦めまくった記憶がある
で、今回久しぶりに再読
2回目だけど、やっぱり面白かった
★
またまたネタバレしまくりです
未読の方はご注意ください
4本の短編が収められている
ヒトコトで言ってしまえば「警察モノ」なんだけど、巷で散々言われているように「"今までに無い"警察モノ」だ
つまり、犯人との銃撃戦とかカーチェイスなどまったく無くて、人事や組織内監査や男女差別・・・といったように、その舞台はあくまでも"内側"ばかりなのである
じゃ、普通の企業小説と同じか、というとそういうわけでもない
天下り、しかもその天下った先で過去の事件の捜査を続ける、とか、内部告発で事件に対する注目度を高くする、とか、似顔絵事件で警察のイメージアップをはかる、とか・・・警察ならでは、の内容が複雑に絡み合っている
まず強く感じたことは「警察も組織なんだなぁ」ということ
例えば、私の勤務先は製造業なのだけれど、私自身は製造や開発には全く関わっていなくて、内部の人のために動いている
そのことを考えると、警察にもそういう人がいて当然
でも、"警視"とか"巡査"という肩書きを持った人たちが、そういう"犯人逮捕"以外の仕事に携わっていることが凄く新鮮だった
特に、「鞄」に登場する柘植
秘書課に所属し、県議会対策が主な業務だそうだ
つまり、議会で提出される県警に対する質問の回答を準備するための情報を収集することに多くの時間を費やしている(時には質問文の作成まで手がける)
それも"警察官"の仕事なのか、ということにとにかく驚いた
全編を通じて、「出世」「階級」についての記述がとても多い
誰もが組織内でも自分の立場のことばかり考えているような感じさえ受ける
「"公僕"たる警察官が、こんなに出世のことばかり考えているものなの?」と最初は違和感を覚えたが、警察も組織だということを理解するにつれ、そういうモノなのかも知れない、とも思った
各編の語り手となる主人公がいる
でも、どの作品でもその舞台となる「警察」という組織の"存在感"がすごく大きい
そんな不気味な存在感を持ち、手錠や拳銃を見せることなく語られる「組織としての警察」に凄く興味を覚えた

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