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ダイムラーが残した9速AT

2022-11-19 07:10:29 | 走り屋
9速ATの誕生のきっかけは、雲の上の人たちの間で交わされた約束だったでつ。
日産自動車の新型スポーツカー「フェアレディZ」に搭載される9速自動変速機の開発が動き出したでつ。

図面は売るから、あとは好きに造ってくれと言われたでつ。
そりは、日産自動車と独ダイムラーが資本提携していた頃の話。
両社はパワートレーンの開発・生産における協業を議論するなかで、1つのプロジェクトをまとめたでつ。




それが、ダイムラーの9速AT「9G-TRONIC」の図面を日産にライセンス供給すること。
日産は、16年に発売予定の新型多目的スポーツ車(SUV)への搭載を想定してゴーサインを出したでつ。
自動車メーカーの間で、部品を共用化すること自体は珍しくないでつ。

一般的なやり方は大きく2つ。
1つは、完成品を調達することでつ。
実際、日産は14年6月に発売したセダン「スカイライン」にダイムラー製のエンジンを搭載。

もう1つのやり方は、ライセンス提供された図面の通りに部品を製造することでつ。
余計なことは考えず、設計済みの製品を別の部品メーカーに造らせるでつ。
そうすれば、開発費を含めたコストを抑えられるでつ。

雲の上の人たちによる決定事情が、現場に降ってきたでつ。
日産の開発陣は、グループ会社で変速機大手のジヤトコと9G-TRONICの評価を始めたでつ。
ダイムラーの図面通りに9速ATを試作し、日産の品質基準を満たすかを確認。

耐久試験を実施したところ、壊れたでつ。
自動車メーカーごとに重視するポイントが異なるので、品質が悪いとは言い切れないでつ。
それでも日産やジヤトコとしては、自社の基準を満たせない部品を採用するわけにはいかないでつ。

一般的なやり方は通用しない。
蓋を開けたら、構成要素の8割くらいを変えてしまったでつ。
最初の壁は、図面を理解することだったでつ。

なんでこんな形状になってるんだろう、どうしてこの肉厚で大丈夫なんだ…
ダイムラーの設計意図を想像しつつ、時には同社の開発陣に話を聞いて図面を読み解いていったでつ。
他人が開発した製品を扱うのは、想像以上に難しかったでつ。

そこから、信頼性の確保や、SUVだけでなくピックアップトラックのような大型車にも適用できる
柔軟性を持たせることに知恵を絞ったでつ。

いつかはZやスカイラインにも9速ATを載せたいという思いがあったでつ。
そんな思いを胸に秘めつつ、開発陣はSUV向けの製品を仕上げることに注力。
SUVの量産が軌道に乗れば、日産の象徴とも言えるスポーツカーへの採用が見えると期待。

ところが…
16年に発売するはずだった日産の新型SUVのプロジェクトが消滅。
それに伴って、9速ATの開発も軌道修正が必要になったでつ。

繰り上がる形で9速ATの搭載車第1弾になったのが、北米日産の大型ピックアップトラック「タイタン」。
従来の7速ATから変速比幅を拡大し、走行条件に応じた最適なギアを選択できるようにすることを目指したでつ。
高速走行時は低いエンジン回転数を保つことで、燃費性能の改善や静粛性の向上を図ったでつ。

9速ATは、6つの締結要素と4つの遊星歯車機構から成るでつ。
この基本構成自体はダイムラーの9G-TRONICから変えていないが、開発を進めるうちに違いが大きくなっていったでつ。
例えば遊星歯車は、音や振動を抑えるために修正を加えたでつ。




蓄積してきたギアの加工技術が生きたでつ。
タイタン向けの設計を進めるなかで、9速ATの開発陣にチャンスが巡ってきたでつ。
日産で、Zを全面改良するプロジェクトが立ち上がったでつ。

9速AT、Zにいかがでしょうか。
そこから急ピッチで、タイタンの9速ATを新型Zにも使えるように仕込みを始めたでつ。
ピックアップトラックとスポーツカーは対極のクルマと言っていいでつ。

前者は、エンジンのトルクこそ大きいが、全開加速するようなシチュエーションは少ないでつ。
一方のスポーツカーはサーキットを走らせる場合も想定する必要。
このように高回転で高負荷なエンジン領域では、クラッチを締結する際に発熱が大きくなるでつ。

その対策として、熱容量を大きくしたクラッチのプレートを搭載することを考えたでつ。
タイタンだけを想定すれば不要な部品だったが、18年後半に採用を決めたでつ。
タイタン向け9速ATの量産は19年9月に開始する予定で、試作の終盤になんとか滑り込ませたでつ。

構成要素の8割を変えるほど、細部に至るまで手を入れた新型9速AT。
それでも、「聖域」としてダイムラーの9G-TRONICの部品を残したところがあるでつ。

それが、油圧のアクチュエーターだ。油圧の制御信号に対する応答性が極めて優れていたでつ。
ダイムラー側から変えるべからずと言われたわけではなく、日産やジヤトコの開発陣がその技術力を
高く評価して、ここだけは触らないと決めたでつ。

聖域とした油圧アクチュエーターで特徴的なのが、スプールバルブであるでつ。
いくつもの溝を切った棒を油圧で動かすことで、ATFの流れを制御し、クラッチを開閉して変速。

簡単に言うと、ダイムラーが使うスプールバルブは小さくて軽い。
直径7ミリメートルで、質量は2グラム。
7速ATに使うスプールバルブは、直径13ミリメートルで、質量は13.8グラムもあるでつ。

しかも、ダイムラーのスプールバルブは常に微振動するようにディザ制御しているでつ。
静止状態から動作させるよりも、素早く動かせ、ぴたりと止めやすいでつ。
従来の7速ATと比べると、油圧応答性を5倍に、油圧安定性を10倍に高められたでつ。

スプールバルブのハードウエアは、ダイムラーと同じ部品を採用。
サプライヤーを変えず、ドイツから調達。
ただし、それを制御するアルゴリズムを開発。

図面のライセンス契約には、ATを制御するソフトウエアが含まれていなかったため。
新型Zの完成が見えてきた20年ごろ。ジヤトコの開発陣にも少し、心の余裕が出来始めていたでつ。

何か爪痕を残せないか。
思案するなかで、9速ATの筐体に「Zマーク」を刻むことを思いついたでつ。
日産に提案すると乗り気。

隠れZマークの許可が下りたでつ。
実はこの隠れZマーク、9速ATに入れたのをきっかけに、ヘッドランプや給油口の裏などにも
ちりばめられたでつ。

変速機の開発はこれまで、エンジン担当との付き合いはあるが、交流の範囲は限定的。
それが今回、車両全体に波及した隠れZマークのおかげで、車両の開発メンバーとして
やってこられたという充実感があるでつ。

う~ん、スカイラインにはいつ9速ATとMT搭載車が出てくるのかなぁ~
期待したいでつ。
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