バラ科ナナカマド属の「アズキナシ(小豆梨)」。ここ大学セミナーハウスのものは樹高20メートルほどで、目の高さで花や果実が見られない。しかし樹の下では落ち葉の上にいくつか果序のまま落ちていた。果実の大きさは直径6~7ミリで中に長さ5ミリほどの不定形な種子が1~4個入っている。
堀之内沖ノ谷戸公園付近の空き地に伸びている「ヨシススキ(葦薄)」。イネ科サトウキビ属の多年草で草丈は3~5メートルにもなる巨大雑草。インド~東南アジア原産で飼料として栽培されたものが逸出し各地で野生化している。
小山内裏公園“内裏池”に通り掛かると数名が何かを見つめている。池の向こう側には大砲のようなカメラを構えた人もいる。これは間違いないと思いそそくさと望遠レンズを付けて池に近づくと、案の定、枝に「カワセミ(翡翠)」が止まっていた。色々な角度からシャッターを切り5分ほどして身体が冷えてきたのでカメラを仕舞い立ち去ろうとすると、突然、カワセミが池に飛び込んだ。残念ながらその瞬間の撮影を逃してしまったが私の腕では飛翔の瞬間は上手く撮れなかっただろう。カワセミは獲物を仕留めたようで再度望遠レンズを付けて撮り直した。どうやら獲物は小さなエビのようで上手く呑み込もうとして何度もエビの向きを変えていた。
内裏池は2年前に“掻い掘り(かいぼり)”が実施され、天日干しで外来種が駆除されて水質がずいぶん綺麗になった。カワセミは獲物を見つけ易くなっているのだろう。
マメ科ハナズオウ属の「ハナズオウ(花蘇芳)」。早春に葉の展開前に小花を枝いっぱいに咲かせる。冬芽は十数個の小さな花芽が束生しており、1個の花芽は2枚の芽鱗に守られている。できれば花芽が展開する様子も観察しよう。これは堀之内寺沢里山公園のもの。
イネ科マダケ属の「ハチク(淡竹)」。その種子を確認するために小穂の基部を指で押さえるとほとんどは空っぽで感触が無いがひとつだけ基部に小さな塊があるのを感じた。その小穂を取り分け外側から包頴、護頴、内頴を取り除いていくと最後に写真中央のものが残った。膨らんだ部分の長さは2.5ミリほどでその上に2ミリほどの花柱と思えるものがある。この塊がおそらく子房で種子になる部分なのだろう。120年に一度の開花なので手持ちの図鑑にはその花や果実の写真が無く、上記は素人の見解であることをお断りしておく。
奥高尾“逆沢作業道”で見掛けた赤い実。葉はすべて枯れ落ちているが生育環境からこれはおそらく「マルバノホロシ(丸葉保呂之)」だろう。ナス科ナス属のつる性多年草で、夏にヒヨドリジョウゴにそっくりな花を咲かせ秋に果実が稔る。“保呂之”はヒヨドリジョウゴの古名で葉がヒヨドリジョウゴのように裂けないために“丸葉”の名が付けられている。
120年に一度開花するというイネ科マダケ属の「ハチク(淡竹)」。先日、その開花に遭遇し感激したところだが、花後の様子も観察しよう。写真は若い果実と思われるが苞頴や護頴に守られているため花と果実が見分けられない。これには雄蕊の葯が枯れ残っていたので果実が出来つつあるのだろう。ちなみにハチクは“破竹”ではなく“淡竹”で、タケノコの味が淡いことに由来しており“アワタケ”とも呼ぶ。
東中野公園で見られる「シイモチ(椎黐)」。モチノキ科モチノキ属の常緑高木で葉がシイの葉に似ていることから名付けられている。島根県、愛媛県以西の中国、四国、九州など西日本に自生しており、当地で見られるのは植栽もの。灰褐色の樹皮にすまし顔の皮目(ひもく)があった。
ニレ科ニレ属の「ハルニレ(春楡)」。樹高は30メートルにもなる高木で日本全国で見られるが特に北海道など寒冷地に多い。一方アキニレは南方系であり本州以南に多く生育する。ちなみにハルニレは“エルム(elm)”とも呼ばれるがエルムはニレ属(Ulmus)の総称でもある。ニレの幹は直立し太い枝を広げて樹形が美しくなるので、プラタナス、マロニエ(セイヨウトチノキ)、ボダイジュ(セイヨウシナノキ)とともに世界四大街路樹のひとつとされており、世界各地にニレの道、ニレ通りなどがある。J.F.ケネディ大統領が凶弾に倒れたのはダラスのエルム通りだった。文学の世界では堀辰雄の『菜穂子・楡の家』、北杜夫の『楡家の人びと』、中原中也の『木陰』などがあり、アメリカ映画には『エルム街の悪夢』がある。
写真は裏高尾小仏川沿いに生育する若木の冬芽と葉痕。美しい樹形になると言われるが、お世辞にも美人、イケメンとは思えない顔があった。
ニレと聞けば思い出すのはやはりあの歌だが、歌詞のニレはハルニレなのかアキニレなのか。舞台が北国の高校であればハルニレで南国の高校であればアキニレだろう。
『高校三年生』
作詞:丘灯至夫 作曲:遠藤実 歌:舟木一夫 昭和38年
(JASRAC許諾期間終了のため歌詞省略)