発見記録

フランスの歴史と文学

『日本アパッチ族』と山田捻(ひねる)

2005-11-25 22:27:45 | インポート
―鉄なんか、とてもわれわれの味覚を満足させることができないという食通氏には、ランボウの飢餓の祭典(フェット・ド・ラ・ファム)を読むことをおすすめする。この先覚的詩人は、鉄に対する食欲をはっきり次のようにうたっている。
"食いたいものは / あるにはあるが
 俺の食いたいのは、/ 土や石、
 ディン、ディン、ディン、
 さあ食おうじゃないか、
 空気を岩を / 石炭、鉄を!"

    小松左京『日本アパッチ族』(角川文庫)

 カッパノベルス版(1964)で読んだ時の記憶を確めたいことがあり手に入れたが、山田捻(ひねる)という人物が現れ驚く。
 山田稔が『スカトロジア(糞尿譚)』で一躍有名(?)になるのはもっと後のことだから、「捻」との類似にも気がつかなかったはずだ。

 憲法改正で失業が犯罪になった日本、追放刑を受けた主人公木田は、屑鉄泥棒が食鉄人種化した「アパッチ族」の一員になる。
「インテレ」で政治犯らしく、「高貴な魂」を持つ山田は、流刑地から脱出しようとして死ぬ。「彼は人間であることに、その誇りと執着を賭けていた」 木田は人間であるのをやめることで生き延びる。
 「山田捻」が山田稔のポルトレである必要はないが、それにしてもどんな楽屋落ちが隠されていたのか。