智徳の轍 wisdom and mercy

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困難な行為をたたえる

2005-03-06 | ☆【経典や聖者の言葉】

 あなたは疲労もいとわず
 寂静の楽しみを失っても平気だった
 悪人との出会い、対立、喧騒
 こんな様々な悪徳を
 まるで善徳のようにその身に引っかぶって
 あなたは世の人のためを考えていた
 心に執着はなかった
 もろもろの覚者の法則のなんと崇高なことだろう

 粗末な食事に不平も言わず
 食物がなければ飢えにも甘んじた
 険しい悪路もいとわず
 牛の踏み行く泥道の上に寝たこともある
 
 主よ、あなたは主人たるものなのに
 覚者の道を求める人を思えばこそ
 ののしりの言葉に耐えた
 着物を変え、言葉遣いを変えてまで、人につくしたこともある

 主よ、あなたは主人なのに
 自分に主人と思う心はなかった
 すべての人があなたを下男に雇い
 好きなように自分の仕事をさせたのだ

 どこで誰にののしられても
 どんな風にののしられても
 正しい行の道を
 あなたは踏み誤ることはなかった

 恩愛を受けて
 恩を返すのが世の人なら
 あなたは危害を加えた人にさえ
 恩愛を施すのだ

 不利を願う敵にも
 あなたは利益を願う友達だった
 欠点を探し求める人の
 長所を夢中に探すあなただった

 招かれて
 毒や火を見舞われたこともあるが
 それでも
 慈悲と甘露を携えて行った

 怒る人はあなたの忍耐に負け
 悪意はあなたの祝福に消えた
 真実を語るから中傷はやみ
 害意は聖哀れみに抑えられた

 無始の過去から
 衆生の多くの性質は堕落してきた
 それをたちまちに改めさせて
 あなたは、衆生が激苦地獄に落ち込むのを防いだのだ
 
 

悟りの因をたたえる

2005-03-06 | ☆【経典や聖者の言葉】


 あなたに不思議の行いは多かった
 徳の数にも能力にも限りはなかった
 自ら生まれた人
 あなたに礼拝いたします

 その任だろうか任ではないだろうか
 あなたは迷う心を捨てて
 自分から
 よるべなき世に近づかれた

 親切に動機はなく
 慈愛に理由もない
 あなたは友なき人の友
 身内なき人の身内だった 

 あなたは生身まで布施したこともある
 他の品々はいうまでもない
 求められれば生命も惜しまなかった
 世の人々の喜びはいかばかりだったろう

 殺し屋の手に落ちた生き物の
 身体をあなたの身体でもって
 生命をあなたの生命でもって
 あがなったことも幾百回になるだろう

 あなたは悪趣に落ちるのを恐れたわけでなく
 さりとて善趣に行きたいわけでもない
 ただ清い心をそのままに
 身についた戒として守っていた

 曲がったことはいつも斥けていたから
 正しいことにいつもしたがっていたから
 あなたはこの上なく清らかな行いの
 ただ一人の人だった

 くさぐさの苦しみは多くとも
 あなたの心は気高かった
 煩悩は威力の火で焼いてしまったが
 煩悩の人をあなたは哀れんだ

 あなたは人のために自らの生命を捨てて
 しかも喜びにあふれていた
 それは死からよみがえった人の
 喜びにも勝っていただろう

 身は散り散りに裂かれても痛みをこらえて
 人殺しをも哀れまれた
 主よ
 あなたの慈悲は
 正しい悟りの種子、心の宝なのだ
 ああ、英雄よ
 まことの慈悲を知る人よ
 他の者の遠く及ぶところではない

 なしがたい行為をなさずに
 得がたい境地は得られぬ
 だからこそ、自分のことはかまわずに
 あなたは努力を続けてきた

 あなたは後戻りすることもなく
 一歩一歩高い境地に近づき到着した
 だから
 これ以上高まることはないのだ
 
 心はいつも
 大慈悲にもよおされているから
 楽しく実り多い禅定にさえ
 あなたは目もくれなかった

 かけがえのない楽しみでも
 他人に分け与えられなくては、あなたには意味がない
 行の正しい人よ、そんな楽しみは
 あなたを苦しめても喜ばすことはなかった

 真偽の入り混じった言葉を聴いては真をとり
 悪い言葉は毒薬のように斥けた
 にごりない正しい言葉を
 あなたは残りなく飲み干した

 あなたはまことの価値を知っていた
 悟りを教える言葉があれば
 死の代価を払っても買い求め
 生々世々、ひたすらに悟りを求めてきた

 想像も及ばぬ長い間
 心も堅く、決意も堅く
 あなたは努力を払い続けて
 今や、無上の悟りを開かれたのだ




もろもろの煩悩に支配されて

2005-03-06 | ☆【経典や聖者の言葉】

 信仰心によって出家し、家から去って家のない状態となっても、私は、名声・利養を得ようと欲して、あちこち遍歴した。
 私は、最高の利益を捨てて、卑しい利益に走った。私は、もろもろの煩悩に支配されて、出家修行者の道の利益を楽しまなかった。

 そうした私が、精舎の中に座ったとき、心におののきを生じた。--「私は、愛欲のとらわれのために支配されて、よこしまな道を踏み行なっている」と。

 私の命は短く、老いと病はこの身を損なう。やがてこの身は壊れよう。怠けるべきときではない。

 五つの集積の生起と滅尽を、ありのままに観察していたとき、私は、心の離解脱を得て立ち上がり、仏陀の教えを成し遂げた。


                 (ミッタカーリー)


ブッダの言葉を実行せよ

2005-03-06 | ☆【経典や聖者の言葉】

 ブッダの言葉を実行せよ。

 瞬時たりともむなしくすごしてはならない。

 瞬時たりともむなしくすごした人々は、激苦地獄に落ちて、激しく苦しむからである。

 思うままに振舞うことは、塵垢である。思うままに振舞うことにおぼれるのは、塵垢である。思うままに振舞うことをせず、神秘力によって、自我のとらわれの矢を抜け。


                 (マールンクヤプッタ高弟)

そなたを調御しよう

2005-03-06 | ☆【経典や聖者の言葉】

 心よ、私は、象を門に繋ぎとめるように、そなたを繋ぎとめよう。身体から生じた欲望の網よ、私は、そなたを悪事に結びつけはしない。

 そなたは、繋ぎとめられて、行くことができない。あたかも、象が門を開くことができないように。罪深き心よ、そなたはこれから、しばしば暴力を発揮し、悪事を楽しんでいくことはないであろう。

 あたかも、新たに捉えられて、まだ調御されていない象が、鉤を手にした強者に打ち勝たれるように、そのように、私はそなたに打ち勝とう。

 あたかも、駿馬を巧みに調御する優れた御者が、生まれ良き馬を調御するように、そのように、私は、帰依・精進・記憶修習・サマーディ・智慧の五つの能力に安立して、そなたを調御しよう。

 心よ。私は正しい想いに住して、そなたを縛ろう。自己を清めて、そなたを調御しよう。そなたは、精進の重荷を背負わされて、ここから遠くへ行かないであろう。


             (ヴィジタ・セーナ高弟)