智徳の轍 wisdom and mercy

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法の鏡

2005-03-22 | ☆【経典や聖者の言葉】
五 さて、覚者はコーティ村に心ゆくまでとどまられた後、長老アーナンダにこうお告げになった。
「さあ、アーナンダよ、ナーディカを訪れよう。」
「かしこまりました、尊師よ。」
と、長老アーナンダは覚者にお応え申し上げた。そして、覚者は大きな向煩悩滅尽多学男出家教団と共に、ナーディカに入られた。そこで、覚者はナーディカのレンガの家にとどまられたのである。
六 そのとき、長老アーナンダは、覚者がいらっしゃる所を訪れた。訪れると、覚者を礼拝して傍らに座った。傍らに座って、長老アーナンダは覚者にこう申し上げた。
「尊師よ、サーロという名の向煩悩滅尽多学男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣【しゅ】に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、ナンダーという名の向煩悩滅尽多学女【こうぼんのうめつじんたがくにょ】は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、スダッタという名の帰依信男【きえしんなん】は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、スジャーターという名の帰依信女【きえしんにょ】は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、カクダという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、カーリンガという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、ニカタという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、カティッサバという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、トゥッタという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、サントゥッタという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、バッダという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。
 尊師よ、スバッダという名の帰依信男は、ナーディカで命を終えました。どのような趣に行き、どのような来世になったのでしょうか。」
七 「アーナンダよ、サーロ向煩悩滅尽多学男は、諸々の漏を破壊することによって、無漏【むろ】の心の離解脱や智慧の離解脱を、現世において、自ら証智【しょうち】し現証【げんしょう】し具足【ぐそく】してとどまったのである。
 アーナンダよ、ナンダー向煩悩滅尽多学女は、五下分結【ごかぶんけつ】を完全に破壊することによって、化生者【けしょうしゃ】となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、スダッタ帰依信男は、三結【さんけつ】を完全に破壊することによって、愛著【あいじゃく】・邪悪心【じゃあくしん】・迷妄【めいもう】が減少し、一来者【いちらいしゃ】となり、もう一度だけこの世に来て、苦の終極をなすであろう。
 アーナンダよ、スジャーター帰依信女は、三結を完全に破壊することによって、預流者【よるしゃ】であり、悪趣【あくしゅ】に落ちない法があり、決定者であり、正覚【しょうかく】に到達するのである。
 アーナンダよ、カクダ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、カーリンガ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、ニカタ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、カティッサバ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、トゥッタ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、サントゥッタ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、バッダ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、スバッダ帰依信男は、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、五十以上の帰依信男がナーディカで命を終えて、五下分結を完全に破壊することによって、化生者となり、かの所で完全煩悩破壊者となり、あの世から還らない者となったのである。
 アーナンダよ、九十を超える帰依信男がナーディカで命を終えて、三結を完全に破壊することによって、愛著・邪悪心・迷妄が減少し、一来者となり、もう一度だけこの世に来て、苦の終極をなすであろう。
 アーナンダよ、五百余りの帰依信男がナーディカで命を終えて、三結を完全に破壊することによって、預流者であり、悪趣に落ちない法があり、決定者であり、正覚に到達するのである。
八 しかし、アーナンダよ、人間が命を終えることは、不思議なことではない。つまり、各々が命を終えたとき、真理勝者【しんりしょうしゃ】の所を訪れて、この意義を尋ねること、アーナンダよ、これはまさに真理勝者の苦悩なのである。
 アーナンダよ、ここで、法の鏡という名の法の要点を説こう。そして、聖なる多学の弟子がこれを具足し、自ら願うならば、『地獄が破壊され、動物界が破壊され、餓鬼界が破壊され、悪趣・険難処【けんなんしょ】・堕処【だしょ】が破壊され、わたしは預流者であり、悪趣に落ちない法があり、決定者であり、正覚に到達する』と、自らを明らかにすることができるのだ。
九 アーナンダよ、それでは、聖なる多学の弟子がこれを具足し、自ら願うならば、『地獄が破壊され、動物界が破壊され、餓鬼界が破壊され、悪趣・険難処・堕処が破壊され、わたしは預流者であり、悪趣に落ちない法があり、決定者であり、正覚に到達する』と、自らを明らかにすることができる、法の鏡・法の要点とは何であろうか。
 アーナンダよ、ここで聖なる多学の弟子は、覚者に対して絶対の浄信を具足する。すなわち、
『かの覚者は、供養値魂【くようちこん】・最上正覚者【さいじょうしょうかくしゃ】・智徳成就者【ちとくじょうじゅしゃ】・最上善逝【さいじょうぜんぜい】・世間解・無上士【むじょうし】・丈夫調御者【じょうぶちょうぎょしゃ】・天人師【てんにんし】・覚者・世尊【せそん】である』と。
 法に対して絶対の浄信を具足する。すなわち、
『よく説かれた覚者による法は、現実に利益をもたらし、直接的であり、すべての人に理解できるように説かれており、煩悩破壊へ導き、それぞれの識別によって理解できる』と。
 出家教団に対して絶対の浄信を具足する。すなわち、
『覚者の多学の弟子出家教団は、善に付き従い、覚者の多学の弟子出家教団は、誠実に従い、覚者の多学の弟子出家教団は、正しい体系に従い、覚者の多学の弟子出家教団は、正法にのっとり日々を送るという、すなわち、覚者の多学の弟子出家教団は、四対の人々-八つの宗教的特性を持つ人々であって、崇拝に値し、厚遇されるに値し、布施を受けるに値し、合掌されるに値し、この世の無上の福田【ふくでん】である』と。
 聖者が愛する戒を具足する。すなわちそれは、
『聖なる戒であり、道徳的に肯定されるべきものであり、悪趣に落ちない戒であり、純粋な戒であり、煩悩から解放する戒であり、識者に称賛され、煩悩に負けないための戒であり、サマディに導く』と。
 アーナンダよ、これが、聖なる多学の弟子がこれを具足し、自ら願うならば、『地獄が破壊され、動物界が破壊され、餓鬼界が破壊され、悪趣・険難処・堕処が破壊され、わたしは預流者であり、悪趣に落ちない法があり、決定者であり、正覚に到達する』と、自らを明らかにすることができる、法の鏡・法の要点なのである。」
一〇 またここで、覚者はナーディカのレンガの家にとどまり、向煩悩滅尽多学男たちに対して、この数々の法話をなさったのだ。
「戒とはこうである。サマディとはこうである。智慧とはこうである。戒に熟達させられたサマディには、大いなる果報と大いなる功徳がある。サマディに熟達させられた智慧には、大いなる果報と大いなる功徳がある。智慧に熟達させられた心は、諸々の漏から完全に離解脱する。すなわちそれは、欲漏・生存漏・見解漏・非神秘力漏からである」と。