智徳の轍 wisdom and mercy

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世尊の歌

2005-01-23 | ☆【経典や聖者の言葉】
 あなたが行なうこと、食べるもの、供えるもの、与えるもの、苦行すること、それを私への捧げものとせよ。
 
 かくてあなたは、善悪の果報をもたらすカルマの束縛から解放されるであろう。放棄のヨーガに専心し、解脱して私に至るであろう。

 私は万物に対して平等である。私には憎むものも好きなものもない。しかし、信愛をこめて私を愛する人々は私のうちにあり、わたしもまた彼らのうちにある。

世尊の歌

2005-01-22 | ☆【経典や聖者の言葉】

 好悪から生じる相対観の迷妄により、万物は創造のときにすでに迷妄に陥る。

 しかし、善行の人々の罪悪が尽きるとき、彼らは相対観の迷妄を脱し、強固な信念をもって私を信愛する。

 老死から脱するため、私に帰依して努力する人々は、あのブラフマンを知る。アートマンに関してその一切を知り、カルマを残らず知る。

 また、被造物に関して、神に関してそれを知る。また、祭祀に関して私を知る。臨終のときにおいても、私をこのように知る人々は、私に専心し、真に私を知る。


北伝仏教の奥儀公開

2005-01-20 | ☆【経典や聖者の言葉】
チベット密教の秘儀
タントラ・ヴァジラヤーナ解説
『真理』No.14~No.25(全9回)より


●第一回(『真理』No.14より)

 これから皆さんに、北伝の奥儀、タントラ・ヴァジラヤーナについて解説を加えよう。
 タントラ・ヴァジラヤーナとは、タン=秘密、トラ=マントラ、ヴァジラ=絶対に壊れない、ヤーナ=乗り物の四つのワードの連語である。つまり、「秘密の詞章によってわたしたちを彼岸へと到達させてくれる絶対壊れない乗り物」という意味である。
 タントラ・ヴァジラヤーナの帰依の対象は、ヒナヤーナやマハーヤーナと違い、仏・法・僧だけではなく、グル・守護神、そして秘密の詞章の三つが一般に加えられる。
 そして、これらの三宝、グル・守護神・秘密の詞章は、本質的には一つの帰依の対象であるグルにすべてが集約されると一般的には考えられている。
 タントラ・ヴァジラヤーナの教えは、アーリア・ブッディズムの教えを土台に置き、その教えによって成就した数々の成就者たちの体験的教えがその上に乗っかり、その上に、アストラルやコーザルのグルたちの教えが乗っかるという形をとっているようである。
 今回からしばらくは、この教えの中で「智慧の海」と呼ばれる辞書的経典から、皆さんに利益となる部分を抜粋し、それに解説を加えてお届けしたいと思う。

「智慧の海から、サキャ神賢真理勝者が歩かれた解脱への足どり」

◆我々の師は、どのように覚醒の道を歩まれたか
 この章には、五つの部分があります。
(1)我々の師を他の仏陀と区別する。
(2)師の解放の物語の簡単な提示。
(3)師は最初どのようにして覚醒の心を培われたか。
(4)どのように菩薩としての活動をなさったか。
(5)能力のレベルの補助的説明。
の五つです。

◎我々の師を他の仏陀と区別する

 数限りない勝利者、この世界の導き手の中、
 この素晴らしい時代に現われる千の仏陀方の中央に、
 白い蓮華にたとえられて称賛される
 比類なき釈迦族の王がいらっしゃる。

 この宇宙の広がりに限りがないように、その心がいまだ平安を見いだしていない魂の数も限りなく、また仏陀方の慈悲、嘆願の祈り、解脱した者としての活動にも限りがありません。よって、今まで表現することのできないくらいの数の如来方、例えば、“慈愛の月”“宝石の心”と呼ばれ、“道を示す案内者”“勝利者”“慈愛を持つ最高の者”という名で尊敬された方々が、十の方角の計り知れない数の世界に現われてきました。現在、“真に喜びにあふれた”と呼ばれ、世界では“揺るぎのない”と呼ばれる仏陀が、至福の世界では、“無限の光”と呼ばれる仏陀が、蓮華の栄光の世界では“卓越した栄光”と呼ばれる仏陀が、このような数えられないほどの仏陀が生きて、法を教えていらっしゃいます。そして、未来においても、例えば粒子のない完全な収集の世界における“全智の守護者”のような素晴らしい如来、“創造を超えた案内者”“慈愛のライオン”が、引き続いて数限りなく現われるはずです。
 仏陀の現われる時代は、明かりのともった時代と呼ばれます。反対に仏陀が一人も現われない時代は、真っ暗の時代と呼ばれます。そして、暗闇の時代は数多く、明かりのともった時代は稀なのです。この素晴らしい時代が過ぎ去った後には、六十五の暗闇の大時代があり、その後、“大きな名声”と呼ばれる明かりのともった時代が訪れ、一万の仏陀が現われます。その後、八万年の暗闇の時代の後に、“星のような”と呼ばれる明るい時代が訪れ、八万人の仏陀が現われます。その後、三百年の暗闇の時代があり、“質の顕示”と呼ばれる明るい時代には、八万四千の仏陀が現われます。これは“素晴らしい時代の説法”の中で説かれていることで、一つの例となると思います。
 この点に関して、経典には無数の記述が発見できます。特に、千の蓮華が見られるこの素晴らしい時代に関しては、不特定の数の“合間の仏陀”が現われるとする者もいます。しかし、最も一般的な見解は、大乗も小乗も、千という特定の数の仏陀が現われるというものです。これらの仏陀方は、過去において菩薩としての働きをしながら、覚醒の心を培い、ともに嘆願の祈りを捧げたグループに属する仏陀方です。
 小乗の教えに従う者は、仏陀は人間の寿命が八万歳から百歳に減少しているときに現われるとします。それ以前には、人間に悲しみがほとんどないため、ダルマを求めないので現われません。また、寿命が百歳以下になったときには、世界の堕落がもうあまりにも進みすぎているので、現われないのです。寿命が再び増えるときには、仏陀は現われる必要がありません。なぜなら、魂は自然と不善行をなさず、善法の力が増大するからです。現在のこの時代において、寿命が四万年だったとき、千人の仏陀のうちの最初の方“輪廻の破壊者(カクサンダ)”が現われました。寿命が三万年だったときには、“黄金の賢者(コーナーガマナ)”が現われました。二万年だったときには、“光の守護者(カッサパ)”が現われました。そして、百年になったときに“釈迦族の賢者(サキャ神賢)”が現われたのです。寿命が再び八万年になるときには、“愛にあふれた優しさ(メッティヤ〈マイトレーヤ〉)”が現われるはずです。
 素晴らしい時代の説法には、それぞれの仏陀に関する十三の特徴が詳しく述べられています。それらは、国、階級、輝き、父、母、子供、従者、智慧において優れた弟子、神通力において優れた弟子、取り巻き、寿命、その教えが続く期間、残存物です。また、千の仏陀のうちの最後として、如来“献身”あるいは“明かりを灯す者”と呼ばれる案内者が現われるとも書かれています。この如来は、この時代のすべての仏陀の形、寿命、解脱した者としての働きを統合する者として現われるとされています。
 これらの仏陀方の中に、他のだれにもまねすることのできない勇気を持ち、他の仏陀方に見放された紛争の時代に、その心がいまだ平安になっていない者たちを気づかう方がいらっしゃいます。この方は、他の勝利者や精神的相続者たちによって称賛され、“なんと素晴らしい! この菩薩は白い蓮華のようである”と呼ばれます。この方こそ我々の師、比類なき釈迦族の王なのです。

◎解放の物語の簡単な提示

 まず最初に、師は覚醒という大志を抱かれた。
 そして、間で菩薩としての活動をなさった。
 最後に、完全な仏陀となられて、生き物たちに恩恵を与えられた。

 究極的に言えば、この慈悲にあふれた師は、無始の過去から完全に解脱していました。そして、様々な仏陀や菩薩として現われることによって、三つの時を通して生き物たちのために働いてきたのです。心がいまだ調御されていない紛争の時代に生きる魂のために、師はまず覚醒という最高の大志を抱きました。次に、三つの数え切れないほど長い時代と、その他の期間を通じて、菩薩としての活動をしました。そして、最後にマガダ国のヴァジラの座において、完全な解脱を達成してみせたのです。そして、それから休むことなく、他の霊性に影響を与える四つの大きな奇跡を行なって、生き物たちに恩恵を与え続けました。
 これが師の解放の物語の概要です。

※チベット語から英語に訳された原本に若干誤りのある可能性もあるので、その点はご了承ください。


●第二回(『真理』No.15より)

 前号は、このカルパの真理勝者であるカクサンダ、コーナーガマナ、カッサパといった南伝と共有の真理勝者の名前が出てきたよね。これは、とりもなおさず仏典の本質的な部分は同じであることを表わしている。
 そして、もう一つ大切なことは、この『智慧の海』では、「究極的にはサキャ神賢は解脱をしていた」ということになっている。ここの部分が理解しづらいだろうから、少し解説を加えよう。
 わたしたちの本質は、“仏性”または“真我”と呼ばれる本質的に実体のないものである。この実体がないとは、本質的には身体でも、感覚でも、イメージでも、経験の構成でも、識別でもないということだ。また、わたしたちの本質である仏性または真我は、この粗雑な愛欲の世界にも、形状の世界にも、非形状の世界にも存在していないということである。
 しかし、光の消滅してしまったわたしたちの仏性または真我は、幻影である、わたしたちを構成している五つのとらわれの要素をもって自己の本質と錯覚し、それと、粗雑な愛欲の世界、形状の世界、非形状の世界との関係によって、幻影である新しい経験を積み続け、それによって流転をしているわけである。
 したがって、大いなる発願をなし、覚醒へと至り、光を幻影のとらわれである五つのとらわれの要素に当てることによって、その本質でない五つのとらわれの要素から解放し、仏性の独存位、あるいは真我の独存位へと至るのである。
 したがって、究極的には解脱している魂も覚醒に至る必要があるのである。

バッダー・クンダラケーサー

2005-01-19 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 バドゥムッタラという名の勝者、一切の法における究竟者であるグルは、今から十万カルパの昔に出現なさいました。
二 そのとき、私はハンサヴァティーの長者の家に生まれ、その家は、様々な財宝が輝き、大いなる安楽がありました。
三 その大いなる勇者のもとを訪れて、説法を聴き、それから清らかな信を起こして、私は勝者に帰依いたしました。
四 そのとき、大悲ある方、グル、パドゥムッタラは、清浄な比丘尼を速通智者【そくつうちしゃ】の中の第一の位に置かれました。
五 それを聞いて喜び、大聖に布施を施して、おみ足に頂礼し、その状態を望んだのです。
六 大英雄は喜ばれ、このようにおっしゃいました。
「賢く善なる者よ、お前の願いはすべて成就するだろう。寂滅によって幸福があるのだ。
七 今から十万カルパの後に、オッカーカ族の生まれで、ゴータマという名の師が、この世に出現するだろう。
八 お前は彼の法の中において、法によってつくられた後継ぎの子であって、バッダー・クンダラケーサーという名の師の弟子の尼となるだろう。」
九 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一〇 そこから没して、夜摩天に行き、そこから没して、兜率天に行き、それから化楽天に行き、他化自在天に行きました。
一一 どこに生まれても、そのカルマによって、いつもそこの王の皇后となったのです。
一二 そこから没して、人間界では、転輪王や小国の王の皇后となりました。
一三 天界や人間界で福徳を享受し、一切の所で幸せ者となって、多くのカルパを輪廻したのです。
一四 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた方が出現なさいました。
一五 そのとき、大聖の従者は、最高の城バーラーナシーの人間の主、カーシ王キキーという名の者でした。
一六 私は彼の四女であって、ビッカダーイカーとして知られていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
一七 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家で二万年の間勤精進して、
一八 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
一九 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
二〇 それは今生では、ケーマー、ウッパラヴァンナーと、パターチャーラー、そしてこの私、キサーゴータミー、ダンマディンナー、第七はヴィサーカーのことです。
二一 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
二二 そして今、最後の有では、最高の城ラージャガハの裕福な長者の家に生まれました。私が年頃だったとき、
二三 盗賊が死刑のために引かれていくのを見て、私は心を染めました。そのため、父は千金によって彼を死刑から解き放ち、
二四 私の心を知って、私を彼に与えたのです。私は彼を安らがせたので、こよなく愛され、重宝がられました。
二五 けれども、彼は装飾品への貪りのため、華鬘【けまん】を持ち帰った私の敵となり、盗賊の住む崖まで連れていき、私を殺そうと謀りました。
二六 そのとき、私はサットゥカに向かってひれ伏して、よく合掌し、自分の命を守りながらこのように言ったのです。
二七 「この金の腕輪、たくさんの真珠・琉璃【るり】……、全部持っていってください。あなた、私を寝床の奴隷と呼んで。」
二八 「運のいいやつだ。さあ、飾り物を外すんだ。めそめそするんじゃない。持ってきた財産をよこさないと承知しないからな。」
二九 「私が覚えている限り、そして、私に物心がついて以来、あなたよりほかに愛する人を知らないというのに。」
三〇 「さあ、来い。お前を抱いてやろう。」
 そして私は、彼を右繞してこう思ったのです。「今や、再び、私はあなたに抱かれることはないでしょう」と。
三一 あらゆる場合に男が賢明であるわけではありません。たとえ女でも、賢明なために、鋭く見抜くことが度々あるのです。
三二 あらゆる場合に男が賢明であるわけではありません。たとえ女でも、賢明なために、利を考えることがあるのです。
三三 実に敏感に、急速に、素早く考察し、そのとき私は野獣のようなサットゥカに弓を十分に引き絞って殺しました。
三四 起こったことを素早く悟らない者は、あの愚鈍な慧の盗賊のように山の洞穴で殺されるのです。
三五 また、起こったことを素早く悟る者は、障害となる敵から脱するのです。あたかも、そのとき私がサットゥカから逃れたように。
三六 そのとき私は、サットゥカを山の険路に落として、白衣行者のもとに至り、出家しました。
三七 そして、毛抜きで私の髪の毛をすべて抜き、出家をさせ、常に自ら宗義を説きました。
三八 そのため、それを学び、独り座してその宗義を考察しました。すると、犬が人の手の、
三九 切断されたのをくわえてきて、私の近くに落として去っていきました。その蛆虫【うじむし】が群がっている手を見て、私は相を得たのです。
四〇 そして恐怖して立ち上がり、同法者に尋ねると、彼はこう言いました。
「釈迦の比丘が、その意味を知っている。」
と。
四一 その私は、その意味を尋ねようと、仏陀の比丘達のもとを訪ねました。すると、彼らは最高の勝者、仏陀のみもとに私を連れていきました。
四二 そのお方は私に法を説いてくださいました。蘊・処【しょ】・界は、不浄・無常・苦であると。また、それらは無我であるとグルはお示しくださったのです。
四三 その法を聴いて、私の法眼は清浄になり、ゆえに私は正法を知り、出家・具足戒【ぐそくかい】を、
四四 懇願いたしました。グルは、
「来なさい、バッダーよ。」
とおっしゃって、私はそのとき具足戒を受け、少しばかりの水を見たのです。
四五 私は足を洗うことによって生と滅とを共に知り、そのとき「諸行はそのように無常である」と思いました。
四六 そして、私の心は全く取著【しゅじゃく】がなく解脱しました。そのとき勝者は、速通智において私が第一の位であるとお告げになったのです。
四七 私は神足と天耳界において自在となり、他心を知り、師の教えを順守する者となりました。
四八 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏を捨てて、清浄でけがれなき者となったのです。
四九 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨てて、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
五〇 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
五一 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、最勝なる仏陀によって無垢・清浄となりました。
五二 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
五三 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
五四 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。
――このように、バッダー・クンダラケーサー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

パターチャーラー

2005-01-18 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 バドゥムッタラという名の勝者、一切の法における究竟者であるグルは、今から十万カルパの昔に出現なさいました。
二 そのとき、私はハンサヴァティーの長者の家に生まれ、その家は、様々な財宝が輝き、大いなる安楽がありました。
三 その大いなる勇者のもとを訪れて、説法を聴き、それから清らかな信を起こして、私は勝者に帰依いたしました。
四 そしてグルは、持律者の中の第一であり、そのように慚愧【ざんき】があり、なしたことなさなかったことにおいて、恐れることがない比丘尼を称賛なさったのです。
五 そのとき、私の心は喜び、その地位を願い求め、十力がある世界のグルを、サンガと共に招いて、
六 七日間飲食を差し上げ、また三衣を施して、おみ足に頂礼して、こう申し上げました。
七 「勇者よ、もしできるならば、私は今から八日前にあなたが称賛なさった、そのような者になりたいと思います、グルよ。」
八 そのとき、師は私におっしゃいました。
「賢く善なる者よ、恐れてはならない。未来世で、その望みは得られるだろう。
九 今から十万カルパの後に、オッカーカ族の生まれで、ゴータマという名の師が、この世に出現するだろう。
一〇 お前は彼の法の中において、法によってつくられた後継ぎの子であって、パターチャーラーという名の師の弟子の尼となるだろう。」
一一 そこで私はうれしくなって、親切な心で、生涯の勝者である世界のグルとサンガに奉仕いたしました。
一二 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一三 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた方が出現なさいました。
一四 そのとき、大聖の従者は、最高の城バーラーナシーの人間の主、カーシ王キキーという名の者でした。
一五 私は彼の三女であって、ビックニーとして知られていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
一六 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家で二万年の間勤精進して、
一七 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
一八 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
一九 それは今生では、私、ウッパラヴァンナーと、ケーマー、バッダー、キサーゴータミー、ダンマディンナーと、第七はヴィサーカーのことです。
二〇 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私達は三十三天に行きました。
二一 そして今、最後の有では、私は富み栄え、多くの財産に恵まれた、優れた都、サーヴァッティーの長者の家に生まれました。
二二 年頃になったとき、私は思索にふけり、田舎の人と出会って、私は一緒に去ったのです。
二三 私は子供を一人生み、二人目は私のお腹にありました。そのとき、私は両親に会おうと決心したのです。
二四 私の夫はそれを望んでいなかったので、夫が外出したとき、最高の城サーヴァッティーに行こうとして、一人で家を出たのです。
二五 私の夫は途中で私に追い付いたのですが、そのとき、カルマから生じた激しい風が吹きました。
二六 また、私の出産のときには、大雨に襲われました。そこで、夫は木を探しに行って、毒蛇のために死んだのです。
二七 そして、孤独で哀れな産婦は鳥のすみかに行こうとして、満水の川を見て、
二八 子供を連れて一人で向こう岸に渡り、子供を置いて赤ん坊を渡らせようとして、
二九 戻ると、鷹【たか】は泣き叫ぶ赤ん坊をさらい、流れはもう一人の子供を運び去ったのです。そこで、私は憂いに襲われました。
三〇 サーヴァッティーに着くと、親戚【しんせき】の者が死に絶えたのを聞きました。そこで、憂いに苦しみ、大いなる憂いに襲われて言いました。
三一 「二人の子供は死んだ。私の夫は路上で死んだ。両親と兄弟は焼き場で焼かれた。」
三二 そして、私は一人で、青ざめてやせこけ、卑しい心で、あちこちをさまよううちに、調御丈夫にお会いしたのです。
三三 そこで、師は私におっしゃいました。
「憂えてはならない。あなた自らを求めよ。何を悲しんでいるのだ。
三四 子供達は己を守ることはなく、両親も親戚も己を守ることはなく、死神にとらわれた者を親戚は守ることはないのだ。」
三五 その牟尼のお言葉をお聞きして、預流果【よるか】に達し、出家して程なくして、阿羅漢の位を体得いたしました。
三六 私は神足と天耳界において自在となり、他心を知り、師の教えを順守する者となりました。
三七 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏を捨てて、清浄でけがれなき者となったのです。
三八 それから私は、一切見者のみもとで、一切の律と一切の広説を学び得て、如実に説法をしたのです。
三九 勝者はその徳に満足なさり、私を第一の位に置いてくださいました。持律者の中の第一は、パターチャーラーであると。
四〇 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨て、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
四一 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
四二 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、もはやこの世に転生することはないのです。
四三 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
四四 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。
――このように、パターチャーラー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

ウッパラヴァンナー

2005-01-16 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 ウッパラヴァンナー比丘尼は、神通において究竟に達し、師のおみ足を頂礼して、こう申し上げた。
二 「既に生の輪廻を渡り、私は不動の道を手にしました。大いなる牟尼よ、お伝え申し上げます。
三 最高の勝者に極限の信を持つ人々。もし彼らに対し、私に罪があるならば、勝者の面前でお許しください。
四 輪廻に輪廻するうちに、もし私に過ちがあるならば、大いなる勇者よ、お伝え申し上げます。どうか、その罪をお許しください。」
五 「私の教えを順守する者よ、神通を現わせ。それによって、四衆は今日、疑惑を断ちなさい。」
六 「大いなる勇者、智慧者、光ある方よ、私はあなたの娘です。そして、多くのなし難く、極めてなし難いカルマを、私はなしたのです。
七 私の容色は青蓮華と同じように美しいので、青蓮華【ウッパラー】と名付けられました。大いなる勇者、眼ある方よ、あなたの弟子の尼は、おみ足に頂礼し奉ります。
八 ラーフラと私とは、数限りない趣において、一緒に生まれて、欲心もお互いに一致していました。
九 父母も同じ、趣もまた同じでした。最後の有に達すると、両者とも生まれを異にしました。
一〇 そして、その子はラーフラと名付けられ、娘はウッパラーといいます。見よ、勇者よ、私の神通力を師にお示ししましょう。」
一一 四つの大海を手に置いた。あたかも、小児の医師が、入手した油を手に置くように。
一二 大地を裂いて手の中に置いた。あたかも、子供や青年が、美しいムンジャ草を裂くように。
一三 鉄囲山に等しい手を頭上に広げて、しばしば様々な色の雨を降らせた。
一四 地を漆喰【しっくい】にして、穀物を砂礫【されき】にして、須弥山を槌【つち】にして壊した。あたかも、子供のように。
一五 「私はウッパラーという名の、最高の勝者である仏陀の娘です。神通において自在者となり、あなたの教えの遵奉者です。
一六 様々な変形をなして、世界のグルに見せて、姓名を明かし、眼ある方よ、おみ足に頂礼し奉ります。
一七 神足および天耳界において自在であり、他心智の自在者です、大牟尼よ。
一八 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはないでしょう。
一九 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、大聖によって、広大・清浄となりました。
二〇 昔の最高の勝者達の会合で、あなたに示した、私の奉仕は大きなものです、偉大なる牟尼よ。
二一 私の過去世の善業を思い出しください、牟尼よ。あなたのために私は功徳を積んだのです、大いなる勇者よ。
二二 あり得ない所を除いて、障害ないことを熟させながら、大いなる勇者よ、あなたのために、私の命は捧げられたのです。
二三 百億の財と私の命を施し、そして私はあなたに対して完全に献上いたします、偉大なる牟尼よ。
二四 今から十万カルパもの昔、私は龍女でした。ヴィマラーという名で、女達の中では尊敬されていました。
二五 大蛇・大龍は、勝者の教えを信じ、大いなる威光のある方、バドゥムッタラをそのお弟子さん達と共に招きました。
二六 宝石造りの仮堂、宝石造りの寝椅子、宝石の砂がちりばめられた、宝石造りの受用品や、
二七 宝の旗で飾られた道を準備し、彼は楽器を奏でながら、等覚者を迎えれば、
二八 世界のグルは、四衆を伴って、大蛇の宮殿の優れた座に座られました。
二九 高価な食べ物・飲み物、硬い食べ物・軟らかい食べ物、それぞれ最も勝ったものを、大いなる名声がある龍王は献上したのです。
三〇 その等覚者が食事し、完全に鉢を洗い終わると、大神通がある龍女は歓喜しました。
三一 花咲ける、一切を知る方、大いなる名声がある方を見て、師に対して、心は信を深め、また意はよく定まったのです。
三二 私の心を知って、最上の蓮華と名付けた大いなる勇者は、その刹那【せつな】に、神通で比丘尼を現わされました。
三三 その比丘尼は、恐れるところなく、数々の神通を現わしました。喜び感激が生じ、師にこう申し上げました。
三四 『この控え目になされた神通を見て、私には、よくわかりました。勇者よ、どうして、彼女は神通において、全く恐れるところがないのでしょうか。』
三五 『口から生じた私の実の娘だから、大神通があるのだ。そして、私の教えを順守し、また神通においては恐れるところがないのである。』
三六 仏陀の言葉を聞いて喜び、『私もまた、彼女のように、神通において恐れるところがないようになりたい』と、私は願い求めました。
三七 『私は喜び歓喜し、最上の意を得て、未来世にこのようになれますように、グルよ。』
三八 飲食で満足させて、マニ珠【しゅ】造りの寝椅子や、光り輝く仮堂や、
三九 龍達の最上の花である、アルナという名の青蓮華を、『私の容色がこのようになりますように』と、世界のグルに供養いたしました。
四〇 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
四一 そこから没して、私は人間界に生まれて、青蓮華で覆われた食事を、私は施したのです。
四二 また、今から九十一カルパの昔には、ヴィパッシーという名のグル、妙なる眼の方、一切の法における眼ある方が出現なさいました。
四三 そのとき、私は最高の城バーラーナシーの長者の娘となって、等覚者、世界のグルをサンガと共に招いて、
四四 青蓮華によって、教え導く方に大いなる布施をなして、それによってまた供養して、白い容色を願い求めたのです。
四五 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた者が出現なさいました。
四六 そのとき、大聖の従者は人間の主であり、最高の城バーラーナシーのカーシ王キキーという名の者でした。
四七 私は彼の第二女であって、サマナグッターと呼ばれていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
四八 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家の中で二万年の間勤精進して、
四九 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
五〇 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
五一 それは今生では、私と、智慧あるケーマーと、パターチャーラーと、クンダラー、キサーゴータミー、ダンマディンナーと、第七はヴィサーカーのことです。
五二 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
五三 そこから没して、私は人間界の大家に生まれて、私は黄色の清浄で優れた正装衣を阿羅漢に施しました。
五四 そこから没して、私はアリッタプラのバラモンの家に生まれ、ティリータヴァッチャの娘である美しいウンマーダンティーとなりました。
五五 そこから没して、私は地方のあまり裕福ではない家に属して、そのとき私は稲を取っておりました。
五六 辟支仏を見て、私は五百のうるち米を炊き、蓮華で覆った五百の鉢を施して、
五七 また、それらの鉢に入れた蜜を独存者に施して、願い求めました。そこから没して、私は林の中の蓮の腹に生まれました。
五八 カーシ国王の皇后となって、尊ばれ供養され、五百余りの王子を生みました。
五九 彼らが青年に達し、水遊びをしていたとき、蓮華が落ちたのを見て、辟支グルとなったのです。
六〇 その私は、彼ら多聞である勇者をなくして憂え、そこから没して、私は仙人窟【せんにんくつ】の村民の家に生まれました。
六一 仏陀より教えを受けていない、智慧者である八人の辟支グルが、まだ自ら聞いた者の粥【かゆ】を受けることなくして行くそのときに、
六二 托鉢のために、村に行くところを見て、私の子供達を思い出し、そのとき、私の子供に対するように、愛情を持ち、牛乳を持って出ていったのです。
六三 それから彼らに信を起こし、自ら粥を施しました。それから私は没して、三十三天の歓喜園に生まれました。
六四 楽苦を享受して、諸々の有に輪廻して、大勇者よ、あなたのために、命は完全に捧げられたのです。
六五 このように、苦にも多くの種類があり、幸福にも多くの種類があり、最後の有に達すると、サーヴァッティーに生まれました。
六六 大きな財があり、安楽であって、同様に何の不足もなく、様々な宝が輝き、一切の欲を遂げる長者の家において、
六七 尊ばれ、供養され、また敬われ、同様に崇められ、容色の美しさを得て、諸々の家において、極めて尊ばれました。
六八 容色を受用することにおいて、恵まれた人々により、大変うらやましく思われ、また数百の長者の子供によって、うらやましく思われました。
六九 在家から出家者となり、まだ八カ月に至らないうちに、四諦を体得いたしました。
七〇 神通によって、四頭立ての馬車を化作し、世界の主であり、栄光ある仏陀のおみ足を頂礼いたします。」
七一 「比丘尼よ、頂きに美しく花開いた沙羅双樹【さらそうじゅ】の下に、あなたは一人立つ。あなたの他にはだれもいない。若き女【ひと】よ、あなたは誘惑者を恐れないのか。」
七二 「百千の誘惑者が、一気に押し寄せようとも、私は一毛も動かすこともなく、動揺することもない。悪魔よ、お前一人でどうしようというのだ。
七三 私は姿を消すだろう。お前の腹の中に入るだろう。お前の眉間に立つだろう。しかし、お前は立っている私を見ることはできない。
七四 心は自在となり、神足を修め、すべての結縛から解脱した私は、お前を恐れることはないのですよ、友よ。
七五 諸々の欲は剣戟【けんげき】にたとえられ、諸々の蘊【うん】は断頭台である。お前が欲楽と呼ぶもの、今それは私の楽しみではない。
七六 歓喜はあらゆる所で取り除かれ、闇の蘊は砕かれた。悪魔よ、このように知るがいい。死神よ、お前の剣は破壊されたのだ。」
七七 「勝者はその徳に満足なさり、私を第一の位に置いてくださいました。『神通ある者の中の最も優れた者である』と、会衆を前に教え導く方はおっしゃいました。
七八 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨て、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
七九 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
八〇 衣食および牀座の必需品を、瞬間にあまねく千人に捧げました。
八一 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、一切の煩悩は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
八二 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されます。
八三 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。」
――このように、ウッパラヴァンナー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

ケーマー

2005-01-15 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 バドゥムッタラという名の勝者、一切の法において眼ある方であるグルは、今から十万カルパの昔に出現なさいました。
二 そのとき、私はハンサヴァティーの長者の家に生まれ、その家は、様々な財宝が輝き、大いなる安楽がありました。
三 その大いなる勇者のもとを訪れて、説法を聴き、それから清らかな信を起こして、私は勝者に帰依いたしました。
四 両親に頼んで、私は教え導く方を招き、七日間お弟子さん達と共に、飲食を差し上げたのです。
五 そして、七日を過ぎると、調御丈夫【じょうごじょうぶ】は大いなる智慧ある最高の比丘尼を、その第一の位に置かれました。
六 それを聞いて喜び、再びその大聖に供養し、頂礼してその地位を願いました。
七 それから、その勝者は私におっしゃいました。
「お前の誓願が成就するように。私のサンガのためにした供養は、お前に無量の果報をもたらすだろう。
八 今から十万カルパの後に、オッカーカ族の生まれで、ゴータマという名の師が、この世に出現するだろう。
九 お前は彼の法の中において、法によってつくられた後継ぎの子であって、ケーマーという名の、その第一の位の者となるだろう。」
一〇 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
一一 そこから没して、夜摩天【やまてん】に行き、そこから没して、兜率天【とそつてん】に行き、それから化楽天【けらくてん】に行き、他化自在天【たけじざいてん】に行きました。
一二 どこに生まれても、そのカルマによって、いつもそこの王の皇后となったのです。
一三 そこから没して、人間界では、転輪王【てんりんおう】や小国の王の皇后となりました。
一四 天界や人間界で福徳を享受し、一切の所で幸せな者となって、多くのカルパを輪廻したのです。
一五 そして、今から九十一カルパの昔には、ヴィパッシーという名の世界のグル、妙【たえ】なる眼の方、一切の法を観る方が出現なさいました。
一六 私はその世界のグル、調御丈夫のみもとに至り、微妙なる法を聴いて、出家者となったのです。
一七 一万年の間、その賢人の教えのもとに、梵行【ぼんぎょう】を行じて、ヨーガを修め、多聞【たもん】でありました。
一八 縁起を説くことに巧みで、四諦を説くことに恐れなく、聡敏であって弁をよくし、師の教えの実践者でした。
一九 そこから没して、私は兜率天に生まれて名声を得て、そこで私は、梵行の果報によって、他の人よりも優れていました。
二〇 どこに生まれても、私には大いなるもてなしがあり、大いなる財産があり、智慧があり、麗しい容姿が備わり、よく仕付けられた従者がありました。
二一 勝者の教えのもとで修行したカルマによって、私の一切の幸福はよく得られ、意の愛するところです。
二二 たとえどこに行っても、私の夫になった人は皆、私の果報によって、私を軽んじることはなかったのです。
二三 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔【まつえい】であって、大いなる名声がある、コーナーガマナという名の、論者の中で最も優れた方が出現なさいました。
二四 そのとき、私はバーラーナシーのよく栄えた家に生まれました。ダナンジャニーとスメーダーと私の三人は、
二五 千金の価値あるサンガの園をお布施として、牟尼とサンガとに施したのです。布施者である私達は、精舎にと希望して。
二六 そこから没して、私達は皆三十三天に行き、同じようにまた、人々の間では最高の名声を得たのです。
二七 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた方が出現なさいました。
二八 そのとき、大聖の従者は、最高の城バーラーナシーの人間の主、カーシ王キキーという名の者でした。
二九 私は彼の長女であって、サマニーとして知られていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
三〇 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家で二万年の間勤精進して、
三一 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
三二 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、スダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
三三 それは今生では、私、ウッパラヴァンナー、パターチャーラー、クンダラー、キサーゴータミー、ダンマディンナーと、第七はヴィサーカーのことです。
三四 あるとき、その太陽のようなお方は素晴らしい法をお説きになり、私は大縁経を聴いて、それを悟り知ったのです。
三五 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
三六 そして今、最後の有では、最高の城サーガラのマッダ国の王女となり、魅力があり、好かれ、かわいがられたのです。
三七 私が生まれるとすぐ、その城に安穏が訪れたので、安穏【ケーマー】と名付けられましたが、それは徳によって生じたのでしょう。
三八 私が年頃になり、美しい容姿が備わり、あでやかに着飾ったとき、父は私をビンビサーラ王に嫁がせました。
三九 私は大変彼に愛され、容姿を誇って喜び、色が過ぎゆくと説くからといって、大慈ある方のみもとにお伺いしなかったのです。
四〇 そのとき、ビンビサーラ王は、私を利するように智慧を用い、竹林精舎を賛嘆する歌い手を私の所に呼びました。
四一 「仏陀のおられる楽しい竹林、それを見ないで歓喜園を見たなどと、どうして言えましょう。
四二 人の歓喜の中の歓喜といわれる竹林を見た者は、甘露あるインドラの妙なる歓喜ある、歓喜園を見たと言えます。
四三 諸天は歓喜園を捨てて、地上に降り、楽しい竹林を見て、たいそう驚き、満足するのです。
四四 王の福徳によって生じ、仏陀の福徳によって飾られる。だれが、積まれた功徳のそのすべてを説くことができましょうか。」
四五 その林の立派なことを聞いて、私の耳は喜び、その王の園を見ようと思って、王に告げました。
四六 そこで、王は熱心に、多くの従者と共に、私をその王の園に行かせました。
四七 「行くがいい、大いなる富裕者よ。眼を楽しませる林を見よ。それは常に美しく輝き、善逝【ぜんぜい】の光明によって照らされているのだ。」
四八 そして、牟尼がギリッバジャに托鉢【たくはつ】に入られたとき、ちょうど私も林を見ようとして出かけたのです。
四九 そのとき、花咲く山麓【さんろく】は、様々な蜜蜂【みつばち】が歌い、ホトトギスが歌い、孔雀【くじゃく】の群れが舞い、
五〇 静寂で清潔で、様々な経行処【きんひんしょ】で飾られ、点在する房舎と仮堂【かどう】、そして、離貪【りとん】し優れたヨーガ行者がありました。
五一 巡り歩きながら、私の眼に果報があったと思い、また、そこで若い比丘が修行しているのを見て、こう思いました。
五二 「この者は、春のように美しい肉体があり、青春のさ中に、このような美しい山麓【さんろく】で暮らしている。
五三 樹下に座り、剃髪【ていはつ】し、袈裟衣【けさい】を着け、ああ、この比丘は、感官の対象から生じる楽を捨てて、瞑想するのだ。
五四 在家として、思うままに欲楽を享受して、老後にこの清浄なる法を行じなくてはならないのではないだろうか。」
五五 勝者がいつもいらっしゃる香房【こうぼう】にご不在なのを知って、勝者のみもとに伺うと、太陽が昇るようなご様子を拝見したのです。
五六 独り楽しく座ってあおぎながら、美女と一緒なのを拝見いたしますと、このように思えるのでした。「これは、悪い牛王ではないのか」と。
五七 その娘は、金色に光り輝き、口や眼は蓮華のよう、唇はビンバの実のような紅、ジャスミンのような容姿で、眼も心も喜ばすのです。
五八 その声は鈴を振るように聞こえ、乳房は鉢の形をし、腰は出て、お尻は優れ、胸は麗しく、その装飾も素晴らしいものです。
五九 真紅の肩掛けを羽織り、青く清らかな肌着を着け、飽きることのない美しい姿で、喜びをたたえています。
六〇 それを見て、こう思いました。「ああ、なんて美しいのだろう。どのようなときにも、私がかつてこの眼で見たことがないほどだ」と。
六一 ところが、彼女はそれから老いに襲われ、容姿は衰え、容貌【ようぼう】は変わり、歯は落ち、頭は白くなり、よだれを垂らし、言葉は濁り、
六二 耳は縮まり、眼は白くなり、けがれた体液を垂らし持ち、全身と足にしわは広がり、青筋は体に広がり、
六三 腰は曲がり、杖【つえ】にすがり、肋骨【ろっこつ】は出て、やせて、震えながら倒れて、ウンウンとため息をつくのです。
六四 それにはかつてないほどの怖れがあり、身の毛がよだちました。愚者が喜ぶ不浄の色は、なんと厭【いと】わしいことなのでしょう。
六五 そのとき、大悲ある方は私の心の怖れをご覧になって、心は喜び歓喜して、次の詩句を唱えられたのです。
六六 「病んで、不浄で、腐敗した体を見よ、ケーマーよ。漏れ出て、流れ出る、愚者が喜ぶ体を見よ。
六七 不浄において集中し、よく定を得た心を修習せよ。身の寂静について念じよ。しばしば厭離せよ。
六八 それはこのようで、これはそのようでと、内も外も身における欲念を離れよ。
六九 また、無相を修習せよ。慢派生煩悩【まんはせいぼんのう】を捨てよ。それによって慢は止息し、寂静となって、行ずるだろう。
七〇 貪欲に執着する者は、流れに落ちる。あたかも、クモが自ら作った網に落ちるように。
七一 実に、これを断じて期するところがない者は、欲楽を捨てて出家するのだ。」
七二 それから調御丈夫は、私の善き心を知って、私を教え導くために、大縁をお説きくださいました。
七三 最も優れた経を聴いて、あの過去世の想を思い起こし、そこにいるうちに法の眼を清めたのです。
七四 直ちに大聖の足元に頂礼して、これまでの過ちを発露し、ザンゲするために、こう申し上げました。
七五 「師に帰依し奉ります、一切見者よ。師に帰依し奉ります、慈悲の志ある方よ。師に帰依し奉ります、既に輪廻を渡った方よ。師に帰依し奉ります、甘露を施す方よ。
七六 無智の密林に飛び込み、貪欲【どんよく】に迷わされた私は、師の正しい方便によって教え導かれ、律を喜ぶのです。
七七 このような大聖を見なかったならば、貧しい衆生は、輪廻の大海で大いなる苦悩を受けることでしょう。
七八 私がまだ、世界の帰依処であり、煩いのないお方、死の果てに行ったお方、二つとない道理を見なかったときの、その過ちを発露し、ザンゲいたします。
七九 その大いなる利益がある願いを与えるお方を、利益がないと疑って訪れず、色を喜んでいたことを発露し、ザンゲいたします。」
八〇 そのとき、大悲あるお方である勝者は、妙なる声で、「立ちなさい、ケーマーよ」と、私に甘露を注ぎながらおっしゃったのです。
八一 そして、頂礼し右繞【うにょう】の礼をして戻り、王に会って、こう申しました。
八二 「ああ、あなたはこの正しい方便をお考えくださいますか。征服者は林を見ようと思いましたが、欲の林のない牟尼を見たのです。
八三 もし王よ、あなたがお喜びくださるのなら、このような彼の教えのもとに、私は出家したいのです。牟尼のお言葉によって、私は色を厭離いたしました。」
八四 合掌しましたそのとき、その大地の主は言いました。
「許そう、賢い女【ひと】よ。出家しなさい。」
八五 そして、出家して七カ月経ったとき、私は灯火【ともしび】の生起と滅尽を見て、心は感動し、
八六 諸行を厭離し、縁起の相に熟達し、四つの暴流【ぼうる】を超えて、阿羅漢【あらはん】の位を体得いたしました。
八七 私は神足と天耳界において自在となり、他心智においても自在となりました。
八八 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
八九 義・法・詞、また、弁においても、仏陀の教えのもとに、すべてが清浄な智慧が、私には生じたのです。
九〇 私は清浄において巧みであり、論事において恐れるところなく、アビダルマの真理を知り、また教えにおいては自在を得ております。
九一 それから後、トーラナヴァットゥにおいて、コーサラ王に質問されて、深遠な問いに真理に基づいて答えました。
九二 そして、その王は善逝のもとで尋ねましたが、私がそれを説いたように、仏陀も同様に説かれたのです。
九三 勝者はその徳に満足なさり、私を第一の位に置いてくださいました。比丘尼の中で大慧において最上であり、第一であると。
九四 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
九五 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
九六 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。
――このように、ケーマー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

ヤソーダラー

2005-01-13 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 「五百人の比丘尼を従えて、大いなる神通があり、大いなる智慧【ちえ】がある私は、等覚者【とうがくしゃ】のみもとを訪れました。
二 等覚者に、師の輪相に頂礼して、傍らに座って、こう申し上げます。
三 私の最後の有は、齢【よわい】七十八年を転じ、光明は衰退に達しました。偉大なる牟尼【むに】にお告げいたします。
四 私の齢は完全に熟し、私の残り少ない命を捨てて赴くことでしょう。私自らの帰依処は既に作られたのです。
五 齢の最後の時である死を破壊し、大いなる勇者よ、今夜寂滅を体得しようと思うのです。
六 生・老・病・死のない、偉大なる牟尼よ。生死のない無為の城に行くことでしょう。
七 集える限りの師の会衆で、私の罪を知る者は、牟尼の面前でお許しください。
八 輪廻【りんね】に輪廻するうちに、もし私に過ちがあるならば、大いなる勇者よ、どうか、私の罪をお許しください。」
九 「私の教えを順守する者よ、神通を現わせ。そして、すべての会衆の教えに対する疑惑を断つがよい。」
一〇 「私ヤソーダラーは、勇者よ、在家の頃はあなたの第一の妃であり、シャカ族に生まれ、やがて妃に立てられたのです。
一一 あなたの在家時代には、十九万六千以上の女の中で、勇者よ、私は第一位であり、すべての主でした。
一二 年頃だったときは、美しさと礼儀作法を備え、優しい言葉を遣ったので、すべての人は私を女神のように尊んだのです。
一三 シャカ族の子の家にいた、主だった千人の女性は、歓喜園にいる神のように、苦楽は平等でした。
一四 欲界を超えて、色界に安住する者も、美しさにおいては、世界のグルを除くと、私と等しい者はありませんでした。」
一五 等覚者に礼拝して、師に神通をお見せした。多くの異なった形をなして、大神通をお見せした。
一六 その身を鉄囲山に等しくし、北の倶慮州を頭とし、二つの州を両翼とし、南の閻浮州【えんぶしゅう】を体とし、
一七 南海の葦【あし】を尾とし、様々な樹の枝を羽とし、太陽と月を眼【まなこ】とし、須弥山【しゅみせん】を髻【もとどり】とし、
一八 鉄囲山をくちばしとし、閻浮樹【えんぶじゅ】を根っこごと、あおぎながらやってきて、世界のグルに礼拝した。
一九 象の姿を、同じように馬を、山を、同じように水の生き物を、月や太陽を、須弥山や帝釈【たいしゃく】の姿を現わした。
二〇 「勇者よ、私ヤソーダラーは、おみ足に頂礼いたします。眼ある方よ、千世界を花開かせて覆いました。
二一 梵天【ぼんてん】の姿を化作【けさく】して、空性【くうしょう】の法をお説きになる勇者よ、私ヤソーダラーは、おみ足に頂礼いたします、眼ある方よ。
二二 私は神足【じんそく】と天耳界【てんにかい】において自在であり、他心智【たしんち】の自在者です、偉大なる牟尼よ。
二三 宿命【しゅくみょう】を知り、天眼【てんげん】は清浄となり、一切の漏【ろ】は尽き果てて、もはやこの世に転生することはないでしょう。
二四 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、大いなる勇者よ、あなたのみもとで生じたのです。
二五 昔の世界の主の会合で、あなたに示した、あなたへの私の奉仕は大きなものです、偉大なる牟尼よ。
二六 私の過去世の善業を思い出されてください、牟尼よ。あなたのために私は功徳を積んだのです、大いなる勇者よ。
二七 あり得ない所を除いて、障害ないことを熟させながら、大いなる勇者よ、あなたのために、私の命は捧げられたのです。
二八 数千億回、私を妻として捧げました。あなたのためなら、私は悲しくはありません、偉大なる牟尼よ。
二九 数千億回、あなたを助けるために、私自らを捧げました。あなたのためなら、私は悲しくはありません、偉大なる牟尼よ。
三〇 数千億回、私を飲食のために捧げました。あなたのためなら、私は悲しくはありません、偉大なる牟尼よ。
三一 数千億回、命を献上いたしました。恐怖から解脱しようとして、私の命を献上いたしました。
三二 体に付ける装飾品や衣服、様々な多くの女性の所有物は、あなたのために隠したりはいたしません、偉大なる牟尼よ。
三三 財産・穀物・浄施・村・町・田圃【たんぼ】・子供も献上いたしました、偉大なる牟尼よ。
三四 象・馬・牛、また下男・下女など、大いなる勇者よ、あなたのために献上したものは限りがありません。
三五 私のために答える布施ならば、求める者に何でも布施するでしょう。最上の布施を施しながら、私は悲しみを見ることはありません。
三六 数々の輪廻の中で、様々な多くの苦を、大いなる勇者よ、あなたのために享受したことは限りがありません。
三七 安楽を得ても喜ぶことはなく、苦しみの中でも悲しむことはなく、どこにいても、あなたのために取り計らいました、偉大なる牟尼よ。
三八 等覚者が法を引き出された道程【みちのり】で、苦楽を享受して、偉大なる牟尼は悟りを得られました。
三九 世界のグルである等覚者ゴータマが、梵天とお会いになること、あなたが他の世界の主とお会いになることは、私よりも多かったのです。
四〇 私はあなたの使いとして、仏法を求めながら、あなたへの私の奉仕は大きなものでした、偉大なる牟尼よ。
四一 四アサンキャと十万カルパの昔に、大いなる勇者、世界のグル、ディーパンカラは、出現なさいました。
四二 近くの場所に如来【にょらい】を招いて、心は喜び、そのお方がいらっしゃる道を掃除いたしました。
四三 そのとき、あなたはスメーダという名のバラモンで、一切見者【いっさいけんしゃ】のいらっしゃる道を準備なさいました。
四四 そのとき、私はスミッターという名のバラモンの娘で、この集いに行きました。
四五 師に供養するために、手に八本の青蓮華【あおれんげ】を持ち、人々の中に最高の仙人を見たのです。
四六 久しく付き添って、愛【いと】しく、極めて恋しく、心引かれるのを見て、そのとき、私の生に果報があることを思ったのです。
四七 そして、努力しながら、仙人に果報があるのを見たのです。以前のカルマによって、私は等覚者に信心を起こしました。
四八 高い志がある仙人に、深く信心して、他に施すべき人を見なかったので、仙人に花を供養いたしました。
四九 『五本はあなたのものです。三本は私のものです、仙人よ。それによって、あなたの悟りの意義において、平等にシッディがありますように、仙人よ。』
五〇 仙人は花を受けられて、こちらにいらっしゃる大いなる名声ある方に歩み寄り、人々のいる前で、悟りのために、大聖【たいせい】は供養なさったのです。
五一 偉大なるディーパンカラ牟尼は、人々の中に彼を見られ、大いなる勇者は、志高き仙人に予言なさったのです。
五二 今から無量カルパの昔、偉大なるディーパンカラ牟尼は、私のカルマの正しさを予言なさったのです。
五三 『彼女は心も正しく、カルマも正しく、所作も正しく、あなたのためのカルマによって、未来世で愛する妻となるだろう。
五四 美しく、極めてかわいらしく、気持ちよく、言葉も優しくて、あなたの法において、かわいらしい後継ぎの女性になるだろう。
五五 財宝の箱をその持ち主が守るように、この者は善法を守るだろう。
五六 あなたはそれを哀れみ、究竟【きゅうきょう】を円満にするだろう。あたかも獅子【しし】のように、煩悩【ぼんのう】の檻【おり】を捨てて、悟りを体得するだろう。』
五七 今から無量カルパの昔、仏陀【ぶっだ】はそれを予言なさり、そのお言葉に歓喜しながら、私はこのような修行者となったのです。
五八 彼の善をなしたカルマに対して、そこで信心を起こし、無数の天界・人間界の生を受けて、
五九 天界・人間界において、苦楽を享受して、最後の有【う】に達すると、シャカ族の中に生まれました。
六〇 そこでは、麗しい容姿が備わり、財産があり、名声と戒を備え、すべてを具足して、諸々の家において大変敬われました。
六一 世間の法と一致する利益も、名声も、敬いも、また苦しめる心もなく、何ものにも恐れることなく暮らしていました。
六二 如来【にょらい】はこうおっしゃいました。そのとき、王の後宮で、クシャトリヤ達の城で、勇者よ、奉仕の意義をお説きになったのです。
六三 ある女は助力する者であり、またある女は苦楽を共にする者であり、またある女は論ずる者であり、またある女は同情する者なのです。
六四 五十億の仏陀【ぶっだ】、また九十億の仏陀、これらの天中天に大いなる布施を行ないました。
六五 私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。百十億の仏陀、また五十億の仏陀、
六六 これらの天中天に大いなる布施を行ないました。私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
六七 二百億の仏陀、また三百億の仏陀、これらの天中天に大いなる布施を行ないました。
六八 私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。四百億の仏陀、また五百億の仏陀、
六九 これらの天中天に大いなる布施を行ないました。私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
七〇 六百億の仏陀、また七百億の仏陀、これらの天中天に大いなる布施を行ないました。
七一 私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。八百億の仏陀、また九百億の仏陀、
七二 これらの天中天に大いなる布施を行ないました。私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
七三 一万億の世界のグルがありました。これらの天中天に大いなる布施を行ないました。
七四 私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。他に九百億の世界のグルがありました。
七五 これらの天中天に大いなる布施を行ないました。私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
七六 一万八千五百億の大聖、また八百五十億の大聖、また七千億の大聖、
七七 これらの天中天に大いなる布施を行ないました。私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
七八 貪りを捨てた八と第八番目の億の辟支仏【びゃくしぶつ】、私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
七九 諸々の煩悩を滅尽し、垢【あか】を離れた、無数の仏弟子、私の奉仕は大きなものです。大王よ、私の言葉をお聞きください。
八〇 法によって行なう、正法を行じる者にとっては、常にこのようなものなのです。法を行じる者は、この世においても、あの世においても安楽なのです。
八一 法を、善行を行じなさい。あの悪行を行じてはなりません。法を行じる者は、この世においても、あの世においても安楽なのです。
八二 輪廻において厭離【えんり】して、在家から出家者となり、千の親族と共に、所有なき者として出家したのです。
八三 家を捨てて在家から出家者となり、まだ八カ月に至らないうちに、四諦【したい】を体得いたしました。
八四 衣食および牀座【しょうざ】の必需品は、多くを独りに与えるのです。まるで海の波のように。
八五 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、もはやこの世に転生することはありません。
八六 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されるのです。
八七 四無礙解【しむげげ】と、またこれら八解脱【はちげだつ】と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。」
――このように、長老ヤソーダラー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。

神聖な約束の戒

2005-01-07 | ☆【経典や聖者の言葉】

 ああ、あらゆる覚者と菩薩よ、わたしを見てください。
 パモーチャナ・パッタナー・カーマパハーナは今から以降、
 悟りの本質を得るまで、
 過去・現在・未来のタントラの主神が
 悟りに向かって明らかに起こされた
 並ぶものなき菩提心を
 わたしは起こします。

 『戒律の教え』と『徳を積む修行』、そして
 『他の生命体に幸せをもたらす』という三つの戒を
 わたしは固く守ります。

 ヴァジラのために、わたしは頭上にヴァジラ、ヴァジラベル、ヴァジラムドラー、そしてグルを拝します。
 ラトナのために、わたしは布施をささげます。
 宝輪のために、わたしは覚者の誓戒を守ります。
 剣のために、わたしは供養します。
 白い蓮華のために、わたしは清浄なる律を生じます。
 生命体が輪廻から解放されるために
 すべての覚者を生む一族のために
 わたしは悟りに向かう意志を起こします。

 わたしは『全智を妨げているもの』から人々を解放しよう。
 輪廻にとらわれている人々を解放しよう。
 悪趣にとらわれている人々を解放しよう。
 そして、生命体を煩悩破壊に至らせよう。

思惟輪廻転生談(サンカッパ・ジャータカ)

2005-01-07 | ☆【経典や聖者の言葉】



◆性欲の落とし穴――。どんな聖者でも、その落とし穴にはまってしまったなら、安定した瞑想状態は崩れ、高い世界に至ることはできなくなってしまいます。今回は、女性によって神通を失ったサキャ神賢の前生談です。
 登場するのは、サキャ神賢、到達真智運命魂、国王、王妃、信頼できる顧問、あこがれた向煩悩滅尽多学男、大師。ごゆっくりお楽しみください。


 これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、あこがれた向煩悩滅尽多学男に関して講演なさったものです。
 サーヴァッティ市に住んでいた一人の良家の息子が、救済計画に対して心が向かい、出家したそうです。ある日、サーヴァッティを施し物のために歩き回っているとき、一人の美しく装った女性を見て、愛欲愛著が生じ、楽しみを見いださなくなって歩き回りました。大師や師などはその者を見て、欲求不満の訳を尋ね、彼が正しい道を踏み外そうとしている状態に気づいて、
「友よ、尊師とは、まさしく愛著などの肉欲に翻弄されている者たちのために種々の肉欲を取り去り、種々の真理を説明し、真理の流れに入る果報などを授けてくださるのだ。来なさい、われわれは君を尊師の面前に導こう。」
と従えて進みました。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、まさに嫌がっている向煩悩滅尽多学男を、どういうつもりで連れ立ってきたんだ?」
と、尊師から言われて、その意義を告げました。尊師はお尋ねになりました。
「向煩悩滅尽多学男よ、お前があこがれたのは、それは実際に本当か。」
「本当です。」
と言われて、お尋ねになりました。
「どういうわけで?」
 彼はその意義を告げました。それで、尊師は彼に、
「向煩悩滅尽多学男よ、この女性たちというものは、昔静慮の力によって肉欲を抑制した清浄な生命体たちに対してでさえも、強い肉欲を生じさせたのである。お前のような無分別な魂たちが、どういうわけで強い肉欲を起こさないことがあろうか。清浄な生命体たちでさえも、強い肉欲を起こすのである。
 最も偉大な名声に恵まれている者たちでさえも、名誉を失墜するのである。ましてや、欠点のある者たちはどうであろう。完全無欠山を揺り動かす風が、古い落ち葉の山を、どういうわけで揺り動かさないことがあろうか。この肉欲は、覚醒樹の場所に座って現正覚する生命体の心を乱すのである。どういうわけで、お前のような者の心を乱させないことがあろうか。」
 このように言い、彼らに懇願されて物語をお話しになったのです。

 その昔、バーラーナシーで、ブラフマダッタが君臨していたころ、到達真智運命魂は、八億の財産がある大邸宅を有している祭司の家に存在するようになりました。青年に達すると、タッカシラーであらゆる技芸を獲得して、バーラーナシーに再び戻り、妻をめとりました。
 父母の死後、葬儀を執り行ない、砂金を調べる仕事を行なっているとき、
「この財産は見える。しかし、これを生み出した人たちは見えない。」
と思案していると、戦慄を覚え、肉体からは汗が吹き出したのです。
 彼は家庭生活で長い間住んだ後、偉大なる布施を施して、種々の愛欲を捨断し、涙にくれた顔の親族の集団をあとに残して、雪山に入りました。そして、気に入った場所に枝や葉っぱでできた小屋を作り、落ち穂を集め回ったり、野生の根、あらゆる種類の実などによって暮らしました。程なくして、種々の証智と種々の生起のサマディとを生じさせ、静慮の楽しいものとして楽しみながら、長い間、住み思念したのです。
「人々の根城に行って、酸っぱいものと塩を習慣にしよう。このようにしたら、わたしの肉体は丈夫になるだろうし、それのみならずそして、歩き回れる状態がなされることにもなるだろう。そして、わたしのような戒を持す者に、あるいは施し物の食事を施したり、あるいは敬礼をなす者たちは、天の世界に達するだろう。」
 彼は雪山から降りて、徐々に動き回って生活しながら旅行し、バーラーナシーに達しました。日没時に、住まいの場所を考えているとき、国王の遊戯地を見て、
「これは独居にとてもふさわしい。この場所で住もう。」
と遊戯地に入り、ある樹下に座って静慮の楽によって夜を過ごしました。
 その次の日、肉体の手入れをし、結ばれた髪と種々の黒いカモシカの皮革の衣を整え、施し物の食事の陶器を持つと、安穏な感官があり、安穏な意識があり、申し分のない振る舞い方があり、すきの長さほどの前方しか見ないで、すべての状態を獲得した自分自身の身体の輝きによって、世間の種々の注目を引きつつ、市に入ったのです。施し物の食事のために歩き回っていると、国王の居所の門に達しました。
 国王は、大平面をあちこち歩いていたとき、格子造りの窓の間から到達真智運命魂を見て、振る舞い方にまさに浄信を持ち、
「もし安穏な法則がまさしくあるならば、それはこの人の内側にあるべきだ。」
と思念しました。
「行って、あの苦行者を連れてきなさい。」
と、一人の信頼できる顧問に命令を出しました。彼は行って、うやうやしくあいさつし、施し物の食事の陶器を取って言いました。
「尊者よ、国王があなたをお呼びです。」
 到達真智運命魂は言いました。
「偉大な功徳を備えた人よ、国王はわたしをわかっていません。」
「尊者よ、それでは、わたしが帰るまでまさにここにいてください。」
 そう話しかけてから、国王に告げました。
「われわれ一族に頼っている苦行者はいない。行って彼を連れてきなさい。」
と、国王は自らも格子造りの窓から手を伸ばして話しかけました。
「尊者よ、ここへおいでください。」
 到達真智運命魂は、信頼できる顧問の手に施し物の食事の陶器を預けて、大平面に乗りました。それで、国王は彼にうやうやしくあいさつし、国王の寝椅子に座らせ、自分自身のためにもたらされた種々のお粥や硬い食べ物の食事を給仕したのです。
 食事がすむと、探求を尋ねました。探求に対する回答に、より一層浄信を持ち、うやうやしくあいさつして尋ねました。
「尊者よ、あなた様はどこに住んでいて、どこからおいでになったのですか。」
「大王よ、わたしは雪山に住んでいて、雪山から来ました。」
 そう言われて、再び尋ねました。
「どういうわけで?」
「大王よ、雨季の期間のときには、決まった住居というものを得なければならないからです。」
「尊者よ、それでは、国王の遊戯地にお住みください。そして、あなた様を四つの必携品のことでわずらわさせはいたしません。そして、わたしは天に至らしめる功徳を獲得するでしょう。」
 そう約束し、朝食を食べた後、まさに到達真智運命魂と一緒に遊戯地に行き、枝や葉っぱでできた小屋を製作させ、あちこち歩く場所を築き、残りの夜の場所、昼の場所なども完成し、種々の出家者の必需品を用意しました。
「尊者よ、心安らかにお住みください。」
と、遊戯地の守護者に引き受けさせたのです。
 そのとき以来、十二年まさにそこで住みました。それである日、国王の国境が動乱したのです。彼はその静止のために出発しようとして、王妃に呼びかけました。
「親愛なる妻よ、お前か、あるいはわたしが市に残らなければならない。」
「愛欲神のような王よ、何のためかお伝えください。」
「親愛なる妻よ、戒を持す苦行者のためだ。」
「愛欲神のような王よ、わたしは彼に対して怠惰になるつもりはございません。わたしたちの支配者の世話はわたしの務めでございます。あなたはご心配なく出発なさってください。」
 国王は出かけていきました。王妃は実に同様に、到達真智運命魂に異なることなく敬愛をこめて奉仕したのでした。
 さて、国王が行ってからは、到達真智運命魂は決まった時間に来て、自己の気が向いたときに国王の居所に行って食事をすることを行ないました。
 それである日、到達真智運命魂がひどく遅れたとき、王妃はすべての硬い食べ物と軟らかい食べ物を用意してから、水浴して装飾し、低いベッドを用意させて、到達真智運命魂が来るのを待ち受けながら、上等な布でできた外衣をゆったりと着て横になりました。
 到達真智運命魂も時に気づいて、施し物の食事の陶器を持って、空中を通っていき、大きな格子造りの窓に達しました。彼の樹皮の衣の響きを聞いて、突然立ち上がろうとした王妃の黄色の上等な布でできた外衣が落ちました。
 到達真智運命魂は陰部を見て、種々の感官が壊れ、官能的喜びによってじっと見つめたのです。それで、彼の静慮の力によって落ち着いていた肉欲も、箱の中に置かれた毒蛇があたかも鎌首を伸ばして立ち上がるように、あたかも樹液の木が斧で打ちつけられたときのようになったのです。まさに肉欲が生じると共に、種々の静慮は衰退し、種々の感官はけがれ、彼自身はあたかも翼を切られたカラスのようでした。
 彼はあたかも以前のように座って、食事をすることを全く行なうことができませんでした。座らせようとしたにもかかわらず、座りませんでした。それで、王妃は彼にすべての硬い食べ物と軟らかい食べ物を、まさに施し物の食事の陶器の中に置きました。そして、以前は食事をすることを行ない、窓から出て、まさに空中を通っていきましたが、その日は、そのように行くことができずに、したがって、食事を持って大階段を降り、遊戯地へ去ったのです。王妃も自分自身に対する彼の情欲に縛られた心の状態をわかっていました。
 彼は遊戯地に行くと、食事をまさに食べないで、寝台の下に置いて、
「王妃のこのような手の美しさ、足の美しさ、このような尻の線、このような腿の形。」
などとくだらないことを言いながら、七日間横たわっていました。食事は臭くなり、青蝿に囲まれたのです。
 それで、国王は国境を静止させて、再び戻りました。美しく装った市に右回りの礼をして、国王の居所にまさに帰り、
「到達真智運命魂を訪れよう。」
と遊戯地に行って、汚れた草庵を見たのです。
「去ったに違いない。」
と枝や葉っぱでできた小屋のドアを開いて、内面に入りました。彼が横になっているのを見ると、
「何かで気分が悪いはずだ。」
と臭い食事を捨てさせ、枝や葉っぱでできた小屋の手入れをして尋ねました。
「尊者よ、あなた方はどういうわけでご気分が悪いのですか。」
「大王よ、わたしは突き通されたのです。」
「わたしの敵対者たちが、わたしに対してチャンスを得られないので、『われわれは彼の大切なものを弱くしてやろう』とこちらに来て、この人がおそらく突き通されたに違いない。」
と、国王は肉体をひっくり返して、突き通された場所を見ようとしましたが、傷を見いだせなくて尋ねました。
「尊者よ、どこを突き通されたのですか。」
「大王よ、わたしは他の者によって突き通されたのではありません。しかし、まさに自分自身によって自分自身の心を突き通したのです。」
と、到達真智運命魂は言って起き、座に座って、これらの詩句を言いました。

 「思惟が愛著に押し流されたことによって、
  そして熟考が刺激されたことによって、
  装飾された高級なものによってではなく、
  そして矢作り職人により作られたものによってではない。

  耳たぶにはさまれた真珠によってではなく、
  伴っているクジャクによってでもない。
  すべての肢体があぶられたことによって、
  わたしは心臓を突き通された。

  そして、血が流れ出る外傷が、
  わたしには見えない。
  真理にのっとっていない心である限り、
  わたし自らによって苦しみが持ってこられた。」

 このように、到達真智運命魂はこれら三つの詩句によって、国王のために法則を指し示し、国王に枝や葉っぱでできた小屋から外に出てもらいました。そして、十全境の準備をして、失った静慮を生じさせ、枝や葉っぱでできた小屋から出て、空間の中に座って国王に忠告しました。
「大王よ、わたしはまさに雪山に行きます。」
「尊者よ、行くことはできません。」
と言われましたが、
「大王よ、わたしはここに住むことによって、このようなみだらな行為に達しました。今、ここに住むことはできません。」
と、国王の懇願にもかかわらず、まさに空間の中へ飛び上がって雪山に行き、寿命の限りとどまって、神聖天の世界へ達したのです。

 尊師はこの教えをもたらした後、種々の絶対の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。絶対の真理を完達したとき、あこがれた向煩悩滅尽多学男は供養値魂の状態を確立し、真理の流れに入った人たちもいましたし、(愛欲界に)一度だけ再生する人たちもいましたし、不還者になる人たちもいました。
「そのときの国王はアーナンダであり、さて、苦行者はまさにわたしなのである。」


アシュラの苦しみは大きい

2005-01-05 | ☆【経典や聖者の言葉】
グル方とダーキニーたちよ
 どうかすべての者が、菩提心を起こすことができるよう、
 祝福して下さい。
 
 アシュラの苦しみは大きい。
 邪悪な考えによって誤り導かれ
 あらゆるものに不運をもたらす。
 真の我の心を知らず
 その行いは自らを欺くものであり
 感情は粗雑で、感覚は未熟である。
 すべてを敵とみなし、一瞬たりとも真実を知ることができない。
 生まれつき邪悪であり
 損失に耐えることができず
 慈愛を培うことはさらに難しい。
 戦いを好むカルマによって
 よい助言に従うことができない。
 
 このような悪い性質は
 自分自身のために楽を求め
 他に有害な思いを抱くことによって生じる。
 プライド、偏よった愛、虚栄心、憎しみは
 人を低い誕生へと引きずり込む邪悪なカルマの力であり
 罪深い行いを、さらに容易にする。
 
 熟したカルマは、本能的な嫌悪をもたらす。
 正しいことと誤ったことを区別することができず
 どんな方法を使っても、助けることはほとんどできない。
 弟子たちよ、これを心に留め
 生涯、粘り強く瞑想しなさい。

サイハ輪廻転生談(サイハ・ジャータカ)

2005-01-03 | ☆【経典や聖者の言葉】


 これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、あこがれた向煩悩滅尽多学男に関して講演なさったものです。
 彼はサーヴァッティで、食事として与えられる施し物のために動き回って生活しているとき、一人の綺麗な女性を見てあこがれ、救済計画に楽しみを見いださなくなってしまったのです。そこで、向煩悩滅尽多学男たちは、彼を世尊に会わせました。世尊は彼に、
「向煩悩滅尽多学男よ、お前はあこがれたそうだが本当か。」
とお尋ねになりました。
「本当です。」
と申し上げると、
「だれがお前をあこがれさせたんだ。」
とおっしゃられ、それについてお告げしました。尊師は、
「どうしてお前は、このような輪廻から脱却させる救済計画で出家しながらあこがれたんだ。前世において、賢者たちは主席祭司の地位を得ながらも、それを辞退して出家したのである。」
 このように言って、物語をお話しになったのです。

 その昔、バーラーナシーでブラフマダッタが君臨していたころ、到達真智運命魂は主席祭司の祭司の婦人の子宮へと輪廻し、国王の息子と同じ日に生まれました。国王は信頼できる顧問たちに尋ねました。
「だれかわたしの息子と同じ日に生まれた者はいるか。」
「大王よ、主席祭司の息子がおります。」
 国王は彼を連れてこさせ、乳母たちに預けて、息子と一緒にお世話をさせました。そして、二人の装飾品ばかりではなく、飲食なども全く同じにしたのです。
 青年に達したとき、タッカシラーに行き、あらゆる学識を獲得して帰りました。そこで、国王は息子に副王の位を授け、彼には大きな名声があったのです。そのとき以来、到達真智運命魂は、王子と一緒に食べ飲み横たわり、お互いの信頼は固いのでした。
 間もなくして、父の臨終に際して、王子は王権を確立し、大いなる繁栄を経験しました。到達真智運命魂は思念しました。
「わたしの同好の友は、王権を思いのままにしている。また、気づかれた場合、わたしに主席祭司の地位を授けることだろう。家庭生活がわたしにとって何になろうか。出家し、遠離を守り実践しよう」と。
 彼は父母にうやうやしくあいさつして、出家の許可を求め、大いなる繁栄を捨て、単独で家庭生活を後にして、雪山に入りました。そして、心を喜ばせる区域に枝や葉っぱでできた小屋を作り、尊い人の禁欲生活の集団に出家し、証智と生起のサマディを生じさせて、静慮の楽しいものとして楽しみながらとどまったのです。
 そのとき、国王は彼を思い出して尋ねました。
「わたしの同好の友が見えないが、彼はどこにいるんだ。」
 信頼できる顧問たちは、彼が出家したことを告げて言いました。
「気に入った密林に住んでいるそうです。」
 国王は彼の住まいの場所を尋ねて、サイハという名の信頼できる顧問に言いました。
「行きなさい。そして、わたしの同好の友を連れてここに来させなさい。主席祭司の地位を彼に授けることにしよう。」
「わかりました。」
と、彼は承諾して、バーラーナシーから出て、やがて国境の村に達し、そこにキャンプを設置しました。そして、林務官たちと一緒に、到達真智運命魂の住まいの場所に行くと、到達真智運命魂が枝や葉っぱでできた小屋のドアに黄金の彫像のように座っているのを見ました。そこで、うやうやしくあいさつして、そばに座り、親切に迎え入れられて言いました。
「尊者よ、国王があなたに主席祭司の地位を授けたいと思い、あなたが帰ってくることを望んでいます。」
「やめなさい。わたしは、たとえ主席祭司の地位や、カーシ・コーサラ国すべてや、バラリンゴの大陸の王権や、転輪の輝きを得たとしても参りません。なぜなら、賢者は一度捨てた肉欲に再びとらわれることがないからです。というのは、一度吐いたつばのように捨てたからです。」
 到達真智運命魂はそう言って、この詩句を唱えたのです。

   海を所有する秩序を、
   大地と大洋の輪を、
   責任と共に望んではならない。
   サイハよ、このように識別せよ。

   祭司よ、名声を得ること、財産を得ることに恥を知り、
   それにかまわずにそのままにしておきなさい。
   それは、破滅や非法則による振る舞いによって、
   生きることである。

   たとえ家なき状態で、鉢を持って、
   托鉢修行者として歩き回ったとしても、
 非法則による願望よりも、
   この生活することは優れている。

   たとえ家なき状態で、鉢を持って、
   托鉢修行者として歩き回ったとしても、
   世界において他を傷付けてはならない。
   また、これは王権よりも華麗である。

 こうして、彼は何度も懇願されたにもかかわらず、これを辞退したのです。サイハは彼の同意を得ることなく、うやうやしくあいさつして出発し、彼が帰ってこないことを国王に告げました。

 尊師はこの教えをもたらした後、種々の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。真理を完達したとき、あこがれた向煩悩滅尽多学男は真理の流れに入る果報を確立し、また、数多くの別の者は、真理の流れに入る果報などを現証しました。
「そのときの国王はアーナンダであり、サイハはサーリプッタであり、主席祭司の息子は、まさにわたしなのである。」


サンヴァラ輪廻転生談(サンヴァラ・ジャータカ)

2005-01-01 | ☆【経典や聖者の言葉】



 これは、尊師がジェータ林にとどまっておられたときに、一人の精進を捨てた向煩悩滅尽多学男に関して講演なさったものです。
 彼はサーヴァッティに住んでいる善男子で、尊師の法則の教えを聞いて出家し、大師や正大師への義務を満たして、両方の約束維持解放を修得しました。五年いっぱいで、
「わたしは要素の蓄積の道理を受け取って、森に住もう。」
と、大師や正大師に許可を乞うて、コーサラ王領内の一つの国境の村へ行きました。
 そこで、彼の振る舞い方に浄信ある人々によって、枝や葉っぱでできた小屋を作ってもらい奉仕されたのです。雨季の小屋にこもって、励み、精を出し、奮闘し、たいそう真剣な精進によって、三カ月間要素の蓄積の道理を修習しましたが、少しの光明でさえも生じさせることができないので思念しました。
「確実にわたしは、尊師によって指し示された四種の魂の中の『得るものがあっても、せいぜいが経典の言葉を覚えるにとどまる程度であって、とてもその意味内容を得るまでには至らない魂』である。わたしが森に住むことによって、何の意味があろうか。ジェータ林に行って、真理勝者の身体の輝きを見、甘美な法則の教えを聞き、日々を送ろう。」
と、彼は精進を捨てて、そこから出て徐々にジェータ林に進みました。
 大師や正大師、それのみならずそして同僚たちや親しい仲間たちからも帰ってくることのわけを尋ねられて、その意義を主張すると、
「なぜ、そのように行なったんだ。」
と叱責して、尊師の面前に導きました。
「向煩悩滅尽多学男たちよ、どういうわけで嫌がっている向煩悩滅尽多学男を連れてきたんだ?」
「尊師よ、この人は精進を捨てて来たのです。」
とお告げしました。
「それは実際に本当か。」
「本当です、尊師よ。」
「向煩悩滅尽多学男よ、なぜ精進を捨てたんだ。というのは、この救済計画においては、怠け者の無精な魂が最上の果報、すなわち供養値魂の状態を得ることはないからである。そして、精進に着手する者たちがこの法則に到達する。
 それにしても、お前は前世において、精進し、よく忠告を聞く者であった。まさにそのわけによって、バーラーナシーの国王の百人の息子たちの末弟だったのだが、賢者たちの忠告に集中継続し、白い日傘を勝ち取ったのである。」
 このように言って、物語をお話しになったのです。

 その昔、バーラーナシーで、ブラフマダッタが君臨していたころ、サンヴァラ王子という名前の百人の息子たちの弟がいました。
「一人一人の息子に学ぶのに適しているものを教えなさい。」
と、国王は一人一人の信頼できる顧問に預けました。
 サンヴァラ王子の大師である信頼できる顧問は到達真智運命魂で、賢者であり、聡明であり、国王の息子の父の地位にとどまっていたのです。信頼できる顧問たちは、十分に学んだ国王の息子たちを国王に会わせました。国王は彼らに地方を与え、送り出しました。
 サンヴァラ王子はすべての学識において成就に達し、到達真智運命魂に尋ねました。
「先生、もし父がわたしを地方に放つとしたら、何をしましょうか。」
「王子よ、あなたは地方が与えられたときには、それを受け取らないで、
『愛欲神のような王よ、わたしは末弟です。わたしも去ったら、あなたの足元は空になるでしょう。わたしはまさに足元に住みましょう』と、断言しなさい。」
 それである日、サンヴァラ王子がうやうやしくあいさつして、そばにとどまったとき、国王は尋ねました。
「息子よ、お前は学識をやり遂げたのか。」
「はい、愛欲神のような王よ。」
「お前の地方を選びなさい。」
「愛欲神のような王よ、あなたの足元が空になるでしょう。わたしはまさに足元に住みましょう。」
「わかった。」
と、国王は喜んで受けました。
 そのとき以来、国王のまさに足元にいて、到達真智運命魂に尋ねました。
「先生、他に何をしましょうか。」
「国王の一つの古い遊戯地を懇願しなさい。」
「わかりました。」
と、彼は遊戯地を懇願して、そこで生じる種々の花や実によって市の有力者たちの好意を得ました。また、
「何をしましょうか。」
と尋ねました。
「王子よ、国王の許可を乞うて、市内で報酬としての食物を、まさにあなたが施しなさい。」
 彼は同様に行なって、市内ではだれも漏らすことなく、だれに対しても報酬としての食物を施しました。また、到達真智運命魂に尋ねて、国王に懇願し屋敷内で使用人たちにも、馬たちにも、軍団にも漏れなく施し物を施しました。遠方の国々から来た使いの者たちの種々の滞在場所など、貿易商たちの種々の税金、すべてのなすべきことをまさに独力で行なったのです。
 このように、彼は偉大な生命体の忠告に立脚して、すべての屋敷内の人々と、屋敷外の人々と、そして市においては王領の住人と、滞在客たちとを、まさに鉄の平板によってするように、それぞれの恩恵を施す政策によってつなぎとめ、好意を得ました。すべての者に好感を持たれ、気に入られたのです。
 間もなくして、国王が死の床で横になっているとき、信頼できる顧問たちは尋ねました。
「愛欲神のような王よ、あなたの臨終に際して、わたしたちは白い日傘をだれに授けましょうか。」
「顧問たちよ、わたしの息子たちは、すべての者が同様にまさに白い日傘の所有者なのである。しかし、お前たちの気に入った、まさにその者に授けなさい。」
 彼らは国王が逝った後、そのなきがらを手厚く葬って、第七日目に集まりました。
「国王は『お前たちの気に入った者に日傘を掲げなさい』と言われた。そして、わたしたちはこのサンヴァラ王子が気に入っております。」
 そこで、親族たちによって周りに輪を作り、彼に金の花飾りのある白い日傘を掲げました。サンヴァラ大王は到達真智運命魂の忠告に立脚して、公正に君臨したのです。
 他の九十九人の王子たちは、
「我々の父が逝ったそうである。サンヴァラに日傘を掲げたそうだが、彼は末弟で、彼に日傘が渡ってはならない。一番上の兄に日傘を掲げよう。」
と、まさにすべての者が連れ立ってきて、
「我々に日傘を授けろ。さもないと戦争だ。」
と、サンヴァラ大王に書簡を届け、市を閉鎖したのです。
 国王は、到達真智運命魂にその出来事を告げて尋ねました。
「わたしたちは今、何をしましょうか。」
「大王よ、あなたの兄たちと争う必要はありません。あなたは父の資産や財産を百に分割し、九十九人の兄たちに届けて、
『あなた方の父上のこの資産の分割をお受け取りください。わたしはあなた方と争うつもりはありません』と、伝言を送りなさい。」
 彼は同様に行ないました。それで、ウポーサタ王子という名前の彼の長兄は、他の者たちに呼びかけたのです。
「諸君、まさしく国王を征服し得る何ものもあることはない。そして、この我々の弟は敵対者であるとはいえ、とどまってはいない。我々に父の資産を届けて、『わたしはあなた方と争うつもりはありません』と、使いを出したのだ。
 ところで、実際我々すべては同時に日傘を掲げられない。我々は一人に対してだけ日傘を掲げられるのだ。まさに彼を国王となそう。ここで、彼を訪れて国王の財産を引き渡し、まさに我々の地方に出発しよう。」
 それで、彼らすべての王子たちも市を開かせて、敵対者でなくなり、市に入ったのです。
 国王も信頼できる顧問たちに彼らの歓待を行なわさせ、出会う道に使いを出しました。王子たちは大きな従者団を伴ってまさに歩いて来て、国王の居所に上がり、サンヴァラ大王に従順さを見せ、低い座に座りました。
 サンヴァラ大王は白い日傘の下にある獅子座に座り、大いなる名声、偉大で荘厳な気品があり、視線を落とした場所はどこも震えるのでした。
 ウポーサタ王子は、サンヴァラ大王の荘厳な状態を見て、
「我々の父は自分自身の臨終に際して、サンヴァラ王子の国王の本性に気づき、おそらく我々に種々の地方を与えて、彼に与えなかったのだろう。」
と思念して、彼と一緒に共に話しているとき、三つの詩句を唱えました。

  大王よ、あなたの気質に実は気づいていた、
  人々の統治者は、
  これらの王子たちを賛美して、
  あなたは何によっても賛美されないと考えた。
  
  実は大王が生存しているとき、
  あるいは愛欲神のような王が天に至ったとき、
  親族たちは、自分自身の利益を見ていて、
  あなたを承認しただろうか。

  サンヴァラよ、何の遵守によって、
  同じ血筋の者の上に立ったのか。
  集まった親族の集団は、
  何によりあなたを乗り越えられないのか。

 それを聞いて、サンヴァラ大王は自分自身の素晴らしさを主張して、六つの詩句を唱えました。

  王子よ、わたしは出家修行者たちや、
  偉大な尊い人たちに対して妬みはしません。
  敬愛をこめて、彼らに頭を下げて、
  そのような足にうやうやしくあいさついたします。
   
  法則の本質に献身的で、学びたいと思い、
  妬みを抱いていないわたしに、
  彼ら出家修行者たちや、
  法則の本質を楽しむ尊い人たちは諭します。

  わたしは彼ら出家修行者たちや、
  偉大な尊い人たちの発言を聞いて、
  何もおろそかにはしません。
  わたしの意識は法則を好んでいます。

  象の御者たち、衛兵たち、
  戦車の御者たち、歩兵たち、
  彼らに常に種々の報酬としての食物を、
  わたしは拒みません。
   
  わたしには大臣たち、
  そして相談役たち、従者たちがいます。
  彼らはバーラーナシーに、
  数多くの肉・蒸留酒・水を供給します。
   
  および同様に、富みに富んだ貿易商たちが、
  様々な王領より来ています。
  彼らに対してわたしの守護が用意されています。
  このように気づきなさい、ウポーサタよ。
   
 それで、彼の素晴らしさを聞いて、ウポーサタ王子は二つの詩句を唱えました。

  サンヴァラよ、法則によって、
  真に親族たちを支配しなさい。
  頭が良く、そして賢者でもあり、
  および同様に、親族たちの利益である。
   
  親族に囲まれているあなたを、
  様々な宝を蓄積したあなたを、
  敵たちが克服することはない。
  あたかも不飲酒天の支配者が、
  神々の王を克服することがないように。
   
 サンヴァラ大王は、すべての兄たちに大いなる名声を与えました。彼らは彼の面前でひと月半住み、
「大王よ、種々の地方に無法者が立ち上がったときには、我々が発見しましょう。あなたは王権の楽を経験しなさい。」
と言って、自己それぞれの地方に出発しました。
 国王も到達真智運命魂の忠告に立脚して、寿命の終わりには愛欲神たちの都を満たしつつ去ったのです。

 尊師はこの教えをもたらした後、
「向煩悩滅尽多学男よ、このようにお前は、前世においてよく忠告を聞く者であった。今、なぜ精進をしなかったんだ。」
と言って、種々の真理を説明し、輪廻転生談に当てはめられたのです。真理を完達したとき、その向煩悩滅尽多学男は真理の流れに入る果報を確立しました。
「そのときのサンヴァラ大王はこの向煩悩滅尽多学男であり、ウポーサタ王子はサーリプッタであり、残りの兄弟たちは高弟とそれに次ぐ向煩悩滅尽多学男たちであり、集団は覚者の集団であり、忠告を与えた信頼できる顧問は、まさにわたしなのである。」