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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

86-エイティシックス- 第13巻 ─ディア・ハンター─ 感想: うーん、1巻の惨状への回帰は、物語としては悪手にしか見えないのだけれど・・・

2024-03-15 14:41:12 | エイティシックス
悪筆、悪文、悪構成・・・といった、作者の悪癖は、前巻にも増してフル稼働。

この人、実は人に読ませたくないんじゃないの、これ? ってくらいひどい文章。

ただ、思いっきり都合よく解釈すれば、この作品世界のクソ酷さを克明に描くために、もしかしたらわざと悪文のオンパレードにしてるんじゃないか? と逆に思わせてくるくらい。

とにかく読みにくい。

ありえないくらい読みにくい。

シーンがバンバン変わってくるくせに、その変化が単なる「一行空け」で示されるだけで、しかもそのシーンの変化がある程度読み進めないと確信できないため、酷く読みにくい。

加えて、視点人物が誰かも実は判然としないことが多い。

だったらいっそ、全て「神の視点」からの三人称記述でかけばよいと思ったら、時折、平然と視点人物の独白のような内面が描かれるので、たちが悪い。

その上、とにかく登場人物の数が多くて、最初期の登場人物以外は、常に、これ誰だっけ?ってことになる。

これだけ様々な国の様々な組織の様々な立場の人が入り乱れるのなら、さすがに冒頭にすべての人物名と所属先くらいリスト化すべき。

特に、ノウゼンの一族や帝国貴族たちは、今後の展開で重要な役回りを担うはずだから、全て名前を記しておくべき。

それをどこそこの機甲師団所属の・・・とか言われても、わからんよ!!!

いや、これ真面目にクレームいれたいくらい。

結果、多くの頁を読み飛ばす、ということなって、ますますわかりにくくなる、という酷さ。

そうした悪文・悪構成の上で書かれるストーリーが、真面目に陰湿なクソ話なので、ホント、やってられない。

人によっては、人間の悪辣さが描かれていて素晴らしいとか言ってるやつもいるようだけど、いや、だからといってこの文体が容認されていいわけではないだろ?と。

まぁ、これはきっと、4巻以降10巻くらいまで続いた、いかにもラノベ臭の強いチャラい「エイティシックス学園w」を、きっと担当編集者の意向で書かされているうちに、作者の中に溜まったストレスが発散された結果なんだとは思うけどね。

だって、あの頃描かれた諸国におけるレギオンとの争いとか、11巻以降の「第1巻の悪夢アゲイン」のプロットと全然シンクロしないのだもの。

いや、一応背景の設定としては使われてはいるけれど。

でも、11巻冒頭のちゃぶ台がえしの、レギオン戦のゼロからのやりなおし・・・で、すっかりどうでもよくなっちゃったからね。

せいぜいヴィーカとレルヒェがちょっと絡んでくるくらい。

ていうか、この二人のような、独特なラノベ口調のキャラが間に挟まらないから、とにかく会話が続いても、どの発言が誰のものか、も実はわかりにくいケースが多くて、頭を抱えるんだよ。

三人称視点で書け、というのは少なくともそうしたときに「・・・とセオは言った」みたいな記述をうるさくても加えろ、ということ。

それがないところが多くて、めちゃくちゃわかりにくいだよ。

あとモブの描写はもう割り切って具体的な名前をその都度与えたりしない方がいい。


ネイムド・キャラwは、あれ、この人、前に出てきた人だっけ?とか一瞬、思ってしまうから。

今回だったら、人間生体爆弾にされた〈仔鹿〉の子たちとかね。

まぁ、とにかく悪文なんだわ。

その上で、クソみたいな話ってことだけど、それはよく言われているように、11巻からこの方本巻までかけて描かれてきたこと、というのが、結局、連邦が瓦解して、かつての共和国のように「連邦版、というか帝国版の86区」をつくる動きが進められたということ。

連邦が救済したエイティシックスの子どもたちを含めて、共和国の奴らがクソでサイコなレイシストの優生主義信奉者たちの集団だった、ってことを執拗に描いて、その結果、もう共和国の奴らなんていらない、ってことに連邦の連中が思ってしまったw

まぁ、正確にはすべての共和国人、というわけではなく、エイティシックスを使って兵器用の人体実験をしていた共和国の軍属の残党が悪い、ということになるのだけど。

でも、そうした「核となる悪意」が世間に広まることで、市民の間で疑心暗鬼が広まり、世情が荒れて暴動が各地で起こり、治安が崩壊するという流れが生じてしまう。

しかも、連邦は、つい前まで帝国で、その帝国の遺制たる貴族たちも憤懣やる方なく連邦の中で、帝政奪還の機会を伺っていたからたちが悪い。

結果、市民のエイティシックスや共和国に対する疑念をうまく操って連邦の崩壊を画策してくる。

このあたりは、端的に人間社会の愚かさでしか無いわけだけど。

そうして、連邦も崩壊して再度、帝国へと戻りそうな勢いにある。

その意味では、今回、見ものといえば見ものだったのは、エルンストが本性を現して、襲撃者をアサルトライフルで執拗に殴打し撲殺する殺害者の姿をみせたこと。

このエルンストの豹変ぶりは、まさに、いろいろと取り繕うことでなんとか命脈を保っていた連邦が崩壊し、いままで押さえつけられていた帝国が頭をもたげる、という点でものすごくうまい描写だったとは思う。

連邦の理念を体現していたはずのエルンストが自壊することで、帝国が復活する、という流れ。

まぁ、ここから先は、ノウゼン家絡みとシンも巻き込まれていくのだろうし、フレデリカ絡みで他のエイティシックスの面々も思い切り巻き取られていくのだろうけど。

そこが、第1巻のときの「エイティシックス」のときは異なるところだし、その点で、どんな救済の道を作ることができるかどうかで、最終的にこの作品の評価は決まるのだろうな。

だって、わざわざ第1巻の状況を連邦/帝国で再演するということは、あのときと同じ過ちは繰り返さない、という流れ以外の何物でないじゃない。

まぁ、だから今回、というか前回あたりから、シンがただのレーナの犬っころに堕してw、本編に大して絡んでこなかったことなんだろうな。

彼とレーナには最終巻での大役が控えているから。

かわりに、今回の「悲恋」担当となったのが、アンジュとダスティン、ユートとチトリ、だった、ということで。

正直、ダスティンの逡巡は、彼がメインキャラではないとわかっている分、うざかったし、ユートはユートで、もう少し活躍するのかと思っていたら、結局、ただチトリのメッセンジャーでしかなくて、がっかりした。

やっぱりこの作者は、こうした恋愛描写は全然ダメだよね。

それくらいなら、最後にリトが不用意に殺されるところのほうがまだマシ。

ということはやっぱり作者はただのミリオタでしかない、ってことで。

ただ、こういう形でリトを消す、ってことに思いつくところが、ホント、この作者は外道だと思う。

で、こうした、人類側の内乱描写が続く一方で、引き続きレギオンとの戦いは続いているのだから嫌になるw


・・・ということで、11巻12巻よりはマシな話だったけど、3巻もかけて行ったのが「連邦/帝国版86」の実現だった、というのは、正直、悪手だと思うのだけどね。

繰り返すけど、今度は同じ過ちを繰り返さない、というのが王道だから。

でも、この作者がそんな殊勝なことをするとも思えないから、そうなると最後はむしろ、人類は全て滅んで、みんなレギオンとして転生しました!、というアンハッピーだけどハッピーな幕切れで終わりそうな気がするんだよね。

そういう意味で、エルンストは、徹底した狂言回し、ってことになりそうだけど。

どうなるかねぇ。。。。
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