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白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

86-エイティシックス- 第11巻 感想: 新章開始が、実はゼロからやり直しって、どんな罰ゲームだよ?!

2022-03-23 13:30:37 | エイティシックス
発売直後には手に入れていたのだけど、どうにも冒頭が読みにくくて放っておいた11巻。

この間アニメの最終回を見て、あれ、もしかしてちょっとは最新刊の内容が反映されている?とか思って、改めて読み始めてみた。

それでも、最初の100ページくらいまではとにかく読みにくく、しかも今回の内容が共和国人の護送、という、聞くだにげんなりする作戦で、案の定、途中でも、そのげんなり感を、エイティシックスや連邦軍人の口から語らさせるので、さらに嫌気が差して、全くページが進まず。

ようやくあれ、これもしかして?と思ったら、作戦だけでなく、物語自体も胸糞悪い方向に向かってしまって、なんだよこれ?と思っていたら、最後にシリーズとしても盛大な爆弾が落とされて、はぁぁ、となった。

まぁ、とにかくひどいよ。

正直10巻まで読んできて、この作者は、言葉の選択が無駄に衒学的で、会話ではなく地の文で設定を説明しようとするから無駄に頁が黒くなって、要するに、文章も構成も下手で作家としてはダメダメな部類なのだけど(この点では川原礫はすごくて彼の文章は状況描写でもさくさく頭に入ってくる)、ただ、そうした形式上の下手さ以上に、胸糞悪いストーリーを書くことで、なんとか命脈を保っている作家だと思っていた。

そういう評価は、この11巻でもそのまま当てはまるものだった。

まぁ、とにかくね、ひどいよ、これ。

だって、冒頭で、いままで10巻までで連邦が築いてきた戦局をすべてひっくり返して、チャラにしてしまったのだから。

まず、衛星からの弾道弾による攻勢で、人類vsレギオンの勢力図が全く書き換えられてしまって、人類国家は、再び分断されてしまったこと。

そのため、今までレギオンの情勢を掴むための情報ソースとして使っていた〈無慈悲な女王〉からの情報が、基本的に信用できないものになってしまったこと。

その結果、レギオンの活動停止による戦争の完全終了、という夢もまた、白紙に戻ってしまったこと。

にもかかわらず、そのレギオン停止命令を発することのできる帝国の末裔たるフレデリカの正体に、どうやら連合王国のヴィーカが感づいてきたようで、展開次第によっては、人類国家の連帯も、帝国女王の存命という事実から生じる諍いによって、内部から瓦解する可能性が出てきたこと。


まぁ、こんな感じで、まさに11巻にして、盛大なちゃぶ台返しがなされたわけだけど。

でもまだ、こんな内容は可愛いもので。

何が最悪かって、レギオンの攻勢の大元に、元人間の《羊飼い》による共和国人に対する恨みつらみがあった、ってことで。

つまり、共和国はレギオン化した元共和国人の怨念によって滅ぼされたということで。。。

しかも、その「大攻勢」を指揮したのが、レギオン化したレーナの父だった、という最悪のオチw


それにしたって、レーナの父のヴァーツラフが、死後レギオンとなり、《羊飼い》の首領たるノウ・フェイスだった、というのは・・・どうなの?

その事実を確認したのは、レーナにとっての「おじさま」だったジェローム・カールシュタールだったわけだけど、これ、どうやってわかったのだろう? 

〈無慈悲な女王〉のゼレーネくらい、ノウ・フェイスと化したヴァーツラフも、自分の意志や記憶を、ナノマシン上で再現されることが可能だったのだろうか?

それとも、みずからの「意志」というか「遺恨」によってそこまで進化したのか?


とにかく、これでしばらくの間、この物語は、

レーナ vs ノウ・フェイス(実はヴァーツラフ)

が、それぞれ、エイティシックスとレギオンを駆って戦う、壮大な父娘ゲンカになる、ってことね。

しかも、あるタイミングで、きっとレーナが、ノウ・フェイスが父の成れの果てだということに気がつく場面もあるはずで。

その時のショックは計り知れない。

兄のレイの亡霊の影と抗いながら戦ったシンの苦悩と同じ苦しみを、今度はレーナが味わうことになるってことでしょ?

作者って、ホント趣味悪いなぁ。

まぁ、本巻でも途中で、あの気の良いシンたちの整備長アルドレヒトがレギオン化して共和国の攻勢に加わっていたから、エイティシックスだけではなく共和国人の中にも、同胞と思っていた共和国とか共和国人に恨みを持っていたやつはいたんだなぁ、とは思っていたけど。

その時点でも十分、胸糞悪かったのに、それに輪をかけて、よりにもよってレーナの父を中ボス(←ラスボスではきっとない)にしますかw

前の章の3冊で、他国の話を通じて、シンたちとは異なる道を歩んだかもしれないエイティシックスの可能性があれこれ描かれていたわけだけど、本巻では満を持して、普通に共和国人に対して恨みを晴らそうとするエイティシックスの意志を継いだレギオン部隊が現れたわけで。

しかも大攻勢の首魁からしてノウ・フェイス、すなわちレーナの父ヴァーツラフだったことを考えれば、シンが戦場で《羊飼い》の様子が変わった、と感じていた数年前の時点で、すでにノウ・フェイスは、いつか共和国を自らの手で滅ぼすことを考えていたということでしょ?

となると、そもそも、そのノウ・フェイスの判断を容認したレギオン総統?とはいかなる存在なのか?ということも気になってくるわけで。

そういうことを想像しないでいられない内容だった。


しかし、悪鬼=レギオンと化した元同胞や元エイティシックスによって滅ばされた共和国って、時節柄、ウクライナに侵攻したプーチンのロシアを未来を彷彿とさせるようなところもあって。

さすがに業が深いなぁと。

ただ、逆に時節柄、この先の物語の筆致も変わるのかもしれないなぁ、とも思えて。

いろいろと社会情勢的にも難しい立ち位置にある物語になってきた気はする。


こうなると今後の物語の展開としては、左腕をなくしたことで、やむなく前線から離れることになったセオが、別働隊としてどういう行動を取るのか、が気になってくる。

多分、同じく後方に位置するアネットとともに、セオは行動することになるとは思うのだけれど。

多分、そこに、今回のレギオン攻勢によって後方に閉じ込められたヴィーカとフレデリカも絡んでくると思うのだけど。。。

問題は悪筆の作者が、この前線のシンたちと、後方のセオたちの物語を、うまくリンクさせながら絵がかけるのかどうか。

まとも考えれば、この先の展開は、相当込み入ったプロットになるはずなので、ちゃんと編集者が入って向こう数巻分の流れまで含めて構成を整理しないと、作品としては、下手をすると破綻する可能性もある気がする。

ともあれ、次巻、どうなるかねぇ。。。


あ、そうだ、今更ながら気づいたけど、レーナの父のノウ・フェイス率いるレギオン軍団には、きっと、10巻で登場した、まだシンが、レギオンに殺された仲間を銃で介錯してやる前に死んだ人たちも登場するのだろうな。

当然、セオの「ラフィング・フォックス」隊長も。

ホント、ひどい話だ。
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