DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

湖の鎮魂歌(82)

2013-10-18 05:59:59 | 物語


昨日、堀場雅夫賞の授賞式に出席した。

4人の受賞講演はそれなりに面白かった。

確かに、この人たちなら受賞してもおかしくないだろうな、という選定だった。

もちろん、講演はチャンピオンデータしか出さないから、本当に使えるのかどうかは課題だが、聞いている限りは興味深かった。

もっと面白かったのは、堀場さんの話だった。

堀場さんは88歳になったところのようだ。

会社発足からの裏話をしてくれた。

「おもしろおかしく」が、社是ということだ。

なるほど、堀場製作所の社員は少々変わっている。

ある社員が、懇親会で、こんな話をしてくれた。

「堀場がやるイベントの企画は、すべて社員がやるのですよ」

「堀場には、毎月誕生会があって、堀場雅夫さんと平社員が懇談するんです」

変な会社だが、堀場さんの趣味をそのまま体現した会社のようだ。

連結社員の総数が4000人を超えるらしい。

計測機器メーカーとしてはトップクラスなのだろう。

ベンチャー的で、家族的な会社としては珍しい組織だ。

ただ、堀場雅夫さんがいなくなったら、代わるのかもしれないが。

懇親会は、会場のサイズにしては、多くの参加者がった。

多くの著名なゲストもいたが、それなりに和気藹々としていたのは堀場雅夫さんの人柄だろう。

飾らない、フランクな人柄が、多くの人をひきつけるのかもしれない。

日本に残った数少ない創業オーナーの風格だった。

この賞は、他の賞とは少しばかり味わいが違う。

手作りの味がした。

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受賞者

由井 宏治 氏
東京理科大学理学部第一部化学科 教授
「電子を用いた新しい水計測法の開発とその応用」
ラマン分光法は、試料にレーザー光を照射して分子構造を調べる手法で、多くの分野で使用されている。しかし、試料が「水」の場合は得られる信号の強度が極めて微弱なため、水計測技術としての産業的な応用は難しかった。由井氏は、強いレーザーパルス光を水溶液中に入射し、放出された電子の作用でラマン散乱強度が過渡的に最大10万倍に増強される「電子増強ラマン散乱」を発見した。この現象を応用すれば、発光などによる妨害を抑制しつつ一度きりの励起でラマンスペクトルを得ることができ、水のミクロな状態計測への適用が可能となる。この研究は、半導体製造現場の洗浄水、発電所の冷却水、環境中の流水分析などの分野におけるオンライン水計測技術として、ラマン分光法の可能性を広げるものと期待される。

渡辺 剛志 氏
慶応義塾大学 理工学部化学科 特任助教
「ダイヤモンド電極を用いた選択的センシングを指向した電極設計」
ダイヤモンドは本来電気を通さない物質であるが、ホウ素を混ぜ込むことで導電性を示すようになる。この性質を利用するダイヤモンド電極は、白金や金を使用する従来型の電極に比べ、より多くの物質を高感度測定できる次世代の電極材料として幅広い応用が期待されている。一方で、溶液中の検出対象物質への選択性が課題とされ、測定を妨害する成分を事前に除去する必要がある。渡辺氏は、ダイヤモンド電極に金属を埋め込む独自手法を採用することにより、電極近傍での反応物の拡散を制御し、検出対象物質に対する選択性を向上させることに成功した。この研究は、環境中の重金属の測定などへの応用が期待され、前処理不要で安定した高感度計測を実現する携帯型測定器の実用化に貢献が見込まれる。

パラストゥ・ハシェミ 氏
米国 ウェイン州立大学 化学科 助教
「高速サイクリックボルタンメトリーによる環境水中の微量金属の連続計測」
環境水に汚染物質として含まれる微量金属については、健康被害防止や環境保全の観点から、現地での連続モニタリングが重要とされている。その手法として電極を用いた電気化学法が有望視されてきたが、計測時間や安定性といった性能が必ずしも十分ではなく、電極に使用される水銀の有害性も問題視されている。ハシェミ氏は、カーボン電極を用いて計測時間の短縮と水銀フリーを実現した“微量金属高速サイクリックボルタンメトリー”を開発し、微量の銅や鉛を0.1秒オーダーでリアルタイムに分析できることを示した。本技術は、ヒ素やクロムなど、他の微量金属の分析への応用も可能である。水資源の保全・監視および造水・浄化・再利用をする上で必要な情報源となる、環境水中の微量金属のリアルタイム計測技術として応用が期待される。

特別賞

齋藤 伸吾 氏
埼玉大学大学院 理工学研究科 准教授
「新規蛍光プローブによる放射性廃棄体中および環境微生物中の重金属イオンの超高感度電気泳動法の開発」
電気泳動法は、溶液に電圧をかけたときに、試料に含まれる物質の移動速度がそれぞれ異なることを応用する分離法である。対象成分の光吸収や蛍光を検知する検出器と組み合わせ、分離分析に広く利用される。しかし、水環境中の重金属イオン分析に対しては、十分な感度を示す検出方法がなく、適用が難しいとされてきた。齋藤氏は、目的の重金属イオンと結合し、安定して蛍光を発する物質(蛍光プローブ)を新規に設計するとともに、このような重金属イオンの選択的検出を実現する新しい電気泳動法を考案した。これにより、有害物質である鉛や水銀などの濃度を、ppt(1兆分の1)レベルの高感度で測定できる分析手法を確立した。この技術では、数十マイクロリットル(10万分の1リットル)ほどの微量試料での測定が可能であり、放射性物質を含む水中の重金属イオン測定や、微量金属イオンの生体への暴露影響評価手法としての有効性が期待される。

10月17日(木)のつぶやき

2013-10-18 05:34:32 | 物語