空と無と仮と

渡嘉敷島の集団自決 沖タイ連合と曽野組の仁義なき戦い 後編⑥

「土俵を間違えた人」第2回


 今回から第2回目となります。まずは太田氏の主張を箇条書きにて提示します。

  • 「兵器は、住民玉砕、住民処刑、住民威圧に使われた」
  • 住民を保護せず、むしろ玉砕を強制した

 「兵器は、住民玉砕、住民処刑、住民威圧に使われた」は第2回からの引用文になります。
 日本軍の兵器類は元々「一日の激戦で射ちつくせるだけの弾量」でしかなかった。特に手榴弾は敵の殲滅を目的とするものではなく、住民の玉砕に使用されたものであるということになると思われます。
 太田氏は終始一貫して赤松大尉の自決命令があったと「信じている」のですから、以上のような主張をなさっても特に不思議ではありません。

 しかし、この回では真偽不明なものまでも事実認定している部分があり、それによって正誤はともかくも自らの主張を正当化させようといった試みが見え隠れしていますので、以下に引用いたします。


 「「ある神話の背景」をみると、兵隊たちは餓死寸前であったことが強調されている。そうであれば、残った食料は部下の兵隊たちに分けあたえるべきであった。部下の証言によると、ひと足さきに投降した赤松大尉は、米軍からもらったタバコをプカプカふかしていたようだ」


 「玉砕場での住民の阿鼻叫喚の声を聞いて赤松は「あの声をしずめろ」と兵隊に言ったようだ。住民の断末魔の苦しみの声が、赤松には耳ざわりだったのだろう。苦しんで泣き叫ぶ泣き叫ぶ人たちにいくら声を大にして「静かにしろ」といったって、ききめがあるはずがない。「あの声をしずめろ」とは、「殺せ」ということである。「ある神話の背景」では、あとで住民の玉砕を知って、赤松は、早まったことをしてくれたと言ったというのである。住民の最後の悲鳴を聞いて、「うるさい」と感じ、自分の「心の不快」を取り除くことしか考えなかった赤松に、住民に対する思いやりがあったとはおもえない」


 「タバコをプカプカ」という件については、ロクな食料も食べられなかった一般兵士に対して、赤松大尉はそのような窮状にはお構いなく余裕綽々な様子で「タバコをプカプカふかしていた」という構図になると思います。悲惨な兵士と優遇された将校の格差を強調したともいえるかと思われます。
 では実際のところ赤松大尉が上記のような状況だったのかというと、本当のことかどうかは不明である、となるように思われます。先に掲示した太田氏自身の記述にも「~によると」とか、「~のようだ」といった不確実性な表現があることから、すくなくとも太田氏はそれら一連の出来事を「信じて」いるようです。

 ただ、興味深いことに将校に虐げられた兵士という構図は何も渡嘉敷島に限ったことではなく、隣の座間味島や沖縄本島でも時々見受けられます。特に米軍への投降時には様々な形態で現れていることが確認されています。
 例えば栄養失調寸前な兵士に対して部隊長は「丸々と太っていた」とか、投降時に「女を侍らせていた」とか、そういった「悪口」みたいなものが流布されており、部隊長や将校を糾弾していると言えるものが共通点となっております。

 しかし、それらが全て事実かどうかという点に関しては、不明で不透明な部分が多々あるということも一つの事実です。実際問題としてそれらが本当かどうかという点については、分からないことが多いのです。なぜかというと、ほとんどの場合が「噂話」であって、いつの間にかそれらが事実として定着してしまった可能性が高いからです。あるいは、あくまでも「噂」にすぎないのに、「そうにちがいない」と「信じられてきた」と言えるかもしれません。また「噂」でありますから、その性質上「尾ひれ」が付いてしまった可能性も否定できません。

 「噂」の中には多少でも事実が混じっているかもしれませんが、あくまで「噂」は「噂」であります。そのような不確実性が非常に高いものについては、慎重に慎重を期した考察が必要ではないかと思われますし、当ブログはそのような「噂話」を一つ一つ検証すると主旨から逸脱してしまうので、これ以上の考察は控えさせていただきます。
 従って「タバコをプカプカ」という太田氏の主張に関する件については、上記の理由から赤松大尉の悪い「噂話」を利用した印象操作ではないか、という個人的な見解のみを掲示いたします。

 
 次に「あの声をしずめろ」の件についてですが、「玉砕場での住民の阿鼻叫喚の声を聞いて赤松は「あの声をしずめろ」と兵隊に言ったようだ」という赤松大尉が言明した部分は、実のところ出所が全く不明であるということです。裏を返せば太田氏が唯一の出所となっている状況である可能性が、非常に高いということです。
 従って「あの声をしずめろ」という状況は真偽が全くの不明な状態です。「兵隊に言ったようだ」から推測すれば、住民ではなく防衛隊を含んだ兵士からの証言かもしれませんが、これを補完する史料は現在のところ見当たりません。
 私事ながら、もし上記の史料や補完するようなものが存在するのであれば、是非ともご教授願いたいと思っております。

 また、「あの声をしずめろ」の件が仮に事実だとすれば、これはこれで別の問題が浮かび上がってくると思われます。それは史料や証言を恣意的に選択・排除しているということです。
 太田氏及び沖縄タイムスは首尾一貫して、赤松大尉を中心とした日本軍側の証言や史料を「信用しない」スタンスであることが容易に想像できます。そもそも太田氏は赤松大尉を信用していないと言明しております。
それにもかかわらず「部下の証言によると」とか、「兵隊に言ったようだ」と、日本軍側の史料を、真偽はともかく採用していることも明白です。
 つまり、自らの主張に都合がいい史料は、たとえ信用できない日本軍側の史料や証言でも率先して採用しているということです。史料の恣意的な取捨選択そのものではないかと思われます。


 「あの声をしずめろ」の件に戻りますが、ここで確実に言えることは、太田氏が「あの声をしずめろ」の件を「信じている」ことです。ただし一個人の「信じるか否か」について考察するつもりはございません。
 しかしながら、「「あの声をしずめろ」とは、「殺せ」ということである」といった短絡的とも思われる解釈や、「心の不快」といった表現は強引すぎるのではないかと思われます。
 特に「心の不快」というものは、他人の深層心理というか心の内面まで、まるで「土足」で入り込んだようなものであり、「住民に対する思いやりがあったとはおもえない」と断言してしまうその強引・強硬さに、個人的ながらこちらとしても「心の不快」を感じてしまいます。


次回以降に続きます。

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