空と無と仮と

渡嘉敷島の集団自決 沖タイ連合と曽野組の仁義なき戦い 前編⑫

沖縄戦に「神話」はない──「ある神話の背景」反論 第8回②と第9回・第10回


 「信頼どこにおくか
将校会議があったかなかったか、赤松隊の陣地がどうだったかということは、付帯的な問題にすぎない。『鉄の暴風』が伝聞証拠によって書かれたものであり、また、なかには創作的な記述があることを証明するためにそれらは持ち出されたものだが、『鉄の暴風』の記述がすべて実体験者の証言によるものであり、記述者の創作は介入していないことを言明することで答えとしたい。あとは、赤松側の言葉を信用するか、住民側の証言に信頼を置くかの選択が残されるだけである」


 上記の引用は第8回の冒頭部分です。
 
 既に太田氏は「赤松は信用しない」と言明しております。信用することができない相当の理由があれば、赤松大尉の虚偽を追及すること自体には何の問題もありませんし、むしろそういった虚偽を暴露することが、新聞をはじめとするマスメディア側の責務なのかもしれません。
 しかしながら、実は赤松大尉の言動を信用しない正当な理由、あるいは説得力があって整合性がとれるというような理由を掲示しておりません。少なくともこの「沖縄戦に神話はない」では書かれておりません。

 なぜそのようなことが言えるのかといえば、端的にいえば「ある神話の背景」で提起された矛盾点に一切答えていないからです。

 当ブログで何度も取り上げているのですが、「鉄の暴風」は当事者の証言を元にしたノンフィクションであり、太田氏や沖縄タイムス社を信用するのであれば、集団自決においても例外ではありません。そういう経緯でありますから、「赤松大尉が発した自決命令」は、まず間違いなく当事者の証言から得たものであるはずです。
 
 転じて「ある神話の背景」になると、赤松大尉の「命令は出していない」という証言と同時に、どういうわけか「自決命令を聞いていない」といった住民の証言があり、なぜか自決命令を聞いた人がいないという事実が浮き上がってくるのです。この現象は1985年当時も2020年現在も変わりがありません。
 また、その典型的な例として、当時渡嘉敷村の村長だった方で、集団自決の中心にいたと表現してもいいような古波蔵氏の存在があります。

 太田氏によると「鉄の暴風」を取材・編集していた当時、その古波蔵氏からも証言を得たそうです。また「ある神話の背景」でも古波蔵氏が登場するのですが、こちらでは「命令を聞いていない」と証言しております。
 「鉄の暴風」の取材・編集時に古波蔵氏が「自決命令を聞いた」と証言したのかどうか、太田氏の証言からは全く分かりません。と同時に当ブログでは古波蔵氏を追及するつもりもございません。

 ここで問題にしなければいけないのは、「鉄の暴風」では赤松大尉の自決命令を聞いた人がいるのに、「ある神話の背景」ではそれがいないといった、誰が考えても矛盾が生じているという疑問に、常識的に考えれば誰もが到達するであろうということです。そのことは当然、太田氏や沖縄タイムス社も含まれます。

 しかし残念ながら「沖縄戦に神話はない」では、そういった矛盾には一切触れられておりません。別の言い方にすれば、「自決命令を聞いた人がいない」という事実を全く無視しているのです。「自決命令を聞いた」当事者の証言は採用される一方で、「自決命令は出していない」「自決命令は聞いていない」と証言した当事者、あるいはそういった事実を除外しているのです。

 本来であれば上記の矛盾を解消する作業が行われるべきであると思いますが、どうもそういった形跡がみられません。
 しかも太田氏の主張は「赤松大尉より住民を信用する」といった態度なのにもかかわらず、その信用されるべき当事者の証言に矛盾が生じている現象については、一切言及されておりません。

 従って太田氏の「赤松は信用しない」という態度が信用できないのです。つまり、自分の主張に都合のいいような資料は採用され、都合の悪いような資料は無視や除外をしているからこそ、残念ながら信用できないということを言わざるを得ないのであります。
 「赤松側の言葉を信用するか、住民側の証言に信頼を置くかの選択が残されるだけ」という太田氏の主張は、当の本人である太田氏こそ真摯に答えるべきものかもしれません。
 ちなみに太田氏は既に亡くなられているということを付言いたします。



 これで「沖縄戦に「神話」はない──「ある神話の背景」反論」の考察を終わりにしたいと思います。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

 なお、本来であれば第9回と第10回まで続くのでありますが、その主張はどちらかというと集団自決とは直接関係がないと判断し、第8回で終了することとなりました。

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