鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

山小屋の灯油ストーブ

2023年07月23日 | 鳥海山

 ラバーカップの事例を読んでいたら山小屋でのストーブの事を思い出しました。

 山小屋は営業期間中ストーブは置いてあります。気温の減率(0.65℃/100m)から行けば2000mの高所では平地で30℃であっても17℃、平均的な低減率ですので状況によってはもっと下がります。真夏でこんなですから盛夏を過ぎればその寒さたるや。

 山小屋のストーブは対流式が多いと思います。円柱状のやつです。

 ある日山小屋のアルバイト君、小屋番のおじさんからストーブに灯油を入れておけと言われポリタンクを持って給油開始。俗にいうペコペコポンプというやつ。使ったことが無かったんでしょう。いくらペコペコやっても灯油が流れていかない。

 「なにやってんだ?」

 「灯油が入っていがねんです。」

 「上のキャップ閉めねばはいらねんだろ。」

 

 働き者のアルバイト君でした。小屋番のおじさんも登山者を怒鳴りつけるようなことはしませんでした。

 


夏休みの事由研究 続・油揚げ考

2023年07月22日 | 兎糞録

 先日油揚げの事を書きましたがこの辺では発音は「あぶらげ」。この呼び方に地方を区切るラインがあるかと思ったら、どうやらスポット的にこの辺だけ、しかも全国で。一説によると越前から伝わってきたものとか。福井の油揚げを見るとそう、この厚いものでした。

 近所のお店で売っているもの

 前回紹介した酒田市(旧松山町)の「あぶらげ」480g

 おとなり鶴岡市の豆腐屋さんの門は「厚揚げ」390g

 旧市内の豆腐屋さん、その名も南禅寺屋でつくっているのは「油揚げ」但し「あつあげ」の表記もあり。250g、この三つの中で一番高い。

 「あぶらげ」買ってきてと頼まれて表記も見ないで厚いものを買ってくる人、頼む方も厚いものを「あぶらげ」として頼むのが代々続くそれこそ生粋の酒田人。

 福井は今もしっかり「油揚げ」文化が生き続けているようですがこちらは風前の灯火か。この辺の人は多様性だとかSDGsとかいう言葉に惑わされて古いものは捨ててしまいます。古い文化の研究会なんて後頭部の禿げあがった爺さんばかり集まる。若い人にこそ伝えていきたいですね。


熊鈴

2023年07月17日 | 鳥海山

 先日の豪雨でブルーラインも通行止めでしたね。山頂も暴風雨だったようです。鳥海山の熊はどこでどうしているんでしょうか。

 今年は熊出没のニュースが頻発するため熊鈴が例年になく売れるそうです。熊鈴を売っている店のかたが言っていました。

 「一番効き目があるのはどれですか?」なんて聞かれても答えられないでしょうね。彼らの大好きな言葉「検証してみる」で実際どの鈴が一番効果があるか検証してみるYouTuberはいませんかね。

 ある方は山の仕事に就くことになったら合羽と鉈と熊鈴が送られてきたそうです。森林の仕事をしている方は山へ入る前に爆竹を鳴らしているそうです。「ほんでも何回か熊に会ってるからのー」と言っていました。

 人気のない山中を歩くには熊鈴とホイッスルは必要でしょうね。どなたかヤマレコで、熊鈴を鳴らして御浜小屋を通ったら小屋の親父に怒鳴られた(2022/7)と書いていました。熊よりも恐ろしかったでしょう。

 人の多い所での熊鈴は確かにうるさいですね。でもいまだに登山者を怒鳴りつける小屋番もいたんですね。以前はある小屋にそういう親父がいましたが、その評判の悪さときたら誰もが知るくらい。ある日何人かでその話がでたら、一人が「それ私のおじさんです。」

 ヤマレコの記事より、

 この写真の説明に

「高いジュースの値段の下に、小さく書いてある。鈴は音消し。気がつかなかった。このあとペンキ親父に大声で怒られる。鈴ウルゼイダベ。ミエナカッダッダノガ⤴️
訛っていても大声で叫べば解る。」

 もう一枚、

 説明は、

「ペンキ臭い。シンナーの臭いで気分が悪くなる。
何故今?開業前に仕上げてくれよ。人に文句言う前に我が身をただせ。スズの音と、シンナーの臭いどちらが嫌ですか?
そうやって最悪の山小屋に成って行ったのですね。従業員も全く楽しそうでは無かったしね。

2022年07月27日」
 
 ついでにもう一枚、
 これの説明は、
「ごめん、もう2度とあなた様にはお会い出来ません。
怒られてまで来たくないので。」
 
 

歌集 惜春

2023年07月14日 | 鳥海山

 先日紹介させていただいた藤井康夫の

横堂の笹小屋見ゆと呼ぶ声を谷風よりも涼やかに聴く

 この歌はどの本に収められているのかと思い探してみたところありました。

 残念ながら私家版で図書館でしか見ることできません。

 この中の「鳥海登山」にありました。歌心は無い私ですが今様の文字を無理やりへんてこに読ませるキラキラネームを当てはめた変な歌とは違い、登った人には情景の浮かんでくる歌です。

 その中よりいくつか。


石くれの山坂道の九十九折やうやく尽きて谿風の音

可原宿の水の冷たさ指にひびき喉にひびきて汗冷ゆるなり

お花畑の春のさかりに登り来て限りも知らに ゆらぐ萱草

心字型の雪路を登るあなうらに山の心の沁むるならずや

あざみ坂さき行く君の踵をばひたひに仰ぎ喘ぎつつをり 

登り極め大物忌の板じきにはらわたに沁む神酒を畏む

天そそる鳥海嶺呂の本殿の大前にして禰宜のこゑ透る

岩に岩かさなりてこごし新山のいただきにすら登りけるかも

まなかひに屏風をなしてそそり立つ七高山のあけぼのの雲


 「鳥海登山」全二十首のうち九首紹介させていただきました。登路はもちろん蕨岡道。

 私家版ですので世に出ることのない歌、この機会に味わって読んでみます。

 この藤井康夫を紹介してくれたのも庄んなことから手に入れた佐藤公太郎の私家版「含羞私語」

 世の中何がどこでどう繋がっているものか「縁は異なもの味なもの」とは男女の事を言ったものですが本の場合も「縁は異なもの味なもの」のようです。