今夜も一杯 ! ヒロシのブログ

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恋人よ 五輪真弓

2005-10-12 06:03:04 | 海外の思い出
五輪真弓が歌う恋人よ。秋風を感じる頃は、思わずこの曲を口ずさむ事がある。25年前に、イラクのバスラの南約50kmのところにあるK.A.Z地区で港湾設備を建設していたが、あと数ヶ月で完成という前にイランイラク戦争が勃発してしまった。戦争中は、首都であるバクダットの高速道路の一部区間を除き、夜間は街灯も点灯しない場所が多かった。真暗な夜の生活を何ヶ月もしてると、気分転換がしたくなる。思い立ったら、もう止まらない。一度やってみたかった事に取り掛かった。港湾設備は、野球場にあるような大きな照明灯が12基ならんでいて、その塔の上にはトランペット型スピ-カ-が合計24個設置してあり、合計1200Wの大容量がある。この操作室は鍵が掛かっている上に駐留していてる軍隊が管理している。しかし、この塔は自分達で建設した訳だから、操作室の合鍵は持っている。考えれば、建設はしたが、まだ一度もカクテル光線が点灯する所も見たことがないし、スピ-カ-から音が出るのかもテストした事がないので、一度この目で明るさを確認したいし、スピ-カ-から出る音を聞きたいという本音の部分が一気にムクムクて出てきた。こうなると、恐いものがなくなる。灯火管制令が敷かれた中で、ライトを点灯させれば軍隊から銃殺されるかも知れないという漠然とした恐怖感より、一度ミサイルの発射ボタンを押してみたいという気分と同じで余分な事は思わない事にした。車で軍隊が駐留しているエリアに入り、操作室に近づく途中で、こんな時間に何をしに来たという検問を受ける。操作室のトラブルを聞いたので修理に来たと答えると、誰の指示だと更に突っ込んでくる。度胸を決めて、こんな事で時間を掛けてると、後で問題が起きた時は、おまえのせいだと言うが、名前を言えと逆に切り返すと、相手はビックリしたみたいで、おもわず、どうぞと道を空けてくれる。まるでスパイ大作戦である。操作室の鍵を開けて、ポケットに入れてきた、五輪まゆみのカセットを再生装置に入れて、一度深呼吸をしてスタ-トを押した。次に出力用の1200WのアンプのSWと、照明塔の12個のSWも発射ボタンを押すつもりで次々に入れた。真暗な闇の中で恋人よのイントロが始まる。深夜なので地平線のかなたまで届くような音量が30mの高さから聞こえてくる。照明塔の水銀灯とナトリウム灯が序々に明るくなるに連れて、霧が出ている事に気がつく。照明のおかげてわずか3分程度で真昼のような明るさになり、恋人よの曲がながれる。雰囲気と歌詞にうっとりする。しかし、たった1曲の終わりの部分では既に、数人の兵士に銃で囲まれて、すべてのSWを切らざるを得なかった。まあ射殺されなかったのは予想外だったが、このときは自分でやりたい事をやっているという思いの方が強く、死に対して何の恐怖感もなかった。恋人よを聞くときにはこんな経験があった事を思い出す。


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