ジョン・ワナメーカーは、デパート王といわれる。
店員募集の広告を見て、一人の青年がやってきた。
みずから面接したワナメーカーの質問に彼は、
「イエス、ノー」
と、適切に即答して少しの誤りもなかった。
体格も立派だし、学力も十分。
同席者は採用を確信して疑わなかった。
ところがどうしてか、不合格になったのだ。
「たいそう、よい青年のようでしたが、どこかお気に召さないところがありましたか」
側近の不審にワナメーカーは、こう言っている。
「あの青年は、私の質問に『イエス、ノー』と、ぶっきらぼうに言うばかりで
『イエス・サー、ノー・サー』(敬称)と、丁寧な物言いをしなかった。
あんなふうではきっと、お客に親切を欠くことがあるにちがいない。
親切第一がモットーの私の店には、雇うわけにはゆかないのだよ」
たったの一言が、いかに大切か。
「社長が愉快げに "おはよう" とあいさつされると、一週間は楽しく働ける」
こう言って、ワナメーカーの店員たちは、喜々として働き、
店は栄えに栄えたという。
何が社会奉仕といっても、にこやかな笑顔と明るいあいさつほど、
世の中を楽しくするものはない。
彼は街頭をゆく楽隊のように、四方に光明をバラまく。
笑顔とあいさつを出し惜しむ者ほどの、ドケチはないといってよかろう。
ちょっと目もとの筋肉を動かし、わずか一言、二言を話すだけで、
人の幸福を与えることができるのに、それすらもケチるからである。
日本にも
「べっぴんも笑顔忘れりゃ5割引き」
という言葉がある。
朝、
「おはようございます」
と 明るい大きな声で しかも笑顔で 挨拶をされると、実に気持ちのいいものである。
ところが、明るい声も 笑顔も 出し惜しみするケチな人が結構多い。
手間 ヒマかけず、お金もかけず、相手を楽しい気持ちにさせることが出来る。
こんな素晴らしい魔法の術を使わない手はない!
職場は勿論、社会も明るくするし、その幸せは山彦のように本人にかえってくる。
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