アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

彫刻刀(木版画)への正しい認識

2016-01-25 07:33:58 | 画材、技法、芸術論
 木版画彫刻刀各種の用途や使い分けについて、きちんと説明しているもの(ホームページや書籍など)がないことは、以前「版画制作記」のカテゴリー記事でも書いたし、その後「美術書全般、美術番組」のカテゴリー記事で紹介した本、「木版画の世界」に詳しい説明があるからそれでいいだが、自分が実際に使ってみた感想を踏まえ、ごく簡単に(ただし本質的な理解として)書き記しておくことは大切だと思って書くことにした。
 さて彫刻刀には、写真の左から順に、版木刀、平刀、丸刀(私の研ぎ方が下手で黒い部分が削れてしまっている)、三角刀の4種類がある。
 一番重要なのが版木刀でこれ1本で全ての彫りを済ませる(済ませられるように慣れないといけない)。最初は妙だと思ったが、何のことはない、版木刀の刃の形状は、切り絵などでおなじみのデザインカッターと全く同じである。だから彫りはこれ1本で済む。
 では余計な部分を削り取るには、木版画用語では浚(さら)うと言うが、これには丸刀を使う。その弧を描いた刃の半円の形状はスコップを思わせる。そう、不要な部分をこの丸刀というスコップでまさに掘ってしまうのである。そして平刀だが、これは残したいところと削り取りたいところの際の部分、ここをきっちり削り取るのに使う。だから平刀も重要。つまり不要な部分を浚うのが丸刀と平刀の役目である。
 最後に残った三角刀だが、これは本来、お土産品の竹製品に図や文字を彫るのに使われていた(「木版画の世界」にそう書いてある)。なるほど、つまりは簡易(手抜き)版木刀(確かにこれなら1回で線が彫れる)。だから要らないと言えば要らないのだが(なくてもいいので使いたくなれば使わなくてよい)、ちょこっと彫るには便利ということで、近代以降の版画、つまり創作版画以降、木版画でも使われ始めた。これで版木刀の代用になるわけではないが、要は使い方次第で利用価値はあるだろうといった程度。
 とまあこういう風に理解しておくとよい。ざっくばらんな説明だが、彫刻刀4種について、その使い分けがわかりやすく頭の中でイメージできたのではないだろうか。


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