「秋柳図」村上華岳

　村上華岳と言えば「裸婦図」が有名だが、やはり彼の最高傑作はこの「秋柳図」になるんじゃなかろうか。この絵の持つ幻想性は、コローのあの幻想的な風景画に引けを取らない。実に不思議な絵で、霞んでいる中にまるで毛細血管のような柳が描かれている。

　日本の近代画家で埋もれてしまっているのが村上華岳だろう。速水御舟はそこそこの知名度があるのに比べても、知られているようで案外知られていないが、この村上華岳だ。彼の静謐な絵は、見る人の心を落ち着かせるし、深い瞑想の世界へ誘ってくれる。

　菱田春草の「落葉」も名画だが、村上華岳のこの「秋柳図」も名画だと思うのだが、どうだろうか。