※前回の長崎の記事はこちら(31節・いわき戦、2-0)
※前回の大分の記事はこちら(32節・横浜FC戦、1-1)
<長崎スタメン> ※()内は前節のスタメン
<大分スタメン>
- 前節(藤枝戦、2-0)出場停止だった弓場がスタメンに復帰。
- 長期離脱していた町田が前節復帰し途中出場。(今季初出場)
リーグ終盤の熱い戦い、というタイミングで開場を迎えた、長崎の新スタジアム。
その名も「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」で、全部横文字なのが今風を感じさせるものでしょうか。(単に同じ「ピース」の単語を利用している広島のスタジアムと区別をつけるためな気がしますが)
かくして完遂した「長崎スタジアムシティ」プロジェクトにより、選手とは別になったヴィヴィくんの入場口とか何もかもが新しくなり迎えた一戦。
しかし雰囲気は一新されても、それまでのリーグの成績は当然ながら残り。
この開場を昇格争いの最中に迎える事が出来たものの、逆にこの日が、上位である横浜FC・清水に昇格リーチが掛かる状況。
それを防ぎ、かつ今後奇跡の逆転昇格を果たすには勝利あるのみと、ある意味後が無い状態となっている長崎。
一方対戦相手は、下平隆宏監督の前職という事で温かく迎えられた大分。
こちらも切羽詰まった状態ですが、長崎とは逆に残留争いの渦中で、勝利すれば19位・鹿児島が今節降格の可能性が出る試合となり。
前節ようやく掴んだ勝ち点3が齎すであろう上昇機運を、この場にぶつけたい所。
最初に好機、即ち相手のボックス内を突けたのは長崎で前半3分。
立ち上がりでお馴染みの流れである空中戦→ラフなロングパスという初手で、その米田のロングパス、というには語弊がある殆ど前に飛ばない天高く上がったロビングを増山が逆サイドで収め。
そしてジェズス・ギリェルメの持ち運びで前進し、一度は遮断されるもパスカットで継続と、敵陣に入ってからはマンパワーを押し出し。
バイタル付近での繋ぎを経て、ギリェルメのパスを左ポケットで受けた米田、巻くようにクロス気味のシュートを放った(枠外)のが新スタジアムの記念すべきファーストシュート。
しかしその後、好機という面では沈黙。
といっても無駄に時間を過ごすのとは違い、長崎のボール保持に対し大分がミドルプレスの位置で構えるのを崩さないが故に起こった事であり。
頂点の鮎川がアンカーをしっかりマークするのを軸とし、滅多な事(バックパスのトラップに乱れが出た時とか)では前に出ない姿勢を維持する大分。
それに対し長崎も、サイドに出してサイドバック⇔ウイングのパス交換で相手の動きを窺いながら、センターバックに戻すという様子見を繰り返し。
エキサイティングとはかけ離れた、最終ラインでの保持の絵図が長く占めるその姿は、まるでクラシコ(バルセロナvsレアル・マドリード)を観ているような感覚であり。
新スタジアムの開場に伴いサッカーの内容も海外リーグ仕様に……とは言い過ぎか。
そんな状態が続くなか、12分敵陣右サイドで吉田がボールカットして動きかけますが、奥で拾いにいった鮎川にすかさずヴァウドが蓋をして事故にはさせず。
しかし直後のゴールキック、当然長崎はショートパスから地上での繋ぎを再開させるも、しっかり嵌めた大分はミドルパスを蹴らせて弓場がカット成功。
ここからのショートカウンター(鮎川→野村へのエリア内へのスルーパス)は遮断されるも、弓場が再度ボール奪取して継続と分厚い攻めに入り。
そして再度こぼれ球を拾った弓場がミドルシュート、ブロックされるも尚も継続してコーナーキックに持ち込み。
この右CKから、クロスを安藤が合わせヘディングシュート(枠外)と、ボールを支配されていた側の大分が跳梁を見せます。
保持(15分までの保持率は79%)を攻撃に繋げたい長崎は、17分に最終ラインから、田中はワイドでは無く同レーン(左ハーフレーン)への縦パスを選択。
ジェズスフリック→名倉と前線に繋げてギアチェンジ、ドリブルでエリア内へ切り込み横パスと好機を迎え。
これはギリェルメの手前で遮断され、拾った澤田も撃てずにこぼされるも、右へと流れたボールに増山が走り込んでシュート。
これがゴールバー上を直撃してラインアウトと、際どいフィニッシュになります。
お互いフィニッシュを浴びせた事で展開にも変化が起き、20分過ぎ辺りから大分もボール保持の意思を見せ始め。
元来地上での繋ぎに定評はあり、前節カウンターに勝機を見出し成功したというだけで、守勢からのカウンター一辺倒なチームにはあらず。
長らくパスを繋ぎ前進を図るも、戻して作り直しという、序盤の長崎のような立ち回りへと入ります。
それでも22分に長崎のプレッシャーの間を通し、野村のスルーパスで左奥を突く(野嶽が受けるもヴァウドに阻まれる)という具合に、大分よりも積極性がある長崎の前線だけに可能性は見られ。
しかしそんな矢先の24分、最後方つまりGKまでの戻しを選択した大分。
ムンキョンゴンの前方(弓場)・右(安藤)・左後方(香川)と3通りのパスという選択肢も、弓場は安部に付かれ、香川への戻しもギリェルメが詰められる位置に居るため追い込まれるのみ。
そのため安藤を選択し、横を切るジェズスの側を抜かんとするパスを送ったものの、これがジェズスの伸ばした足に引っ掛かる大失態という絵図に。
当然その後は無人のゴールへ蹴り込むジェズスと、大分サイドにとっては憮然たる得点が生まれました。(結局三方とも切られていたため、フィードにすべきだったでしょうか)
絵図的にはあっけないものの、最終ラインの繋ぎの精度での差を示す、新スタジアムの初ゴールだったでしょうか。
それと同時に飲水タイムが採られます。
再開後長崎がボールを握る展開へ戻ると、大分は追い掛けなければならなくなった事で隙が生まれたでしょうか。
30分ここも最終ラインからですが、アンカー秋野を経由して縦に運ぶ事に成功すると、名倉がドリブルからミドルシュート。
ゴール右へ外れるも、中央から前進出来るようになる程に、自身のミスでの失点による影響は甚大なようであり。
32分にも左サイドでボール奪取した澤田から、中央へと移したのち前進を図る長崎、ギリェルメのドリブルは阻まれるもこぼれ球はそのままラインアウトし左CKに。
そしてキッカー・ギリェルメの中央へのクロスから、ヴァウドがヘディングシュートを放ってゴールに突き刺します。
ファーへのジェズスを警戒していたか、その手前で跳び出し抑えんとしたGKムンキョンゴンの更に手前で合わせる格好でのフィニッシュ。
自身の長崎での初ゴールという要素も相成り、歓喜に沸く長崎サイド。
これで2点差と苦しくなった大分、35分にプレッシャーを掻い潜ってのパスワークで左奥へ運び、野嶽がカットインを経てマイナスのクロス。
ニアの鮎川が合わせきれず、ファーに流れたボールを高橋大が撃ちにいくも、澤田と交錯してこぼれ球に。
倒れ込む高橋大を尻目に尚も攻める大分、クロスの跳ね返りを落とした池田が、さらにジェズスに倒された事でたまらず反則の笛が鳴り。
長らく痛んだ高橋大が何とか起き上がった所で、中央から直接フリーキックの好機となった大分。
何としても決めたい所でしたが、その高橋大が放ったシュートは落ちきらずゴール上へと外れてしまいます。
結局(第2クォーターで)大分の見せ場はそれだけとなり、以降は再び長崎がボール保持する時間に。
大分は従来の構える姿勢か、ビハインドを跳ね返すべく前に出るかで迷っている風であり。
その中でアディショナルタイム、FKから右サイドでのパスワークを経て、安部の手前からのクロスが直接ゴールを襲い。
これが左ポストを直撃と、あわよくば3点目という流れも構築されつつありました。
結局2-0のまま前半が終了。
巻き返しを図る大分は、ハーフタイムで高橋大→保田へと交代。
アンダー代表(U-19)から帰還したての保田の投入で、陣容を固めに入りました。
この保田がボランチに入る事で、池田が一列上がってシャドーとなる。
そんなポジションチェンジを想定していましたが、実際始まった後半では、池田は一列どころか最前線まで上がり。
つまりは3-3-2-2(3-1-4-2)へとシフトしたようで、保田は主にシャドーの立ち位置に。
しかしその変更が馴染まないうちに、押し込みを掛ける長崎。
後半3分にFKから好機を作った(放り込みと見せかけて地上から、米田がスルーパスに走り込んでシュート、GKムンキョンゴンキャッチ)のちの、大分のゴールキックからでした。
地上で繋ぎを図る大分に対しプレッシャーを掛け、安藤の縦パスを秋野が綺麗にカットしてショートカウンターに入り。
そしてエリア内へ進入したジェズスの、ディフェンスを十分に引き付けての横パスで、受けたギリェルメがGKと一対一に。
冷静にゴール右へと決めたギリェルメにより、長崎がさらに点差を広げます。
新スタジアムの名称のような、平和的とはとても言えないスコア(3-0)に。
一層目の色を変えなければならない大分。
アンカーは弓場のようでしたが、状況によっては野村がその位置に降りる事もあり。
視覚的には、3ボランチによる3-5-2といった方が正しいでしょうか。
それにより、本格的にボールポゼッションを高めて反撃に掛かる大分。
前回観た際と同様に、WBに高い位置を取らせてどうにかそこに繋がんとする姿勢での攻撃。
サイド奥に切り込み、押し込んだ成果であるCKも何度か得るものの、肝心のフィニッシュの数は膨らまず。
11分、野嶽が左ワイドから斜めに切り込んでポケットを取り、スイッチで引き取った池田がシュートコースを探すもディフェンスに阻まれ。
こぼれ球を弓場がミドルシュートにいった所、名倉のチャージを受けながら撃つ格好になったため、枠外ののち反則の笛が鳴り。
エリアからすぐ手前での直接FKの好機となります。
これを受けた長崎、既に交代準備はしていたものの、悩んだ末に壁の高さを増すためにフアンマ投入という選択をします。(名倉と交代・同時に澤田→笠柳に交代、ジェズスがインサイドハーフに回る)
そしてキッカー野村の直接シュートが放たれるも、ゴール上へ外れとそのベンチの執念が実る格好に。
直後に大分ベンチも動き、野嶽→茂へと交代。
これにより勢いを増した左サイド、香川も積極的に上がって絡む事で押し込みますが、やはり決定機は生み出せず。
吉田のロングスローという手法も組み込み、何とか1点を取りにいきますが、実る事は有りません。
それにより長崎のカウンター→CK→大分のカウンターと、前半とは打って変わって慌ただしい展開(23~24分)も生まれた末に、25分に飲水タイムが挟まれます。
明ける際に大分はさらにカードを切り、野村・鮎川→町田・長沢へと2枚替え。
これに併せて4-4-2へシフトしたようで、SBは右に吉田・左に香川、SHは右が町田・左が茂というサイドの構成となり。
しかし28分、長崎は敵陣でジェズスのパスカットから好機となり。
左奥を突いたフアンマがカットインと、中央でターゲットが主の彼の予期せぬプレーにより、ペレイラが後追いで倒した末に反則・警告。
これによりワイドの位置からのFKとなったものの、エリアからすぐ脇という事もあり、直接シュートを選択したキッカー・ギリェルメ。
これがゴールバーを掠める惜しいフィニッシュと、依然として長崎の迫力の方が目立ちます。
30分にさらに吉田→宇津元へ交代と、矢継早に動く大分ベンチ。
宇津元が左SHとなり、茂が空いた右SBに回るという具合に、ポジションチェンジも忙しなく。
さらに35分に(増山ロングパス→ジェズス落としで)フアンマがエリア内で決定機、放たれたシュートをGKムンキョンゴンが前に出てセーブ。
終盤も近くなり何とか流れを変えたいなか、直後に自陣で受けた反則から、FKを素早くリスタートさせて一気に運ぶ大分。
左奥を突いてCKに持ち込み、フィニッシュには持ち込めずもその後中盤でボール奪取して再度攻撃。
そして香川のスルーパスで左奥を突いてCKと流れを作ると、キッカー保田がクロスの跳ね返りを自ら拾ったのちそのままカットイン。
左ポケット奥へ切り込むと、後ろからジェズスにに倒される、PKかという絵図を生み出しましたが無情にも笛は鳴らず。
さらにこれに激高した保田が異議で警告を貰うという具合に、直接FK以降シュートが皆無の時間が続くなか、踏んだり蹴ったりの展開を描くのみとなります。
直後の39分に、長崎は安部→山田へと交代。
40分、大分は右サイドからの運びで、ペレイラミドルパス→長沢ポストプレイでプレッシャーをかわして茂がドリブルに入り。
そしてサイドチェンジを受けた香川が左ポケットを突いてシュートと、ようやくフィニッシュに辿り着いたものの増山のブロックに防がれ。
左スローインになると、香川のクロスから放たれた宇津元のヘディングシュートがゴールバーを掠めるという具合に、徐々にゴールへの近付きを果たし。
しかし既に終盤であり、3点差を跳ね返すのは至難の業に。
43分に長崎が最後の交代(増山・ギリェルメ→青木義・松澤、笠柳が右ウイングに回る)を敢行したのを契機に、ペレイラが前線に上がるパワープレイ体制を取り始める大分。
後方は弓場がCBを、池田がボランチを埋める形となり。
そして44分にそれが実り、クリアボールを保田フリック→長沢落としとヘッドで繋ぎ、宇津元が左サイドからのドリブルでポケット奥を取り。
入れられたマイナスのクロスをペレイラが合わせる、その変節が見事に奏功する形でゴールネットを揺らします。
ようやく1点を返した大分。
しかしキックオフから保持に入り攻め込む長崎、大分はそれを闇雲気味に止めて反撃に入るしか手立ては無い状態。
それが仇となり、左奥に進入した松澤を町田が倒してしまい反則・ワイドからのFKを与えてしまいます。
これはゴールに繋がらずも、クロスからの競り合いで倒れた事により試合が止まった事で、長崎のドロップボールで再開。
これが右ワイドからとほぼFKの状況からで、ショートパスで地上から崩す事を選択した長崎、笠柳が秋野とのワンツーを経て中央からエリア内へ切り込み。
そしてシュートを放ってゴールネットを揺らし、止めとなる4点目を叩き出しました。
距離の近いスタンドによる新たなゴールパフォーマンス(リボンビジョンに笠柳が座って勝ち誇る)と、ここでも新スタジアムの顔となりそうな光景を見せる長崎サイド。
結局そのまま4-1で試合終了となり。
こうして新スタジアムの初戦を快勝した長崎ですが、横浜FC・清水がともに昇格リーチの状況に変わり無く。
彼らは今後1勝した時点で昇格決定と、止めるのは正直難しい所ですが、この新たな本拠地での興奮は奇跡を信じる気にさせてくれたでしょうか。