<両軍スタメン>
前半戦の両クラブの対戦 - 9節・京都 2-3 鳥栖
ここにきて8戦未勝利と、退潮の流れを止められないでいる鳥栖。
クラブ規模的には何時そうなってもおかしくないという状態であり、仕方無いといえるものの、それに抗う姿勢も見せなければ周囲の心を打つ事は出来ず。
ましてやJ1も残り5戦という最終盤で、上位争いも降格も可能性が低い現状ならば尚更の事。
このまま勝利を挙げられずにシーズン終了、というのは避けたい所でしょう。
ホーム(駅前不動産スタジアム)に京都を迎えての一戦。
立ち上がりから小野が敵陣で掻き回すシーンを目立たせる鳥栖に対し、京都は意外にも最終ラインから繋ぐ姿勢を一定割合で見せ。
前半4分、GKクソンユン縦パス→松田ポストプレイ→金子ダイレクトで縦パス→豊川という流れでプレッシングを脱するというビルドアップで敵陣に運び。(その後左へ展開し三竿がクロス→山崎凌折り返し→原トラップも撃てず)
(レンタルで)移籍してきた説明不要のクソンユンですが、懸念されていた足下の技術は札幌時代から一段階巧くなっている風であり。
やはり足下云々では無くミシャ式への対応が足枷だったのか
しかし相手がどうであれ、ホームで勝利が欲しい鳥栖。
8分に右サイドでスローインの4連続という漸進戦法の末にコーナーキックに辿り着くなど、泥臭さも交えて攻め込み。
そして9分、左サイドをダイレクトパスの連続で繋いでいくと、エリア手前で持った小野が果敢にシュート。
ゴール右隅へコントロールされたそのシュートにGKクソンユンも反応できず、ポスト内側を叩いてネットを揺らします。
華麗な先制点を挙げた小野の煽りもあり、久々の勝利への機運を高めるスタンド。
京都はリードされた事により、一層ボール保持の姿勢が強まり。
しかしその成果は芳しくなく、奪われてショートカウンターといったシーンこそ無かったものの、鳥栖の球際の強さに難儀する流れに突入します。
逆に鳥栖は、高まる相手のプレッシャーを逆手に取り、22分にはGK朴のロングフィードが右の原田に渡って疑似カウンター的に好機。
スイッチを経て小野がまたもミドルシュートに持っていき。(枠外)
一見リードしている者の強みを感じさせる鳥栖の流れですが、次第にその激しいデュエルがマイナスに作用。
20分に松田のボールキープに対し、岩崎が腕で止める形となって反則を取られたのがその発端だったでしょうか。
それを突くように、京都はポゼッションから一転してロングボール中心の攻撃へと切り替え、ターゲットの多さが活きる状況へと展開を変えに掛かり。
28分にはクリアボールを小野が拾うも、トラップが大きくなって原に拾われ、奪い返さんとして縺れ合う形となり。
これで反則を取られた小野、納得出来ずに主審(山下良美氏)に対し長らく抗議するという、よろしくない絵図を描く事に。
これによりエリアからすぐ手前での直接フリーキックを得た京都、キッカー豊川の直接シュートは枠外となったものの、鳥栖の不穏ぶりを突く流れを得ます。
そして32分、ゴールキックでのロングフィード→原フリックという単純明快な運びから、セカンドボールを拾って好機に繋げ。
松田の横パスを受けた原が左ポケットを突き、その勢いのままに放たれたシュートがニアサイド上を破ってゴールに突き刺さり。
キッチリとその流れをモノにし、同点に追い付きました。
鳥栖の流れが悪くなったのは明白な中、35分さらに問題のシーンを起こしてしまい。
左サイド(京都から見て右サイド)で長沼と福田心がもつれ、それによりタッチを割ったため長沼が素早くスローインに入らんとするも、判定は京都ボールに。
すると長沼は福田心にボールをぶつけるという蛮行に出てしまい、それを鳩尾で受けた福田心が悶絶するのを余所にピッチ内は騒然となり。
当然ながらカードを貰う破目となった長沼、その色は黄色だったため首の皮一枚という思いを余所に、今度は京都サイドが不満を溜める事となりました。
その後も京都はロングボール多めで立ち回り、スローインからも山崎凌の落としを頻発という具合にFWのポストワークが生命線となるスタイルを維持。
一方の鳥栖も、最後方で京都のプレッシングをいなしつつ、GK朴のロングフィードを活かす姿勢は変わらず。
42分にはその朴のフィードが跳ね返されるも、山﨑浩がすかさず裏へもう一度ロングボールを送り、受けた小野が左からのカットインを経て三度のミドルシュート。
麻田のブロックに阻まれゴール左へ外れるも、何時でもゴールを脅かせるという疑似カウンターの脅威を植え付けます。
結局同点のまま前半を終え、共に交代無く後半戦に突入。
しかし鳥栖の方は、サイドハーフの位置を入れ替えるという微調整を敢行。
岩崎が左・長沼が右となって後半に臨みました。
その立ち上がり、立て続けに敵陣右サイドでボール奪取を果たす鳥栖。
特に後半2分には山﨑浩が右に開いて京都の前進を阻んでのショートカウンターで、堀米のミドルシュートに繋げます。(GKクソンユンキャッチ)
ハーフタイムを挟んだ事で、ギアを上げにいった感の入りを描く鳥栖。
その象徴が6分で、最終ラインの繋ぎから菊地が左サイド裏へロングパスを送ると、受けにいった岩崎は福田心に蓋をされたという所で急速にスピードを上げて追い越し。
ギアアップを形で示す格好で受けた岩崎から、バックパスを経て堀米のクロスが上がり、小野の折り返しを経て福田晃がボレーシュート(GKクソンユンセーブ)と流れるような繋ぎでゴールを脅かし。
対する京都は前半と同様に、ロングボールをFWに当てるという立ち回り。
それを良く防ぎながら、再度勝ち越しを狙うという鳥栖。
12分には右CKからの二次攻撃で、右ワイドから河原がシュートともクロスとも取れるボールをグラウンダーで入れると、ブロックに当たった末に左ポストを叩くという際どい軌道を描きます。
勝利への道筋は十分といった流れでしたが、迎えた14分。
京都のプレッシングを受けながらの最終ラインからのビルドアップで、山﨑浩が福田晃とのワンツーで剥がす事に成功。
しかしすかさず送られたロングパスが意図の薄いボールとなってしまい、跳ね返されて一転京都の攻撃となり、薄くなった守りを突かれる事に。
そして拾った山崎凌の右→左へのサイドチェンジから、受けた原のクロスが上がると、豊川のヘディングシュートがゴール左へと突き刺さります。
ターゲットマンの真骨頂というフィニッシュで、リードを奪った京都。
良い流れだっただけに、悔やまれる山﨑浩のミスとなってしまった鳥栖。
それを引きずるように直後の16分、再びGKクソンユンのロングフィードからのセカンドボールを拾っての攻撃で、右サイドを福田心が駆け上がってクロス。
これがエリア手前中央の絶妙な位置へ落ちるボールとなり、走り込んでトラップした松田がボックス内を突き、最後はスライディングで詰める形でのシュート。
山﨑浩のディフェンスに遭いながらもしぶとくゴールへとねじ入れ、電光石火で挙げた追加点。
……かと思いきや、VARチェックが挟まれたのちOFRにまで発展します。
何の反則かと考えさせられた刹那、映像が映し出されると松田のトラップの際左腕に当たったとしてのハンドだと理解。
結局判定が覆りノーゴールとなり、鳥栖にとっては命拾いの一言となりました。
長くなったブレイクにより、冷めた熱を取り戻すべく交代敢行する鳥栖ベンチ。(20分)
福田晃・岩崎→藤田・富樫へと2枚替えし、小野がトップ下・堀米が左SHへシフトします。(富樫の1トップ)
すかさず攻勢を掛ける鳥栖ですが、21~22分に菊地のカットインが奪われると京都のカウンターに繋がってしまい。
エリア内へ走り込む豊川へのミドルパスはクリアされるも、右で拾った福田心のクロスから原がヘディングシュート(枠外)とフィニッシュで完結します。
追加点の危機が続くのは変わらずという鳥栖。
25分に両ベンチが動き、京都が豊川→山田。
対する鳥栖は小野→横山へと代えて堀米がトップ下へ戻り。
以降、左SHに入った横山の推進力を中心とした姿勢を強めます。
28分にファンソッコのロングパスを受けた富樫が左ポケットを突き、バックパスから左ワイドを交えながらのパスワークを経て、横山がドリブルで再度左ポケットへ。
そしてゴール方向へと流れたのちシュートを放ち、GKクソンユンがセーブしたこぼれを長沼が追撃するも、三竿がブロックしてCKと京都サイドも必死の守備で防ぎ。
これで危機感を覚えたか、32分に山崎凌→三沢へと交代した京都ベンチ。
金子がリベロの位置に入る事で5バックシステム(3-4-2-1)を採ります。(ボランチは武田と三沢)
簡単に崩せなくなった事で、以降鳥栖も藤田のロングスローを交えるなど形振り構わない攻めの体勢に。
35分にはセンターバックのアピアタウィアが、空中戦ののちに足を攣らせるなど被害も出始め。
何とか落ち着かせて逃げ切り体制を築きたい京都。
その間にも鳥栖はセットプレーでゴールを狙い、34分にはCKでの二次攻撃から藤田がシュート。(GKクソンユンキャッチ)
39分にはロングスローのこぼれ球を河原が右足アウトでシュート(GKクソンユンキャッチ)と、終盤らしい乱戦からのフィニッシュを放ち。
そして40分、浮き球を収めた原が藤田に反則を受けた(藤田に警告)事で、一時の落ち着きを得る京都。(鳥栖はこのタイミングで堀米・菊地→樺山・島川へと交代)
得たFKでは放り込みは行わずに横パスからの攻め、サイドを揺さぶった末に山田が右ハーフレーンからクロス気味にシュートを狙います。(ブロックを掠めてゴール左へ外れる)
そして最後の交代を42分に行い(松田・原→荒木・パトリック、金子が再度ボランチに回り三竿が左CB・麻田がリベロに)、後は逃げきるのみとなり。
鳥栖は決して諦めず、左の横山のみならず右の樺山からも推進を掛ける体勢から攻め上がり。
44分にはその樺山がグラウンダーでアーリークロスを送り、ファーに長沼が走り込む絶好機となるも、その手前でアピアタウィアがスライディングでクリア。
疲労は隠せずともナイスディフェンスを見せるアピアタウィアのその姿に、この後降りかかる悲劇を予想できた者はどれだけ居たでしょうか。
そして突入したアディショナルタイム。
最後の交代の後ファンソッコが左SBに回った事で、ワイドに横山・ハーフレーンにファンソッコという2段構えでの攻めを繰り広げる鳥栖。
横山の左ポケットからのマイナスのクロスを、ニアでファンソッコが受けるも収まらずという、その体勢から際どい好機を生むもモノに出来ず。
こうした左サイドからの脅かしが、物議を醸すシーンに繋がります。
左スローインを受けにいった長沼が、後ろからアピアタウィアのチャージを受けて反則となり。
センターラインからのFKとなり、鳥栖がGK朴からの放り込みの体勢を取る一方で、審判団は再び要因不明のVARチェック→OFRへと入ります。
そして映し出された映像は、鳥栖ベンチに向かって右手中指を突き立てるアピアタウィアの姿。
これが動かぬ証拠となり、挑発行為で一発レッドを受けてしまう事となったアピアタウィア。
その後もベンチサイドが騒然となっていた辺り、反則の際に何やら汚い言葉を浴びせられたと推測しますが、それとは無関係にピッチはここから数的不利での凌ぎを余儀なくされます。
福田心がアピアタウィアの穴に入り、山田が右ウイングバックへと下がる事で守備を埋めようとする以降の京都。
カウンターにより鳥栖陣内深めまでボールを運ぶシーンはありましたが、押し込まれてパスを繋がれるという基本の展開は変えられず。
そして最終ラインでの繋ぎを経て、やはり左サイドからポケットを突く攻撃が決め手となり。
横山のスルーパスに走り込んだ河原、ポケット奥から上げられたそのクロスを、ファーサイドで原田がヘディングシュート。
足下にバウンドするそのボールをGKクソンユンは止めきれず、ゴールへと転がる執念の同点弾が生まれます。
時間にして+9分と、予定時間を大幅に過ぎていたもののVARチェックも絡んでいた事で試合は続き。
ゴールした原田をはじめ、まだまだ攻めるという姿勢を取り直す鳥栖。
京都サイドも反撃体制を取りますが、パトリックの裏抜けに向けての荒木のロングパスはオフサイドとなり惜しくも実らず。
そして歓喜の瞬間に辿り着いたのは、やはり数的優位の鳥栖でした。
再び左サイドからの攻め上がりで、横山がワイドからカットインの体勢に入るもクロスを選択。
ニアサイドでファンソッコがフリーでフリック気味に合わせると、右ゴールポスト内側を叩いてゴールに吸い込まれ。
劇的な逆転弾に、普段はクールさを貫く川井健太監督もピッチ脇でスタッフ一同と喜びを露わにします。
尚も時間は続くも、京都の反撃の手立ては無理矢理なロングボールを送り込むしか無く。
鳥栖ディフェンスがそれを跳ね返し続けた末に、試合終了の時を迎えます。
9試合ぶりに挙げた勝利は壮絶の一言という展開で、味わい深さ満点のものとなったでしょうか。