<両軍スタメン>
試合数×2の勝ち点が、大体優勝の目安と思われるJリーグ。
J1では神戸が29試合で勝ち点58、J2では町田が38試合で75と、ほぼそれをなぞる数字を残して首位の座に立っています。
ではJ3はというと、首位の愛媛は30試合で55。
ペースは保っているものの若干少ないという感じで、その得失点差(+8)からも他を圧倒する程の強さは感じなく。
しかしその分他のクラブが詰めている、という状況にはなっていないのが今季のJ3の難儀な所でしょうか。
2位争いは若干離れた位置(とはいっても2位の鹿児島が勝ち点51なので4差)で、詰まっているのはそれ以下の立ち位置という事で激しく順位が入れ替わり。
好不調の影響が大きく、簡単にその座から陥落したり、あるいは一旦後退したクラブが復調し再度2位の座を窺ったりと群雄割拠の状態に。
現在2位の座に着いている鹿児島とともに、後者の立場を取っているのが富山。
そして残念ながら前者の真っ只中なのが沼津というこの対戦カード。
沼津の今季のサッカーといえば、「偽サイドバック」のシステムを軸とした、時には最前線まで上がってゴールに絡む「超攻撃的SB」というのが第一印象。
しかしこの日は左サイドでその片翼を担っていた濱がセンターバックに移っての出場と、連敗中のクラブらしく微調整が行われ、左SBには大迫が入って挑みました。
立ち上がりは落ち着かず、ともにスローインからの組み立てを狙うという流れに。
沼津は前半5分にGK武者がロングフィードを送り、ブラウンノアが裏に抜けるも富山もGK田川が前に出てクリア。
GKからGKへというボールの流れを描き、落ち着かない流れはまだ続くと思われましたが、ここから沼津が自身の流れを掴み。
続く6分、最終ラインから繋ぐビルドアップで、ハイプレスを掛ける富山に対し濱が2トップ間を通す遊びのパスを巧く使ってボランチのシルバを釣り出し。
ここから左へ展開して前進し、スルーパスに走り込んだ大迫がクロスに辿り着き。(ブロックで防がれる)
沼津が得意手であるポゼッションスタイルに持ち込んだものの、8分にはその沼津のコーナーキックを防いだ富山がカウンター。
伊藤がドリブルで一気に自陣からエリア内に持ち込み、右ポケットからそのままシュート(ゴール上へ外れる)と脅かし。
これでポゼッションの沼津vsカウンターの富山という流れになるかと思われましたが、一つフィニッシュを放った事で富山サイドも落ち着いたか、主体的に攻め上がる流れに入ります。
12分には逆に沼津がカウンターに持ち込み、徳永スルーパス→森エリア手前で横パス→ブラウンノアと中央を素早く運んでいき、ブラウンノアのペナルティアークからのシュートをGK田川がキャッチ。
どちらも形に拘らず、とにかく先制点に辿り着くのが第一という、リーグ終盤の勝負所らしい展開を描き。
その中で富山が勿体無かったのが14分の攻撃で、シルバが右→左へのサイドチェンジを通し、受けた安光がさらにサイドチェンジと大きな展開でアタッキングサードに運び。
しかしそれを受けた椎名がハンドを取られてしまい実らずとなったシーン。
その「勿体無さ」が守備面でも表れてしまったでしょうか。
20分の沼津の攻撃、これまで安在が最前線に上がり、逆サイドの大迫が残るという右肩上がりの布陣での繋ぎが目立っており。
しかしここでは逆に大迫を上げての攻撃で、ワイドで縦パスを受けた大迫が奥へスルーパスを通すと、津久井クロス→大外で森折り返しを経て中央で持井がシュートチャンス。
放たれたシュートに対しブロックに入った富山ディフェンスですが、末木に当たる→安光に当たるという2度のディフレクションでGK田川が逆を突かれた格好となってしまいゴール。
懸命の守備も、こうした形となってしまうと何とも言い難く。
逆に先制した沼津は、以降も長短交えてのパスワークで主導権を確保します。
それでも反撃に入る富山、24分にGKからの繋ぎで、田川が間を通す縦パスを決めたのち前進。
エリア手前で細かく繋ぐ流れの中で、ポストプレイに入ったレイリアが菅井に倒されて反則となり、絶好の位置で直接フリーキックを得ます。
中央~左ハーフレーンの丁度中間ぐらいという位置で、キッカー・レイリアはやや左寄りの壁を越すシュートを放ち。
そしてゴール左へと突き刺し、沼津のお株を奪うショートパス重視のビルドアップを切欠として同点に追い付きました。
追い付かれた沼津、以降そのショートパス重視の攻撃はあまり機能しなくなり。
最初のシーンのような、裏へロングパスを送るも前に出たGK田川にクリアされるというシーンも目立ち。
富山が立ち上がりのようなハイプレスを諦めた事もあり、相手のコンパクトな守備に対し難儀していた風でもありました。
28分にカウンターに持ち込み、左ワイドでスルーパスを受けたブラウンノアがドリブル、左ポケットを突いてシュートを放つも今瀬のブロックに阻まれ。
反対に、最終ラインから繋ぐ機会が多くなる富山。
沼津よりも選手間の距離を長く取り、プレッシングに来られても長い距離を走らせるという、「自身のスペースを生む」と「相手の疲労度を増す」という両得を図るべくのビルドアップ。
スペースを得たうえでのロングパスで攻撃を組み立てていきます。
その流れで迎えたアディショナルタイム、ここも左サイドで前進の姿勢からシルバが逆サイドへロングパスを送り、受けた大山が細かいタッチでのドリブルで右ポケットを突き。
そして奥へ切り込みを図ったものの、津久井に蓋をされて反則という形で終わってしまい、後一歩及びませんでした。
結局1-1のまま前半が終了。
共にハーフタイムでの交代は無く、後半戦の賽は振られ。
それに伴い富山は、一旦落ち着かせたハイプレスを再度敢行していきます。
入りの後半1分に右サイドで椎名が奪い、拾ったレイリアが津久井に倒された事で反則・FKに。
このFKでのクロスはクリアされるもさらにコーナーキックで継続し、キッカー・レイリアがニアにクロス、跳んだ大畑を越えたその奥でシルバが跳び込みヘディングシュート。(GK武者キャッチ)
直後の4分にも、中央アタッキングサードでGK田川のパスをレイリアがカットする(そのままエリア内に切り込むも附木に防がれる)など、沼津のビルドアップを次々と遮断していきます。
8分にはシルバのミドルシュートがゴールを襲う(左サイドネット外)など、一転して劣勢になった印象の沼津。
それでも、富山が再度ハイプレスに意識を振って来た事で、それを逆手に取って引き付けるスタイルは不変であり。
9分に附木がパスを散らした末にGKへと戻して引き込み、GK武者ロングフィード→菅井落としで打開し、右サイドで受けた森のスルーパスにブラウンノアが走り込むも繋がらず。
富山は前半のドリブルシーン然り、伊藤が左サイドを切り込むシーンを膨らませて攻め上がり。
16分にベンチが動き、椎名・佐々木→松岡・大野へと2枚替え。
以降右サイドでも、松岡がカットインでポケットを突く動きが顕著となるなど、サイド突破が強化された格好となります。
そうして優勢さを保ち、22分にGK田川は右サイドに開いてロングフィードを送り、セカンドボールを拾ってレイリアがドリブル。
そして松岡がカットインを仕掛け、ディフェンスに阻まれこぼれた所を末木が走り込んでミドルシュート。
このパンチの利いたシュートが附木にブロックされるもCKとなり、以降攻勢のなかセットプレーの好機も数多作る流れとなります。
23分の左CK、ショートコーナーを挟んでのレイリアのクロスから、ニアサイドで大野がフリック気味でヘディングシュートを放ちましたがGK武者がセーブ。
26分にはカウンターの流れで、末木の縦パスを受けたレイリアがドリブルで疾走、そのまま右ポケットを突いてシュートに辿り着いたものの大きく枠を外してしまい。
一方押され続ける沼津、状況打開のためベンチが動き。
23分に大迫→井上へと交代し、井上がCBに入った事により濱が本来の左SBにシフト。
そして29分には3枚替えを敢行、森・ブラウンノア・津久井→染矢・川又・鈴木と一気に3トップ全員を入れ替えます。
その効果もあり攻め上がる沼津、32分には一旦途切れるも、富山のロングパスを附木が前に出てカットしてさらに攻撃。
中央を前進していき最後は川又がエリア内へスルーパスを送りましたが、走り込む徳永が大山に蓋をされて繋がらず。
するとボールを抑えたGK田川が素早くスローして富山のカウンターとなり(フィニッシュには繋がらず)、また流れを反転させられます。
そして直後にシルバが菅井に反則を受けた事で富山が再度セットプレー攻勢。
このFKからの二次攻撃で、左からの末木のロングパスを大野が直接ヘディングシュートに持っていき。
これもGK武者にセーブされますが尚も左CKで継続、再度大野を目掛けたクロスがこぼれた所を、ペナルティアークから末木がシュート。
強烈なシュートでしたがこれもゴールバーを直撃し決められず(その後レイリアのクロスから大野がヘディングシュートも枠外)と、どうしても2点目に辿り着けません。
それでも諦めない富山、34分に伊藤→高橋に交代と、次々に前線のタレントを投入していきます。(高橋がFWに入り、レイリアが左サイドハーフに回る)
その後ポジションチェンジした富山の左サイドを突くように、沼津が右サイドで繋いで崩さんとしますがペースを奪うには至らず。
守勢故の苦しみか、37分には松岡に反則を受けた濱が、思わず報復行為を敢行するなど苛立ちが先行する絵図も作ってしまい。(しかしカードは出ず)
2位の座を奪うためにもなんとか勝ちたい富山。
39分には松岡が例によって右からカットインの姿勢に入ってクロスを送ると、手前のブロックに当たってゴールに向かうボールとなり。
しかしこれもGK武者のセーブに阻まれるという具合に、「惜しい」だらけの展開は続きます。
そして終盤に入り、42分に持井のドリブルを反則で阻止した今瀬が警告を受け。
攻勢の最中、カウンターだけは許さないという意地も見せる富山。
しかし沼津は43分に最後の交代を敢行し、徳永→安藤阿雄依。
今季新卒で入団(J1清水にユースから昇格、直後即レンタルで加入)し、これが5試合目の出場と、ほぼ新星という存在の投入に賭ける格好となった中山雅史監督。
この安藤阿が左ウイングに入り、鈴木がインサイドハーフに降りるというポジションチェンジがあった事。
そしてその交代の前の(大野に対する附木の)反則に則してか、沼津ベンチに居た控えGK渡辺が警告を貰うという悪目立ちがあった事が効果倍増に至ったでしょうか。
そして迎えたアディショナルタイムも、目安の時間(3分)は押し迫り。
初心に帰りGKから細かく繋ぐビルドアップに入る沼津、安藤阿が自陣左サイドで受けたのちカットインで中央へ。
そして逆の右サイドでの攻めにそのまま加わる安藤阿、スルーパスを奥で受けるもバックパスがブロックされて途切れ。
しかしすかさずのスローインで継続させる沼津、今度は鈴木が投げ入れられたボールを受けて攻撃の輪に加わると、右ポケットで持った安在のバックパスから中央で菅井がミドルシュート。
これがディフェンスの間隙を抜いてゴールを襲い、GK田川がセーブするも、右へこぼれた所を詰めたのは鈴木。
田川の足でのセーブも及ばずゴールネットに突き刺さり、歓喜の勝ち越しゴールとともに試合終了の笛が吹かれる劇的な終幕となり。
最後は安藤阿・鈴木の盛んな移動を捕まえきれなかった格好で、富山は無念の敗北となりました。