拳の真相
2009年01月19日 | 他
ボクシング関連における現存人物の伝記などの文章構成はおよそ似た様なもので、
生い立ち、動機、エピソード、サクセス、苦労話、そして健全な希望と、
表向きに書かれたものが多い。
過去に幾つも読んだがどれもそれなりに面白いが、興味をそそられる程のものではない。
所詮ゴーストライターが書くものだから仕方がないとは思う。
この本も同様に本人以外が書いているとは思われるが、先代の回想と自身のストーリー
を交えた構成は金平氏への直接のインタビューを基にし、また仕上がりも氏と調整し、
完成させたものと感じられるので最後まで飽きなく読む事が出来る。
中でもやはり先代が残した言動、書籍からの言葉はとても深み重みがある。
米国でタイトル奪取した西城の状態を表した比喩も、
子供を教育する理論も、
具志堅を洗脳させた口説き文句も、
タイでのユーリを守る為の立ち振る舞いも ..。
仲違した海老原の晩年に 「 うちの長男だから 」 と援助した話も涙をさそう。
そしてあの薬物入りオレンジ事件の真相。
結局、この本で真実が明らかになる事は無いが、その行為、また八百長について、
金平氏の興行師としての見解が綴られている部分がある。
その内容は非常に説得力があり、先代が受けた ” 限りなくクロに近い灰色 ” の判定を
より薄めるものとなる効果は十分にあると思われる。
今も昔も世間のボクシングに対するイメージは偏見と先入観にとらわれ過ぎだ。
大ボラ、先見の明、ヤクザな商売感覚、政の才覚、立て板に水、分厚い面皮など、
この圧倒的な存在感。
先代のような興行師は今後の時代背景を考えるともう現れる事はないだろう。