Scientific Boxing

国内、海外のボクシング界の状況や試合の観戦記などを絶対的主観で書き綴るブログ

観戦記~スーパーミドル級~

2010年03月29日 | BOXING

アンドレ・ディレル vs アルツール・アブラハム
試合結果:ディレル11R失格勝ち

●所見~ディレルの場合~
相手を研究し、戦略を踏まえたクレバーな戦いだった。
サウスポーからの右ジャブは恐らく顔面に当てる事は意識せず、相手の前進を止める為、また、左スト
への伏線の為と思われ、遠い距離から肩の筋肉をグッと利かせて強めに打ち、スピードもあった。
自身の右へのステップも相手の前進のタイミングに合わせ、また、左ボディストを真直ぐ入れる位置取り
の為でもあり、実際、相手のヘソの値にグサリと食い込んでいた。
そのジャブと左ストはロングの距離にあり、これは相手の右を遠ざけ、左フックの軌道に入らない意図も
あったと思われる。
実際、相手のそのパンチが当たる雰囲気ではなかった。
何故か繁盛にスイッチしたが、切り替えは速く、スタイルも違和感が無く、ボディジャブはサウスポー時
同様に相手のヘソの辺りに真直ぐ食い込んでいた。
しかし、オーソドックス時は相手の右フックが当たりそうな雰囲気があり、多くやるのは危険。
10Rのスリップはダウンにも見えるがレフェリーの角度からは前足が交差していたのでミスジャッジと
言う程でもない。

11Rのスリップは中盤に同じ場所で同様のスリップをしている。
ファイターにしろ、ボクサーにしろ、マットが滑り易いのは致命的にもなり兼ねない。
見映えは悪いがインタバル中、バレーボール試合の様にモップ係を使うのも一案。

ポイントリードし、ダメージも与え、文句なしの判定勝利が手に届く所であのパンチは本当に気の毒だ。
あの体勢であんなの食ったら流石に続行出来ないよ。

●所見~アブラハムの場合~
サウスポーのアウトボクサーは苦手なのかもしれない。
右ストも左フックも2.5歩踏み込まなければ当たらない感じで、走りながらの捨てパンチで距離を詰めて
みたが、相手がスピーディに動いたので距離は縮まらなかった。
相手がオーソドックスの時、チャンスはあったがボディを打たれ止められた。
この日は珍しく、ボディの真ん中のよく打たれていた。

8R1分辺り、コーナーでのフェイントの掛け合いからの攻防はハイレベルの極み。
肩、首筋、目、肘、声、腕と、あらゆるパーツを使い、パタパタパタパタッと掛け合う光景は圧巻。
( ディレルのサイドステップで終わったのが若干ケチがつくが.. )
85年のハグラーvsハーンズも同様にコーナーでの攻防があり、カメラも同じアングルから映していたが
互いにフェイントなど否応無しに先に打ち込むスタイルだった。
( 但し、あの試合は極端な打撃戦だったけれど )
比較するとやはりボクシングは年月と共に、如何に合理的に当てるか、動くか、交わすか、が重要となり、
進化している事が判る。
しかし、あの数秒の攻防だけで何年分ものボクシングを楽しめる様な気がする。

7R終了間際のスリップはダウンでしょう。レフェリーのミスジャッジですね。
最後の右は悪意的でなく、思わず打ってしまった感はあるが、弁解の余地は無く、救い様もない。
倒れている時、終了ゴング後は体の緊張が解かれた状態にあるので体内外の装甲力は激しく低下
している。
そこに食うのは素人がボクサーのパンチを食う事と同じ。
絶対にしてはならない。

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