Scientific Boxing

国内、海外のボクシング界の状況や試合の観戦記などを絶対的主観で書き綴るブログ

悩める時はDo a box.

2011年01月22日 | 

実行するボクシングに悩む時はWatch a box.
観戦するボクシングに悩む時はDo a box.
これ、asikawaの法則。

2011年年始。 
タイランドはバンコクのとあるムエタイジム。
1回の利用で500B ( 約1400円 ) だと?
タイにしては高ぇな。
協栄ジムの1日体験並じゃないの。
まあ、円高だからいいけどね。

しかし、ジムワークなど何年ぶりだろう?
十数年? いや20年以上ぶりかなあ。
動けるか?
まあ、1年前、M級オーバーだったウェイトを半年間でSL級に落とし、それを維持しているし
(ちと小自慢)、ジョー小泉氏に刺激されて腹筋腕立ても継続しているのでフィジカルコンディション
は悪くない。
問題はスタミナだ。
まずはメニューを組もう。
①柔軟
②シャドー3R
③ミット3R
④バッグ4R
⑤シャドー1R
⑥ロープ
⑦ストレッチ
こんなところかな。

ジムは基本的にムエタイだがボクシングのトレーニングと言う事を理解してもらう。
イデタチは海パンとシューズ、あと頭にバンダナを巻く。
デンカオ似のトレーナーが 「 ヘーイ、ターバン野郎 」 とかからかっているがアラブ人には
見えないだろう。
シューズはランニング用の様な靴底がギザギザのゴム状で厚いものだが、ゴム状はマット
へのかかりが良過ぎて時に滑る様な足運びが出来ない。
また、底が厚いものは足首を捻挫し易い。
まあ、それしかなかったので仕方ない。
ボクシングを裸足でやる訳にはいかないし。
バンデージの巻き方は拳に重ねる方法でなく、拳に巻きつける方法を取る。
俺は拳を痛める程のパンチは無いし、握る部分が厚い方が打ち易いからだ。


先ずは柔軟運動。
普段動かさない筋、肉、骨、関節を激しく動かし、負荷をかける事になるので怠る訳にはいかない。
特に足、アキレス腱。
具志堅氏がチャリティマッチのレフェリングの注意で 「 アキレス腱を切らない様に 」 これには爆笑。
しかし俺の体は硬い。
焼き過ぎのステーキの様だ。
ボクシングでは体は柔かい方がベター。
硬い体ではパンチを打つ際、支点から伝わるパワーが関節、筋肉での消費がムダに行われ
威力が100%有効とならない。
E・ホリフィールドなど筋骨隆々で体が硬そうに見えるがその筋肉は柔かく、開脚180度の
体前屈も可能で、肩関節も柔軟だったらしい。
故に、フレームは小さくてもパンチのエネルギー効率が良かったのだろう。
柔軟運動は10分間みっちり。


続いて鏡の前に立ちシャドー。
1人でトレーニングするとSR・レナードの様な構え動きになりがちだが、そこは堪えてR・ロペス
になりきる。
左肩と左腕をグッと上げ、右親指を左頬に当てる感じで構え ( 俺は基本オーソドックススタイル )、
軽く弾みながらスタンスとフォームに注意しジャブジャブ。
スピードを出す必要は無い。
前後にジャブジャブ、後足を引きずらない様にジャブジャブ。
腰の位置が上下するので修正しながらジャブジャブ。
そしてワンツー。
おっと、右を打つ際、軸が左に傾くよ。
右ストの連続で修正すべき。
腰を安定させ、右、右、右。
少し、動きをつけて右、右、右。
傾きが無くなってきたのでワンツーワンツー。
動きはスムーズになってきたがガードが下がっている。 いかんなぁ。
それぞれの部分に意識が行き過ぎると別の部分が緩くなる。
ジャブ、ワンツーの様な基本的な動きにしても簡単ではない。
それを定着させるにはやはり反復練習。
だから日本のジムでは初心者には最初の1ヶ月はジャブしか教えないのだ。

ワンツーが安定してきたので、ツーワンも交える。
それらを交互に打つと気付く。
ワンツーはワンもツーも威力を意図的に入れる事が出来るが、打ち終わり無防備になり易い。
ツーワンは威力を意識するとスムーズに出ないが、ジャブで終わるので左右共にガードを戻し易い。
各効果の考え方としてはワンツーはダメージを与えるもので、ツーワンはポイントを取るものと言える。
90年代後半から世界のボクシングシーンが急激にポイントゲームの傾向になったと同時にツーワン
を多く見られる様になった事もそれを物語る。

ストレートがキレ出したので左フックも交える。
腰と肩をしっかり入れ、フォロースルーはあまり利かせず目の前で拳を切る感じで打つ。
右ストからフック、フック、右スト。
ジャブからフック、フック、ウィービングしてフック、右ストウィーブ、ウィーブ、ステップ。
体もキレてきた。
シャドー3R終了。
結構バテるな。
スピードつけていたならばもっと消耗していたかもしれない。
タオルでしっかり汗を拭い、水分を補給し、呼吸を整える。
次は最も消耗するであろうミット打ちだ。


タイ人のトレーナーに
「 ヘイ、たのむぜ 」
「 OK、OK、6Rだな 」
おいおい、冗談じゃないぜ。
しかし3Rとか言うのはバツが悪いので
「 4Rだ 」
「 OK、OK 」
4Rでもキツイだろうけど。

ジャブ、ワンツーから。
シャドーの様に1人でやるものとは違いペースも違う。
相手はどんどんペースを上げてくるよ。
「 カモン、カモン 」 って。
この男のヤケにニヤついた表情が気に入らないなぁ。
「 コイツ、スタミナねえなぁ 」 とか思ってるのかね。
ロイヤル小林氏が後の自伝で気に食わないトレーナーにはミット打ちの際、空振りする素振りで
顔面に打ち込んだとか言っていて、俺も似た様な経験はあるが、このタイ人にも一発ぶち込んで
やりたくなった。
まあ、それ以前に自身のトレーニング。
ワンツー、ワンツー、フックスト。
ボディも交える。
日本のミット打ちとは位置が違うのでリズムが狂うよ。
それからこのトレーナーは時々わざとミットと引いて空振りさせる。
これは理に適っている事だ。
ミット打ちは基本的に攻撃的な練習だが、実戦で全てのパンチが相手に当たる訳でもなく、
当然に空振りもある。
その空振り時、崩れたバランスとリズムをいかに瞬間的に修復するかとても重要な事だ。
故にミット打ちで意図的に空振りさせるトレーナーは良いトレーナーといえる。
だからと言ってヘラヘラ顔のお前が良いトレーナーとは思わないが。

3R中盤でもう限界に達していた。
前夜に食ったトムヤムスープの味が蘇ってきた。
シュリンプをリバースしそうになったぜ。
4R時はもう幻覚が見える。
何故か初恋の女性がリングサイドから微笑んでいる。 ( 何じゃそりゃ? )
4R終了のベルは天使の音だった。
こんなにスタミナが衰えていたのか ..。


ここでエピソード。
トレーニングをしている女性がひとり。
見た目は北欧系。
デカイ。
身長180cmあるかな。
顔が小さいので2mくらいに見える。
キックのトレーニングのようだ。
パンチもキックも型は出来ていてディフェンスを含めた動きなので選手なのかな。
少し動きを観察してみた。
ストレート系のパンチを打つ際、ていうか当たる瞬間、クラウチングが少し崩れ、上体が少し反り
気味になる。
まえ腕のフックを打つ時も同様。
これは女子ボクサーによく見られる傾向で、特に大柄な選手に多い。
クリスティ・マーチンはストレートは良く伸びたが、上体が反る傾向にあり、レイラ・アリも同様だった。
とは言ってもレイラは打たれる事を怖がってのけ反りながら打っていただけだけれど。

その要因は ” オッパイ ” にあると思う。
俺にはそれが無いからイメージは出来ないが、肩脇腕を挟む所にプルプルしたものを抱えて
いるとそりゃパンチ打ち難いだろう。
日本の女子世界王者は総じてオッパイが大きくないのでパンチを出し易く、手数のファイターが多い。
( これはセクハラ発言ではなく、事実発言 )
欧米の女子選手でオッパイの大きな選手はボクサータイプが多い。
オッパイの話はこれで終わり。

キックは威力抜群でド迫力。
その威力は身長とウェイトに比例するのだろうな。
K-1とかもデカイ選手が強いみたいだからね。
あれをガードしてもウェイト差が有る場合、受けた方は後方に吹っ飛びそうだ。
しかし、キック打ち終わり後は無防備だ。
あのキックをダックしてガンガンガーンってイメージが出来る。

おっと目があった。
女性が英語で 「 一緒に練習しませんか? 」
何だって? 練習?
お手手つないでシャドーってのものでは無いだろうな、当然。
「 スパーリングの事かい? 」
「 ええ、そうよ 」
腕に自信があるのでしょうね。
それとも俺の動きを見て 「 この男なら余裕だわ 」 とか思ったか。
まあ、後者か、少し苦笑い。
女性相手にムキになっても仕方がない。
体裁の良い断り文句があるのでそれを適用する。
「 女性とは戦わないんだ 」
しかし、この発言は失敗だった。
女性は一瞬にして表情を強張らせ母国語を交えて言葉を捲し立てた。
” ズ ”” ドゥ ” の発音が多いのでロシア語か? スウェーデン語か?
まあ何語でもいいけれど 「 女だからって甘く見ないでよ 」 ってな事を言っているのは判る。
よく喋るな。
” お喋りな女性を黙らせるにはその口をこの口で塞ぐのが一番効果的さ ” とか何かのセリフで
有ったような。
しかし、そんな事をしたならばローとミドルとハイを食った挙句、更にlawsuitでKOされるだろう。
あるいはメロメロにさせてKOするか。
いや、逆にこちらがメロメロにKOされるかも。
瞬間的にそんな下らん事を考えるが。
「 まあまあ、アポロ・クリード .. じゃなくてアポロジョイズ ( apologize  )。
   あなたはムエタイ、私はボクシング、ステージが違う 」
「 そうね 」
「 あなたはあなたのトレーニングがあり、私は私のトレーニングがある 」
「 ああそう、じゃね 」
はっきりした態度ですねえ。
エピソード終わり。


気を取り直し、バッグ打ち。
ヘビーバッグ。
草臥れたバッグだな。上の方が萎んでるよ。いわゆる洋ナシ形だ。
この形はストレートもフックも上を打つ場合ナックルがしっかり当たらなく、指を痛め易い。
M・タイソンは来日時のトレーニングで洋ナシ形のウォーターバッグに器用に打ち込んでいたが。
ボディ打ちに集中しよう。
いざバンバンバーン。
おわっ、硬ーっ、何これ?
本物の砂が入っているんじゃないの?
拳が割れるよ。
キック仕様にしてあるのかな。
思い切り打てないな。
ヘビーバッグは帝拳ジムで西岡が打っている様な背丈から膝元までパンパンに詰まったバッグが
最良と思う。
回転の速い連打の打ち方に切り替えた。

ライトサイズのバッグ。
位置が低いな。
JM・コッジがヨネクラジムでやっていた様なバッグを大きく揺さぶり、ダックしてフックをカチーン
ってのをやりたかったが、
こんな低いのではヒンズースクワットになってしまうよ。
硬さはOK。
スタンス、フォーム、軸、ガードを意識しつつ、狂った様に打ち捲くる。
最後のRは乳酸出捲くりで、vsクォーティのデラホーヤ状態。
こんな状態でハードパンチ食ったならば気持ちよくKOされるだろう。
R終了のベルが鳴った時にはもう大の字。
「 誰か、水ぶっ掛けてくれぇ 」 と言おうとするが荒い呼気しか出ない。
ハァハァ、ゼィゼィ、ああ、キッツー。
しかし、まだやらなければならない事がある。
トレーニング後のストレッチ。
やらない選手もいると思われるが、やるとやらないでは疲労の残り方が違うと考える
( 内容は一般的な考えと同じ ) 。
体前屈をやっているとトレーニング前と明らかに体の柔軟の違いを感じる。
これがフィジカルコンディションアップの体感。
トレーニング終了。

課題は明らかだ。
スタミナ不足。
動きのイメージは頭と体の中にあり、構成も取れる。
但し、それを維持するスタミナが足りない。
1Rの前半と後半で同じ動きが出来なければならない。
2Rは1Rと同じ動きが出来なければならない。
最終Rは動きは落ちてもガス欠で動けなくなる訳にはいかない。
試合って ..?
何を考えているんだい?
Just Jokking.

スタミナ不足解消には?
言わすと知れたトレーニング、それはロードワーク。
明日から走ろう。

                

翌朝。
たいしたもんだ。本当に早起きして走っているよ。
体に絡みつく湿気、線香の匂い、小鳥の囀りを五感に感じながら黙々と走る。
ゴミ集積車の脇をすり抜けた所ですれ違ったランナーの視線を感じた。
オカマのウィンクだ。
俺は振り返らず、足のピッチを上げた。

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