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Scientific Boxing

国内、海外のボクシング界の状況や試合の観戦記などを絶対的主観で書き綴るブログ

一瞬の夏

2008年11月19日 | 

久しぶりにこの本を読んだ。
言わずと知れた ” 混血ボクサー ” カシアス内藤のカムバックをドキュメントタッチで
描いた沢木耕太郎の著書。
何度呼んでも感銘が失われない本は誰にでも在るとは思うが私にはこれがその1つ
であり、読んだ回数を指折り数えたら片手では足り無くなってしまった。

私は書評できるほど多くの本を読んではいないし読解的感性も優れていないので
著者がモチーフとするものが本人なのか、内藤の心理なのか、内藤の状況なのか、
カムバックの道程なのかは分からないが、
読者の視点でどれをモチーフとしても十分に興味深く面白い。

それ程に関心を抱く要因にはもちろんボクシングというステージで描かれている事が
大きいが、それとは別に文面に著者のロマンティズムとナルシシズムが溢れていて
読み手側にダンディズムを十分に与えてくれる。
他にも後藤正治、立松和平など、ボクシング関連の著書はあるがどれも及ばない。

カシアス内藤はとても人間的魅力を備えたボクサーであり、
著者はそれを繊細に表現し、幾多の困難に当たりながら目的に向かうストーリーに
乗せて実に豊かに描いている。
声、表情、思考が文面から伝わり、読んでいるとまるで自分が内藤を昔から知る
友人のようにも思えてくる。

また、著者はボクシング経験は無いようだが見る目に優れていて、技術、動きを
必要最小限の活字で表すのが巧みで、中でもスパーリングでコーナーを背にした
内藤が鮮やかなディフェンスでパンチをかわした描写は読んでいて、両者の動き、
質感、音、互いの表情、空気感、リングの照度まで鮮明にイメージング出来た程だ。

現在のカシアス内藤は患った体でE&Jカシアスジム運営し、そのジムは沢木耕太郎
の支援を得ているらしい。
結局、あの頃と変わらず沢木耕太郎のカシアス内藤に対する ” 行きがかり ”
は継続しているようだ。
そして ” いつか ” この本の完結編を著す時が来るのだろう。

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