goo blog サービス終了のお知らせ 

ありゃりゃサンポ

近現代の建築、町並みと橋が好き。
一日八千歩の散歩の忘備録。美味しいご飯と音楽と。
東京都全域をGPSで塗り潰し中。

紀尾井清堂/内藤廣

2021年12月01日 | 建築&土木見物

SNSで見かけた建築一般公開に申し込んで紀尾井清堂という建物を見てきました。すごかったです。

場所は千代田区紀尾井町。紀尾井町と言えば江戸時代に紀州徳川家、尾張徳川家、彦根井伊家などの中屋敷が並んでいた都心の超一等地。
現在の紀尾井町は面積の9割近くがホテルニューオータニと上智大学と紀尾井町ガーデンテラスと清水谷公園で占められているというとんでもない場所です。
そんな紀尾井町のわずかに残った場所に2020年12月に完成した紀尾井清堂。
建築主は一般社団法人倫理研究所。本部は紀尾井清堂の真向かいにある立派なビルです。そもそもこの団体が何なのかが結局よくわかりませんでした。
そして倫理研究所から設計の内藤廣氏への発注内容は「好きなように作ってくれ。使い方は出来上がってから考える」でした。これも訳が分かりません。
ブログで紹介するにあたっておかしな団体が関与するものは避けたいと思っていますが、内藤廣が設計してあの!前田建設が施工したんだからまあ大丈夫だろう。
建物自体は超絶面白かったのでそんな感じでわけわからないまま建物の写真だけ貼っておきます。


1枚目の全景写真で分かる通り建物はコンクリートのキューブ。その1.5mほど外側にDPG工法で浮かせたガラスウォールが設置されています。
ガラスは壁面に立った細い金属棒で保持しているのではなく、屋上から周囲に突き出た鉄骨で吊り下げられています。

建物の中に入って1階。本体となるコンクリートのキューブは4本の「足」で支えられています。柱は根元が四角形で上部が細長い六角形という複雑な多面体。
床と壁面は島根県の石州瓦の工場で使われていた棚板の古材が使われています。1350度の高温で焼かれるため通常は一定期間使ったあと廃材となる素材です。

1階奥の一段下がった通路手前に設置されていた腰壁は1枚の分厚い金属板を曲げたもの。

柱の上部に、外壁ガラスの屈折によって虹が投影されていました。計算したものではなく偶然できたもの。内藤事務所の人は「建築の神様の贈り物」と話していました。

建築図面が飾られていました。立方体のキューブが浮かんでいる状態がよく分かります。

キューブに入るためにピロティを出て外の階段で2階にあがります。階段も石州瓦の棚板。独特の雰囲気があります。

キューブの内側は美しく木の張られた仕切りのない一つの大きな箱でした。建物の中には靴を脱いで入ります。

内部は4層になっていて周囲に通路でもあり部屋でもあるような回廊。

見上げると9つの穴の開いた分厚いコンクリートスラブの屋根が見えます。

フロアとフロアを繋ぐ階段が様々な方向に架けられています。

全景写真に見えていたキューブの外にある階段からガラスウォールを間近で見られます。ガラスとガラスの間に5cmの隙間があるので風が入ります。

外階段でキューブの2階から3階(建物でいうと3階から4階)に入った所。

最上階まで来るとこんなに近くに天井と天穴が見えます。

天井から入った光はそのまま下のフロアに落ちます。床に寝転んで真下から真上に天井の撮影をしている人がいます。
ちなみに見学会は一日2コマで数日間設定されています。特に参加資格などはありません。様々な年代の人が来ていましたが、若い女性の方が多かったです。

天井までびっちり張られた細い木材の集合。つい先日見て来た富山美術館の通路を連想します。

ピロティで見た多面体の脚はそのまま各フロアを支える円形の柱となって上から下までを貫いています。

どこでどちらに向けて写真を撮っても美しい。
建物の用途はできてから考えると言った発注者の団体は、今後これをどのように使おうとしているのか知りたいです。

所々に光と空気を取り込む小窓がありました。全て正面からは見えない場所です。



下のフロアからイナバウアーの姿勢で天井の写真を撮りました。天窓は電動のシャッターで塞ぐことが可能です。実際に閉めるところを見せてくれました。

もう一度外に出て外観を鑑賞。1枚目が建物の西側で、この写真が北側です。右に見えているビル(縦長の窓が緑っぽいビル)が社団法人倫理研究会の本部。
社団法人の決算公告を見ると資産が300億円ほどあるようです。全国に施設がありますが、御殿場にある富士高原研修所も内藤廣の設計です。お金持ち。

交差点から遠景。

最後に外階段のアップで。
今までほとんど縁のなかった建築家の仕事を立て続けにみることに。意外とこういうことってあります。この後は積極的に他の作品を見にいくことにしましょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 仲宿商店街で錦鯉の品評会 | トップ | てへぺろの母 »

コメントを投稿