ここは東京の下町、古くから続く長屋の一角。
長屋の住人、熊さんと八つぁんの二人が井戸端で何やらヒソヒソ話をしています。
熊「よう八つぁん、朝から何をそんなに難しい顔をしてるんだい?」
八「熊さん、教えてくれ。オイラ、オツムが弱いもんだから、よく分からないのだけれど、なぜ、お笑い芸人のDTのMちゃんが芸能活動を止めちゃったの? 独りもんのオイラの楽しみが無くなっちゃって寂しいのよ。何か悪いことをやったの?」
熊「瓦版屋の『文春』が書き立てたのよ。芸能界入りを狙っていた若い女の子を集めてドンチャン騒ぎ。気がついたら、一人の女の子とねんごろになったってさ。それが、あとになって、その女の子から、けっこうな文句が出たという話」
八「え⁉ 若い女の子とドンチャン騒ぎって悪いことなのか! オイラもドンチャン騒ぎの翌日に、八百屋のチーちゃんから思い切り、引っ叩かれたことがあったなぁ。オイラも、大工の仕事を止めなきゃならないのかなぁ。ところで、『あとになって・・』って、どのくらい時間が経っているの?」
熊「瓦版屋の『文春』によると9年前のことだってよ」
八「9年前のドンチャン騒ぎか。そんな前の話、何で今頃騒ぎになるの? オイラだったら、9年間のことは何も覚えてないけど」
そこに、長屋の知恵袋、ご隠居さんが通りかかる。
ご隠居「八つぁん、この話題は、結構複雑な2つのテーマを抱えているのさ。第1のテーマは『優越的地位の濫用』。そして、第2のテーマは『後出しジャンケン』だ」
八「え? オイラ、『優越的地位の濫用』って意味分からない。『後出しジャンケン』の方は、熊さんがよくやるから分かる。ズルいよね」
熊「こら、ハチ公! お前なんか、『最初はグー』の時に、いきなり『パー』出して勝とうとするだろ。そっちの方がズルい」
ご隠居「二人とも、いい加減にしなさいよ。いいかい。『優越的地位の濫用』というのは、絶対的に優位な立場にいる人間が、その地位を使って好き勝手な行為をすることを言う。これは、とても卑怯なことと看做される。まずは、この『優越的地位の濫用』というテーマについて話をしましょうか・・」
<続く>