【昨日の続きです】
競走馬のレース距離(1000~3600m)を、人間の陸上競技に例えると、凡そ400~1500mに該当します。陸上競技の400~1500mならば、どの距離でも、同じような瞬発力=スピードとその持続力が必要になります。それでは、走りに必要な能力は殆ど同じなのに「馬によって得意な距離が異なる」という距離の適性はどこで決まるのでしょうか?
私は「気性」=「馬の性格」だと考えています。
馬の瞬発力=トップスピードというのは、200m(1ハロン)を10秒台後半で走るのが精一杯で、1000mだと1ハロン11秒フラットくらいが限界。1000mのレースでもラスト100mに力を残すためには、途中で力を抜く=脚を溜める必要があります。1600mでも同じですし、3000mとなれば途中はリラックスして走る時間が長く必要になります。
気性の激しい、闘争心の強い馬は競り合いに強いという特徴がありますが、騎手の制御が効きにくいため長距離には向かないケースが多く、短距離で活躍する馬が多いと思います。一方で、2400m超の長距離を得意とする馬は、絶対的なスピードの持続力が必須なのは確かなのですが、併せて、騎手に従順で素直な気性であるケースが多いと思います。馬にはさまざまな気性がありますが、これが最も適性距離を決める要因になっていると思います。
ちなみに、キタサンブラックというスーパーホースは、母の父がサクラバクシンオーというスプリンターの血が入っていたことから、長距離戦には不向きと言われ続けました。しかし、バクシンオーからは類稀れなるスピードを受け継いだ上に、騎手に反抗するような激しい気性ではなく、むしろ騎手に従順で真面目な気性だったことから、菊花賞・天皇賞(春)(秋)・ジャパンカップ・有馬記念と長距離で大きな実績を残しています。
それから、大人になるにつれて、気性面が変化して、適性距離が変わっていく馬もいます。スマートレイアーという牝馬は、3~4歳の頃は神経質な面がある馬で、主には1400~1800mくらいで活躍していましたが、年齢を重ねるにつけて気性面が成長、長距離でも活躍できる馬になりました。2017年の京都大賞典では、シュヴァルグラン、ミッキーロケット等などのGⅠ牡馬を相手に2分23秒1のタイムで快勝。卓越したスピードと、騎手の指示に従う気性を合わせ持った、素晴らしい名牝となりました。
(続く)