
外國資本の自転車食料配達──
笈を背負った若いお兄チャンが、東京都心部の谷間を自転車でスイスイ走ってゐる姿を見かけるやうになった平成末期の頃は、いかにも現代のトウキョウらしい光景だなぁ……、と半ば感心して眺めてゐたものだが、その姿がみるみる増殖するにつれて、交通規則違反に代表される“品質”の惡さも目立つやうになった。
赤信号無視など日常茶飯事、公園や歩行者天國などの自転車進入禁止區域をお構いなしに爆走する様など、私も何度目撃したことか。
いまでは街中でアレが接近してくると、「ぶつかってくるのではないか……」と、かなり警戒する──もっともそれは自転車全般に對してでもあるが……──。
かうした事例は、人災疫病禍によって職を失った人たちの大量“参戰”でさらに顕著になったやうで、實に多種多様多彩な風体の自転車配達員が街中を橫溢しはじめた。
まさかのお爺ちゃんが車道の端をヨタヨタと走ってゐるのを見た時はこちらがヒヤヒヤさせられ、見るからに不衞生的な風体のヒトを見た時は、注文主も受け取るのに躊躇するだらうと苦笑したり。
事實、私の周辺の女性のなかには、さういふ人種を嫌って件の自転車配達を決して利用しないと云ふ人もゐる。
かうした品質の惡化が招いた周囲からの厳しい視線、また同業者(おなかま)同士の“仁義なき争ひ”にすっかり嫌氣がさして、足を洗った“優良”配達員も多いと聞く。

かつてのやうな現代トウキョウらしい洗練さが失はれ、ただの社會迷惑集團に堕したならば、社會的粛清による刈り揃へは必要である。