忘日、散歩でたまに通る商店街で、毎度シャッターが下りてゐるリサイクルショップが珍しく開いてゐたので覗いてみたら、稽古に丁度よい舞の扇が、ほぼ未使用にもかかはらず、わずか數百圓で出てゐたので、入手した。
見世の主(あるじ)は傳統藝能の知識が無いため値段の付け方も見當がつかなかった、と云ひ、かうした扇の賣れたことに驚いてゐた。
「これほど状態の良い物がこの値段とは嬉しいですね」、と話すと、主は「また入荷したら出しておきます」と云ふのを聞いて、或る予感がした。

それから數ケ月後、また珍しく見世が開いてゐたので立ち寄って見ると、やはり同じ物が、京都の老舗の名が刷られたたとう紙に入って出てゐた。
値札を見ると案の定、前回の倍以上、四ケタの數字が並んでゐて、「やっぱりやると思った……」、と口許をひん曲げて、そっと戻し見世を出た。
數軒となりの古い文房具店で、ずっと探してゐた物をやっと見つけて、數百圓を拂って購入した。
よい買ひ物が出来て、よかった。