迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

藝のクセもの。

2024-09-11 19:05:00 | 浮世見聞記
和泉流三宅右近一家の狂言二番を、ラジオ放送で聴く。

謠ひ物の「鳴子」、語り物の「菊の花」、いづれも定型化された流れでとくに耳に留まるものはなかったが、「鳴子」のシテが長年の口癖なのだらう、臺詞の前によく「ぁ、いや……」と口にするのが耳に付き、そのために以下の臺詞がボヤけて聞こえてしまひ、もったいなく思ふ。





人には誰でもクセがあり、藝能者の場合はそれを特徴(あじ)とする“藝”に轉化できてこそ、本物になれる。

大昔、發音に惡癖のある大看板役者のお弟子が、自身にはその癖がないにも拘ず、師の奇妙な發音そっくりに臺詞を謳ってゐる様に居合はせて、ああもったいないことをやってゐるなァ、と思ったことがある。

癖と云ふやつは耳目に付きやすいぶん、人にもマネされやすいもの。

して、わたしのクセは──

ぁぁイヤ……。








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