
いつも通る陸橋下を、いつものやうに通らうとしたら、頭上で数羽の鳩の聲が聞こえる。
顔をあげると、橋脚と橋桁の接するあたりから、細い木が生ゑてゐることに気が付く。
その根元では、鳩が巣を作ってゐる様子である。
橋脚も橋桁も共にコンクリート製で、まさかそんなところから木が生えるとは!
草木の生命力、畏るべし!
普段通ってゐる道なのに、そのことに今まで全く気が付かなかったとは、「灯台下暗し」ならぬ、とんだ『灯台“上”暗し』である。
私がレンズを向けると、鳩たちは警戒して次々に飛び去り、少し離れたところからしきりに啼く。
“無断で棲み家を撮るな!”──
さう抗議してゐるやうだった。
糞など落とされてもつまらないので、さっさと通り過ぎてふと見た道沿ひのお庭には、牡丹がいま見頃のやう。

再び空を見上ぐれば、今年も八重桜が出番を迎へつつある。

うちの町内は見どころに富んでゐる。
繁華場の“名所”をめざして、
わざわざ時間とカネと神経を遣ひ、
挙げ句に同じ事を考へて這ひ出して来た有象無象ばかりを見て帰って来るやうな、
そんなムダこそ、
寿命の浪費といふものだ。