迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

「偲姿―オモカゲ―」20

2010-02-26 10:03:16 | 戯作
「あの…」 彼はスケッチブックを仕舞う手を止めて、呟くような声で言いました。 「?」 「……」 顔を上げた彼のその表情には、何やら緊張感が漂っていました。 「あの…、あなたを、描かせて、もらえますか…?」 「わたしを、ですか…?」 「はい。人物画のモデルになっていただけたら、と…」 思いがけない申し出でした。 そして、綺麗な瞳(め)をわずかに伏せたその面差しに、わたしは睫の長い人 . . . 本文を読む
コメント