私が通っているヨガスタジオのインストラクター達がパラオの小学校や高校でヨガ教室をしていることは知っていた。子供達の様子はどう?と聞くと、「男の子が恥ずかしがって積極的にやらないんだよね。」とか、「今日は特殊学級の子供達のクラスだった。難しいかと思ったけど、みんなちゃんと言うことを聞いて一生懸命ポーズをとっている姿を見てたら感動して涙が出そうになった。」とか、「ヨガをやり始めてから子供達の勉強に対する集中力も高まったって先生に言われた。」とか、なんか一生懸命がんばってる姿と少しずつ成果が出てきてる様子がうかがえた。いいことをしてるなあ、と思っていた。
それが、先週かな。2019/2/19付のローカル新聞、アイランドタイムスの一面に "STOP YOGA IN SCHOOLS"(学校でのヨガを中止)という見出しで記事が載った。小見出しは"Over 700 signatures gathered to protest against yoga"(ヨガに反対する700以上の署名が集まる) は?なんで?まったく思いもよらない記事だった。記事にはヨガがヒンズー教や仏教などに由来、特定の宗教的であるとし、公立の学校で扱うべきではないという理由で、ヨガに反対の700名の保護者や市民の署名が集まったということだった。なんとなんと。そうですか。その後この件について大統領が見解を出したり、教育大臣がヨガ導入のいきさつを説明したり、SNSでは個々人がコメントするなど、けっこうな問題になっている様子だ。SNSのコメントを見る限り一様に驚いてバカげたことだ、という方向で書かれているように見える。大統領はヨガはUNもサポートするアクティビティでパラオを含む世界の多くの国々が国際ヨガデイにも参加しているし、今や宗教とはかけ離れたインターナショナルなエクササイズのひとつになっている、と肯定的な意見を示した。教育大臣もこれは子供達の健康の目的で、きちんと調査考慮した上で試験運用もして結果が良かったので導入したこと、また学校の履修科目ではないこと等も説明した。このプログラムを始めるにあたって子供の健康目的の支援としてインドから1万ドルの援助を受けていて、これは別にヨガに限ったアクティビティが対象ではないとも説明した。さあ、これでどうかな。
スタジオのヨガインストラクターも思いがけない展開に困惑しているようだ。「学校でヨガクラスをやっている時には一度も一人の保護者も見に来たことがないし何も言われたことがないのに、突然700人の署名が集まったと聞いて本当に驚いている。」と言う。何なのかな。新しいものに対する拒否反応かな。それとも本当に宗教的に問題があると考えているのか。はたまた政治的な問題なのか。いつでも何に対してもゆるーいパラオがなんでここだけ厳しい? 以前知り合いのパラオ人のおじいさんが亡くなった時、亡くなった彼を含め、ここの家族はプロテスタントのクリスチャンだったが、日本から来た彼の友人がお坊さんで、彼のためにお経をあげたいと言った。私は「これはまずい!」と一人で焦ったけれど、なんと家族はとても喜んでお経を受け入れてくれた。ああ、これは宗教がどうのというよりも、彼のためにやってあげたい気持ちを受け取ってくれたんだな、と理解した。受け入れ幅が広いパラオ人。もちろん、個人の考え方と学校教育とは違うし、今回の問題のポイントはヨガを宗教的と考えるのかどうかだけれど。
子供達のアクティビティにヨガを導入したきっかけになっていると思われる現実に、パラオの子供達の肥満問題がある。まるまるしてかわいいというレベルではなくなっている。2017年のイギリスの医療機関紙に発表された結果ではパラオとクック諸島とナウルで世界の子供肥満ランキング、上位3位を占めている。太平洋の小さな島国が飽食の肥満大国アメリカを上回っているのだ。食生活と運動不足。ヨガをしたからといって即痩せるわけではないが、スローペースで誰でもすぐに始められるという点において対策のひとつにはもってこいだと思うけどね。さあて、この問題どこに落ち着くか。