コロコロコロール通信

南洋の小さな島に暮らす家族の日記

あうんの呼吸

2024-05-10 22:05:29 | 今日の出来事

古い車だからね。最近色んなところにガタが来ている。しばらく前から助手席側の窓の開閉が怪しかった。開けるのはいいが、閉めようとするとウィーン、ウィーンと苦しい音を立てながらやっとのことで上がるか、もしくは力尽きて途中で止まってしまうことも。そういう時は手でひっぱりながらやっと上げていたが、電気系統の故障はここでは直すのが難しいので、もう二度と助手席側の窓は開けないようにした方がいいな、と思っていた。さもないと時々見かける車のように、私もユナイテッド航空のビニール袋をガムテープで貼っつけないといけないことになってしまう。
車はそんな状態でもまあ、たいした問題ではない。今朝は久しぶりにロングアイランド公園に早朝スイムに出かけた。近いのに車で行ってしまう。早朝や夕方は放し飼いの犬が怖いからね。途中で知り合いのパラオ人のマアス(ご婦人)をお見かけした。位の高い人なのでクラクションで挨拶というわけにもいかない。窓を開けないわけにもいかない。あ〜、助手席の窓、大丈夫かな。ちらっと気になったけれど、なんとかなるだろうと思って開けてしまった。「ウンギルトゥータウ(おはようございます)、お久しぶりです。朝の散歩ですか?」とご挨拶。そこまでは良かった。さあ、車を停めて窓を閉めようとしたら案の定、閉まらない。半分も閉まらないうちに途中で苦しい音を立てて死んだように動かなくなってしまった。しょうがない、とりあえず泳ごう。家に帰ってゆっくりやったらなんとかなるでしょう。泳いで帰って家の駐車場、助手席に移動して本格的に力技で上げようと試みるがウンともスンとも言わない。だんだん暗い気持ちになってくる。あ〜あ、いよいよビニール袋か。スコールが多いこの地でこのままにはしておけない。諦めきれずに何度も音もしなくなった開閉ボタンを右手で上げながら左手をパーにして窓に当て、必死に持ち上げる。外から見たら異様な光景ではあったと思う。そこにアパートのメンテナンス担当のいつものおじさんが通りかかった。私が必死の形相で窓に手を当てているのをチラッと見ただけで状況を瞬時に察知し、状況確認はおろか一言も言葉もかわさずに、ガラスを挟むように私の手に自分の手を合わせ、目で「せーの!」と合図をしてぐいっと窓ガラスを上げてくれたのです。そしたらなんということでしょう。さっきまで死んだように1ミリも動く様子を見せなかった窓ガラスがグググイッと一気に上まで上がってくれたではありませんか!ものの1秒で完全クローズです!やった〜!ありがとうを言う間もなく彼はどってことなさそうにそのまま歩いて去っていってしまいました。こんな通りすがりの流れるような動作、あうんの呼吸。まるで何年もコンビを組んだセッターとアタッカーのクイック攻撃のような鮮やかさ。私だけが感激が止まらないのでした。
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