トレード備忘録 & MT4/MT5インディケータ及びEAの開発

日々のトレード備忘録及びMT4/MT5に関する事項

MT4 ステルスモード(stealth mode)とは?

2018-07-28 19:45:48 | 投資

 MT4の自動売買プログラム(EA)のコードを読んでいると時々ステルスモードという表現が出てくる。日常目にするのは、新聞の防衛関連の記事中に出てくるステルス戦闘機という表現であろう。機体に電波を吸収する塗料を塗り込まれているため、敵のレーダーにその存在を知られないという戦闘遂行任務には最重要となる特殊防衛技術に属する。

 FXの世界を戦闘に例えるなら、敵は同じFXトレーダーのはずである。ところが、トレーダー間では互いの位置関係は最初からまるで見えていない。トレーダーの位置関係を知るのは唯一その取引をしているFX業者ということになる。各トレーダーの味方であるはずFX業者は、場合によっては恐ろしい敵にもなりうる存在なのである。 

 筆者にも苦い思い出がある。FXの黎明期にドル円スプレッド1銭という武器を携えて市場を一時席巻したG社というのがあった。ニューヨーク市場が始まり深夜になってもポジションを残している場合に、損切り値と利確値を設定して床に就くのであるが、翌朝目覚めるとほとんどの場合、ストップに掛かって負け取引となっているのが通常であった。他社のチャートを観察するとストップ値には達していないのにも拘わらずそのような現象が続出したのである。ニューヨーク市場クローズ直前直後に長い髭が伸びていて、損切りが実行されているのである。ストップ狩りという言葉を実感した瞬間であった。 

 MT4のEAを使えば、前述のストップ狩りに遭うこともなくなる可能性が高い。ストップ値を敵(この場合は取引している業者)に知られることなく設定することが可能であるからだ。一般的には、エントリーとほぼ同時に損切り値を設定する人が多い。損切り値を入れた瞬間、その値は敵に筒抜けになっていて、敵が操作(ストップ狩り)をしようとすれば、いつでも実行することが可能な状態である。市場が極端に薄くなるニューヨーク市場のクローズ前後であれば、スプレッドも広がるのが通例であるから、顧客にはなんとでも説明がついてしまうのである。 

 MT4のEAでは、ストップを入れるタイミングは自由である。例えば。110円の買いのポジションを持っている場合に, 109円にストップを入れたい場合でも、エントリーの段階では、ストップを設置しなくてもよい。簡単な1行をEAに追加しておくだけでよい。その一行は;「もし、Bidが109円になれば、ポジションをクローズせよ」との命令である。これであれば、業者に損切り値の存在を事前に知られることはない。 

 結論として、FXのステルスモードは損切り値や利確値を、現値がその値に達するまで、取引先であるFX業者に知られることのない発注方法であるということができる。就中、マーチンゲール手法等を採る場合には考慮せざるをえない発注方式でもある。


MT5でEA作成が難しい理由(実は難しくない)

2018-07-14 11:53:46 | 投資

 MT4でEAのプログラムを作成していた人でも、MT5となるとまるで勝手が違う、「どのように学習すればよいのか」という質問をよく受ける。 

 MT5でのEA作成が難しい理由としては;

① 独学で学びたいと思っても未だ日本語の教科書がない。

② MT5には構造体やクラス機能が大幅に取り入れられているため、C++等の知識がないと理解し辛い。

③ そもそも、国内にはMT5を採用するFX業者が存在しないため、MT5への関心が薄く、MT5学習のモチベーションが生じない。 

 筆者もCやC++を正式に学んだことはない。それでもMT4やMT5上でEAやインディケータを作成できるようになったのは、ひとえに神奈川大学工学部教授豊嶋久道著の諸書籍によるところが大きい。その豊嶋先生もMT5に限定した著書は未だ出されていない。わずかに、「FXメタトレーダー 4&5 一挙両得プログラミング」を2013年に刊行されているのみである。その頃のMT5はβ版と云ってよいほどで、著書も今日では筆者のような先生のフォロワーのみが研究対象として読む程度の存在となっている。 

 先生がMT5勉強のための新たなステップを密かに採用されたことで状況が変わった。2017年3月「新MT4対応EA実践プログラミング」を電子本として出版されたことである。書籍の中でMT5という言葉は一切語られていない。書籍タイトルのとおりあくまでMT4の教科書である。 

 ところが、さすがは教育者、著書はMT4のプログラミングをMT5の様式で書くことを密かに提案されていたのだ。慣れ親しんだMT4の言語を使っているから、大方の人はこれがMT5の教科書でもあるとは気づかなかったはずである。 

 そんな離れ業がどうして可能になったかというと、それは先生開発のライブラリにある。ライブラリはいわばマクロの集合体のようなもので、プログラミングの最初にそのライブラリ名を記述しておくだけで、MT4で書いたプログラムを自動的にMT5に翻訳してくれる。我々は従来通り、MT4の感覚でプログラムを書けばよいだけである。「習うよりは慣れろ」でどんどんEAを作成することだ。ライブラリの中身をすぐに理解することは難しいので、しばらくは考えないことである。そのうちに、パズルを解くように徐々に理解できるようになる。 

 「新MT4実践プログラミング」の刊行後、作成したEAが実はMT5でもそのまま通用するという宣言は先生のブログの中でされている。ライブラリのアップデートもブログで公開されるのみであるから、正式には未だMT5の教科書はないという状況である。ハードコピーによる新著が望まれるところだ。 

 MT4でプログラムが書ける人であれば、MT5でも簡単にEAが作成できる状況にあることを理解していただけたであろうか。

 

 

 

 


MT4でトラリピ‐より賢い勝ち方

2018-07-13 08:12:51 | 投資

 一般のトレーダーがFXで勝ちやすい方法のひとつとしてトラップリピートイフダン(通称トラリピ)があります。 最低100万ドル単位で取引を行うプロ達にはまねのできない手法であるとともに、彼らのやり口には左右されないアマに適したまったりとした方法だからです。 

 その優位性に着目したM社はトラリピの特許取得に成功し、「トラリピ」の商標権まで取得してしまいました。およそ考えられないようなスプレッドと手数料にも拘わらず、素人でも負けない手法として富裕層の支持を受け、独占的な市場支配が長く続きました。 

 MT4では個人が自己のパソコン上で自由に自動売買プログラムを作成することができますから、M社の特許の範疇には入りません。それどころか、特許成立以前からGrid Tradeとして広く知られていた手法です。MT4を採用する業者では、べらぼうなスプレッドや手数料を支払う必要はありません。日本でもようやくMT4が知られるようになり、このMT4トラリピも深く静かに市場に浸透を始めているのです。 

 過去のブログでもトラリピの上手な使い方を種々検討してきました。結論的には、単にナンピン買い下がりや売り上がりにならないためには、MT4だけにできる特殊逆指値手法(順張り)で臨むべきことを繰り返し述べてきました。今回は、そのプログラム(EA)の更に賢い使い方に触れたいと思います。 

 順張りトラリピと云えども万能ではありません。例えば買いのトラリピを仕掛けた場合、案に相違して相場がどんどん下がったとしましょう。通常のトラリピ(指値)であれば、仕掛けた範囲でナンピン買い下がり状態になり、ポジションの数はどんどん増えていくと同時に含み損もどんどん増大することになります。特殊逆指値手法であれば、買いのポジションの数は単純に増加することはなくなります。しかし、相場は「往きつ戻りつ」を繰り返しながら下げ続けるものですから、途中で逆指値を拾ってしまうことがあります。特殊逆指値の順張り手法であっても、ポジションの数を極少化することはできますが皆無にすることはできません。「まったりした」手法と述べましたが、逆指値を拾う回数が多くなってしまうと、そうまったりとは構えておられません。そんな場面に遭遇した際に、筆者が行う操作があります。 

 買いトラリピの場合、相場がレンジ又は上昇していれば理想的ですが、思惑が外れることはしばしばあります。だからと云ってその都度損切りで終了してしまうようでは、そもそもトラリピに取り組むメンタリティに欠けるということになります。 

 ドル円買いトラリピで千ドル単位のトラップを0.5円刻みで仕掛けていたとしましょう。特殊逆指値であるにも拘らず、含み損を抱えるポジションが4本になった場合、EAを一旦停止させます。4本のポジションということは、もう2円以上相場が下がっていることを意味します。どこまで下げ続けるかはわかりません。EAをお休みさせている間は、他の通貨ペアに頑張ってもらいます。 

 節目とされる5円下げたところから相場が回復し始めました。止めていたEAのスイッチをここで再びオンにします。オンにした瞬間EAはそれまで通過したトラップの逆指値注文を出すことになります。こうすることによって、不必要なポジションと含み損を最小限度に抑えつつ、よりまったりした取引が続けられ、勝つ確率が高まることとなります。 

 通常のトラリピを行う場合でも、上記の戦術は有効ですからぜひお試しください。但し、指値注文はEA中断の際、全部取り消しておく必要があります。

 

* 特殊逆指値手法やトレイリングストップにも対応したEAに関心のある方はこちらまで

 

 

 


MT5が頻繁に更新、豊嶋先生の先見性

2018-07-04 10:09:23 | 投資

 MT5を採用する業者は未だ国内には存在しないが、MT5の更新は頻繁に行われており、最新のバージョンはbuild 1870となっている。使い勝手から申し上げると、今やMT4とMT5ではほとんど変わりがなくなってきた。

 MT5がMT4同然に使えるようになったのは、豊嶋久道神奈川大学教授に負うところが大きい。面倒な構造体のトレード関数をMT4の知識で扱うことができるライブラリを開発・公開していただいているからである。MT5自体にも数々のライブラリが用意されてはいるが、それらの詳しい使い方の説明は無いに等しくほとんど理解できない。

 豊嶋先生は早くから、MT5の非実用性を指摘され仮想ポジションによる両建て取引を可能にするなどして開発会社MetaQuotesの一歩先を歩んでこられた。最近では、iOpen(), iClose(), iHigh(), iLow()・・・といったMT5で使えなくなった関数をライブラリの中に取り入れて、MT4同様の書式でプログラムが書けることができる環境を準備していただいていた。

 両建ての問題は、2016年にMT5サイドも両建てを可能にする更新を行ってこの問題に決着をつけた。最新の更新ではiOpen()以下の関数の復活も遅ればせながら行っている。開発会社本家が豊嶋先生のライブラリを後追いしているのがこれまでの経過であった。

 豊嶋先生にお願いしたいのは、ぜひ、再びパンローリング社から書籍として「MT5メタトレーダー実践プログラミング」を刊行していただきたいということである。Kindke版(500円)と先生のブログから無料でダウンロードできるその後の更新はありがたいが、常時先生のブログを追っている私でもすべてフォローするのは困難な状況。加えて、Kindle版の更新もAmazon側に問題があり、首尾よくDLができない。これからMT5の勉強に取り組む初学者のためにも、MT5の完成度が高まった今、ぜひ紙本による新著に期待したい。