掲題のプロジェクトに挑戦をするに至ったのは、筆者提携先のお客様からの1通のメールによる相談が契機となりました。EMORI Indicator for ATRに追加機能を付加してほしいとの要望でしたが、同EAのソースコードは当然のことながら公開されておりません。また、その利用にはプログラム上口座制限というプロテクトが課されているため、チャートへの描画は購買者である相談者以外のチャートでは表示することさえできません。
やむなく、相談者からMT4画面のスクリ-ンショットを送付いただき、このインディケータの分析に入りました。総力をあげましたところ、インディケータの論理式は比較的短時間で解明することができました。相談者からのリクエストであるアラートの機能追加も終わり、完成した第一段階のチャートをMT4に表示させてみたところ、スクリーンショットのオリジナルの画像とほぼ同一のインディケータが出来上がっていました。
一、インディケータ Parabolic ATR
第一段階の完成前β版をバックテストにかけてみますと、様々な疑問が湧いてきました。もう少し改善すべきところがあるのではないかとの疑問です。疑問となったこれら諸点の検討と問題解決の過程を経てParabolic ATR_v7が最終完成いたしました。
1)売買シグナルの発生時点を改善
インディケータのバックテストを観察すると、売買のシグナルが発せられるポイントが必ずしもベストではないということです。買いの取引を例にとると高値からかなり落ち込んだところで決済し、その低い価格で途転の売り注文が入る確率が高いことになっています。絵柄だけを見ていると、利確したように見えますが、実は損切りに終わっていることが多いことに気づきます。原因はEMORI式の細いパラボリックラインはローソク足の上下変動に連動して細かく動くことにあります。次のチャートで1が今回改善したインディケータの買いの決済と新規売りのシグナルが発生するローソク足、一方EMORI式では2の時点で買い決済と新規売りシグナルが発生します。足の数6本遅れで相当相場が落ち込んだところで、買いの決済と新規売り注文が出されることになります。改善策として、ローソク足の上または下に表示されるパラボリックに似た曲線にトレイリングストップの考え方を取り入れた結果、この最大の問題は解決できました。
赤と青の太い線:今回の改善したパラボリック、橙と緑の細い線:EMORI式パラボリック
両者のパラメータは同一の数値に設定しています。シグナルの矢印と帯は混在するので、表示していません。
2)ダマシのシグナルの処置
シグナルはザラ場でも発生しますから、ダマシに終わった場合にはそのままではチャートに残ってしまいます。改善版ではそのような場合、次のローソク足の始値でダマシ矢印を自動的に消去するように変更しました。
3)パラメータの追加設定
EMORI式でパラメータとして外部変更可能なものは、ATRの数値とメール通知機能の選定に限られています。Parabolic ATRでは次の機能を追加しました。
① SoundAlert: リクエストのあった機能。メール機能もEMORI式同様装備
② Mult: これはローソク足の上下に表示されるパラボリックラインとローソク足との間隔を調整するパラメータ。銘柄や時間軸を選定するにあたり、これを事前にテストし、最適値を選定することとなります。このインディケータと後述するEAとは不可分の関係です。
③ 逆にEMORI式では、チャートの時間軸ごとに売買シグナル(矢印)の位置をパラメータ Signal Adjustmentにより変更設定しなければなりません。例えば、4時間足に相応しい位置に矢印を設定した後に、時間軸5分のチャートに切り替えると、そのままでは、矢印がチャート外に飛び出して見えなくなってしまいます。Parabolic ATRでは、時間軸に拘わらず、ローソク足の上下のパラボリクラインの位置に常時設置されますので、チャートを切り替えるたびに別途数値を打ち込む必要はありません。
4)その他細部への説明は省略しますが、完成品はParabolic ATR_v7と銘打っているところからも、推敲の過程を想像していただけると思います。
二、EA(自動売買プログラム)Parabolic ATR_MT4EA
完成したインディケータParabolic ATRに忠実に従ったEAを作成し、2011/08.01 ~ 2021.10.31期間にて各種銘柄、時間軸についてバックテストを行ってみたところ、各パラメータの事前テストなしには、裁量取引にせよ自動売買取引にせよ安定的なトレードを行うことは危険であることが判明しました。例えば、JP225 1時間足ではパラメータがデフォルトのままでも優秀な損益が期待されますが、その他銘柄や時間軸では必ずしもそうとは限りません。JP225とUSDJPYのテスト事例をその設定画面とともに示しておきます。
① JP225 設定画面とテスト結果
② USDJPYの設定画面とテスト結果
USDJPYについては、ATRperiod 5に変更してテストしてみました。パラメータを10から5に変化させるとバックテストの結果は良くなりました。
三、その他
本インディケータとEAはパラメータの設定を誤ると、裁量取引であれ自動取引であれ、決して好結果を期待することができません。事前にMT4 Testerにてその銘柄や時間軸に適合したパラメータを選択する必要があります。また、一般的なテストの結果が芳しくなくても、シグナルの表示が適正であれば、StopLosssやTakeProfitを設定することにより意外な利益となる結果を得ることも可能となります。
上述のように、このパラボリック戦略では、インディケーとEAは一体化していますので、今回は各々別個の公開はせず、両者で一式として近日MT Studio21にて公開されることが決定いたしました。
(追記):完成版はインディケータに自動売買ソフト(EA)がパッケージされたParabolic ATR Indicator &EAとしてMT Studio21.comにて公開されました。
また、オリジナルのダマシを改善されたとの事、頼もしい限りです。
リリース後、早速購入する予定です。
トレードがとても楽しみです。
引き続きよろしくお願いいたします。
コメント有難うございます。
お送りいただいたEMORI式の設定画面を見ていましたら、、Signal Adjustmentなるパラメータがあり、チャートの時間軸を変える度にここで適当な数値を入力する必要がありました。Palabolic ATRでは売買シグナルは常にパラボィックラインの位置に表示されますので、このパラメータは必要としません。このこと、発見しましたので、ブログに追加いたしました。