トレード備忘録 & MT4/MT5インディケータ及びEAの開発

日々のトレード備忘録及びMT4/MT5に関する事項

MT4 成行き注文についての留意事項

2020-01-11 14:15:43 | 投資

 筆者の関係するメタジェニック社の営業時間終了後には、同社に寄せられる緊急な対応を要する質問等に対処するため、受信されたメールは関係者にも転送されることになっている。 

 先日、顧客のお一人からEAに関しての照会を受けた。それはチャート画面に独自に引いたトレンドラインを使って押し目買いや戻り売りを実行するM社独自の自動売買システム(EA)が作動しないとの報告であった。 

 開発担当の手前すわバグでもあったかと緊張して、先方と交信してみるとどうも様子が変なのである。チャート画面には「ニコちゃん」マークが出ているという。しかし、プライスが下値抵抗線にタッチしても買い注文が入らないようだ。利用されているFX会社は海外ブローカーのようなので、もしかしてそもそもEAが使えない口座(ゼロスプレッド口座等)かと思ったが、そうでもないようだ。 

 思い余って、EAの設定の詳細を見てみるとスリッページ(すべり)の設定がゼロに設定されていた。ひょっとして、このブローカーの成行き注文執行法式はインスタント・エクセキューション(Instant Execution)ではないかとの推定が働いたので、スリッページをデフォルトの1ピップに戻して試していただいたところ、今度は無事に約定されたとのことであった。 

 MT4の日本語発注画面では「成行注文」としか表記されていないが、英語表記に変えてみると「Market Execution」と「Instant Execution」のいずれかの表記がされている。最近では「Market Execution」が主流となっているが、両者には厳然とした違いがあるので、留意を要する。

① マーケット・エクセキューション(Market Execution)

 顧客からの注文はそのままマーケットにつないでカバーをとる方法。つまりマーッケットで成立したプライスにスプレッドを加えたものが顧客との約定価格となる。言い換えれば、実際の価格はマーケット次第なので、いくらで約定されるかは事前には分からない。ボードに表示されるプライスはあくまでインディケーションということである。その結果、EAの設定画面でSlippageを指定しておいても無益な記載事項として無視される仕組みになっている。また、損切り(stop loss)や利確(take profit)もベースとなる約定価格が未定であるあるため、発注と同時に設定することはできない。売買の約定成立後、改めて損切りと利確を設定することになる。 

② インスタント・エクセキューション(Instant Execution)

 上記に反して、顧客からの注文は業者のリスクでプライスボード表示の価格で約定してしまう方法である。平たくは、業者の「ノミ行為」ともいえる。この方式は顧客にとっては好都合である半面、業者にとってマーケットが瞬間不利に動くというリスクも伴う。そこで、顧客の設定したスリッページ以上にマーケットが業者不利に動いた場合には、注文を受け付けない仕組みになっている。半面、指定スリッページ内であれば、注文は成立し、また、損切りや利確も発注と同時に設定することが可能である。 

 メタジェニック社に照会を寄せられた方が利用されていた海外業者は、まさしくこのInstant Execution方式を採用していたため、Slippage 0(ゼロ)では注文が成立しなかったわけである。 

 どちらの法式が良いかは、一概には申し上げられない。Instant Execution方式を採用する海外ブローカーの中には、極小スプレッドを標榜する半面、Slippageで辻褄を合わせているようなところもあるので取引開始前の調査が重要である。